2011 Fiscal Year Research-status Report
松葉杖使用患者の歩行訓練のためのバーチャルリアリティ空間の構築
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23700680
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
津田 尚明 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 准教授 (40409793)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 福祉用具 / 支援機器 / 松葉杖歩行訓練器 |
Research Abstract |
本研究では,松葉杖を使い始めたばかりの患者を想定して,松葉杖の挙動や患者の歩行動作を容易に計測し,動作が不適切な場合は患者に対して体感的に改善方法を教示する,歩行訓練のためのバーチャルリアリティ空間の構築を目的とした.当該年度の具体的な結果は,以下の通りである.(1)松葉杖の挙動計測精度の向上をめざしたセンサの追加:先行研究では,松葉杖にジャイロセンサ一つを取り付け,松葉杖の進行方向の角速度のみを計測していた.本研究では,進行方向と垂直な方向への傾きを計測するためのセンサを追加した. (2)装置の煩雑さの解消をめざしたマイコンの導入:先行研究では,松葉杖のセンサ情報を有線接続したコンピュータで計測・処理していた.本研究では,センサの計測値を無線送信できるセンサユニットを導入した.センサとコンピュータ間を無線化できたため,実用化を想定した実験が可能になり,また,必要な実験補助者の人数が減り,実験そのものも容易になった.(3)視覚・聴覚・力触覚に直接訴える空間の構築をめざした教示機能の強化:本研究では,液晶プロジェクタを天井に設置し,松葉杖歩行中の患者に健側肢の着地点とメッセージを提示することで歩行方法を教示できるようにした. (4)実用性の向上をめざした評価実験・改良:プロジェクタを用いた着地点教示が歩行方法に与える影響を,健常被験者を対象にした実験で確認した.歩幅やタイミングを変えながら着地点を教示することで,松葉杖の挙動と歩行者の体幹の加速度が変化することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画は,(1)センサの追加,(2)マイコンの導入,(3)教示機能の強化,(4)評価実験・改良であった.その中で,(1),(2)は想定通り達成したが,(3)教示機能の強化のためのプロジェクタの設置に予想していたよりも多くの時間がかかった.当初は,歩行路の前方から歩行路に向かって斜めに投影するつもりであったので,プロジェクタの傾き角度をもとに,あらかじめ床面に投影するときの「ゆがみ」を想定して投影画像を生成した.しかし,実際に投影してみると,事前に想定していたよりも大きい不規則なゆがみが発生して,画像処理で用いられる一般的な方法(ホモグラフィー変換)では補正できなかった.スペック・価格の似たいくつかのプロジェクタを使って試行してみたが,どれでも同じ問題が発生した.そこで,斜めに投影することを断念して,プロジェクタを歩行路の真上に設置し,光軸が床面と垂直になるように設置した.その結果,ゆがみの問題は解消されたが,投影できる領域が当初の想定よりも狭くなった.投影できる領域を広くするため,プロジェクタをできるだけ高い位置に設置することで,教示できる歩行距離の最大は240cmとなった.これは,松葉杖歩行の60cmの歩幅で5歩分に相当する.この過程で想定以上の時間がかかったため,全体的にはやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
松葉杖歩行訓練に集中できる情報提示のために,未だ終了していない聴覚提示などを早急に導入する.そして,平成24年夏頃までに,システム全体を完成させる.平成24年秋頃には,ハード・ソフトともに不具合を修正して,技術的には実用機としても位置付けられるような,完成度の高い最終的な形態を模索する.そして,病院やリハビリテーション機関などの協力を得て,臨床現場の医療スタッフや患者の意見を聞きながら改良を続ける.これにより,松葉杖の歩行訓練環境としての本システムの活用と,それに伴って浮かび上がってくるであろう周辺の課題,例えば医療現場で発生しうる予期せぬ問題などを抽出し,改良を加える.この過程で,これまで以上の実験が必要なので,実験への協力者(被験者)を募る予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の進捗状況は,「現在までの達成度」に記したようにやや遅れていて,音響提示などは未着手である.その分の研究費(材料費・旅費・謝金)を執行していないため,224,507円を平成24年度に繰り越す.24年度は,遅れを取り戻した後,訓練環境を実用的な形態に近づけるため,これまでの経験を元にして訓練用の松葉杖も作り直す予定である.そのための材料費として約25万円の支出を予定している.他には,研究協力者への謝金として約5万円の支出を予定している.また,昨年度の成果発表のため,国際会議2件(MIPE2012・AIM2012),国内会議2件(ROBOMEC2012・生体医工学シンポジウム2012)で発表を予定している.これらの登録料・旅費として,約30万円の支出を予定している.合わせて,学術雑誌への論文投稿を予定しており,投稿料として約15万円の支出を予定している.
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