2012 Fiscal Year Research-status Report
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23700682
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 はま 東京大学, 教育学研究科(研究院), 特任准教授 (00512120)
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Keywords | 乳児 / 自発運動 / 環境 / フィードバック |
Research Abstract |
生後数ヶ月の乳児が、環境との関係の中で行動を自己組織的に変化させていく過程を理解することをめざし、乳児から得られる四肢の運動情報を、音響情報に変換して乳児にフィードバックするシステムを開発するための基礎データの解析に取り組んだ。特に、乳児が生成する運動情報に関して、その発達過程による相違に着目して、量的・質的特徴を詳細に解析することにより、フィードバックシステムに利用可能な情報の探索をおこなった。 生後3-4ヶ月の乳児(221名)を対象に、環境との相互作用時(自己操作が可能な玩具で遊ぶ際)の四肢運動の特徴を、三次元動作解析システムによって計測したデータの解析に取り組んだ。これらのデータを、90-99日、100-109日、110-119日、120-129日の4日齢群に分割し、発達にともなう運動特性の変化を検討した。指標として、1) 四肢運動の速度情報を中心とした量的特徴、2) 腕と脚における活動性の違い(腕優位か脚優位か)を中心とした運動パターンの質的特徴を取り上げた。乳児が玩具で遊ぶ際、手首と玩具をひもでつなぎ、腕を動かすと玩具が動くという状況を設定したため、環境との相互作用の中で、腕を動かすという特定の運動パターンが優位になると考えられた。解析の結果、若年齢群においては、環境との相互作用前(玩具で遊ぶ前)の運動パターンが維持されたままで、運動量のみが増加することが明らかになった。一方、高年齢群においては、環境との相互作用が開始すると、まず運動パターンの変化が生じ(すなわち、環境との相互作用前の運動パターンがどのようであったかに関わらず、腕優位の運動への変化が見られる)、続いてその体得した運動パターンの量が増加するという2段階の変化が観察された。このことは、乳児の発達段階に応じて、環境からのフィードバックに利用する情報を適切に選択する必要があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、乳児の四肢運動をもとにして、外界からの音響情報のフィードバックシステムを開発するフェーズとして位置づけた。乳児の運動特性は、発達にともない刻々と変化するため、フィードバックシステムを有効なものにするためには、各発達過程における乳児の運動特性の違いを把握することが重要な課題である。そこで、本年度は、乳児のデータを日齢によって細かく区分し、その運動特性を詳細に検討してきた。その結果、99-120日という範囲内においても、運動の表現型が異なることが明らかにされた。 しかしながら、適切な指標の抽出に時間を要したため、それらの指標を使ったフィードバックシステムの試験的な作動にまで至らなかった。したがって、当初計画していた、フィードバック情報を実際に作動させて、乳児の行動の変化の観察をおこなうという段階にまで及ばなかった。 また、成果の発表に関しては、昨年度取り組んできた新生児の自発運動特性に関してまとめた論文が、Developmental Medicine and Child Neurology誌に採択されたが、乳児の運動特性に関しての論文は、現在投稿準備中であり投稿までに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度および本年度に明らかにしてきた乳児の四肢運動から得られた指標をもとに、音響的フィードバックをおこなうシステムを作動させることを目指す。特に、昨年度明らかにしてきた定型発達および非定型発達にともなう運動特性の変化、および今年度明らかにしてきた定型発達における発達過程の違いによる運動特性の相違に応じ、適切なフィードバック情報の選択に取り組む。その後、フィードバックをおこなうことによる乳児の行動の変化を観察し、その上でフィードバックの様式をさまざまに変化させる(たとえば、フィードバックの強度や種類を変化させる)ことによる、乳児の行動の柔軟性・安定性について解明する。 また、乳児が自発的に生成する運動情報として、四肢運動によって得られる情報に加えて、眼球運動によって得られる情報もより豊富で有用であるため、眼球運動も研究対象に取り込みながら、乳児の生成する様々な運動が、彼らを取り巻く音響的な場を形成し、両者のコミュニケーションの場として機能する過程を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、昨年度および本年度の研究成果の公表(学会発表および専門誌への投稿)を進めるとともに、システム開発のために、現有の三次元動作解析システムおよび眼球運動計測システムの改良(フィードバックシステムの組み込み)に研究費を充てる。 具体的には、Society for Research in Child DevelopmentのBiennial Meetingへの参加、Journal of Motor Learning and Development誌への投稿を予定している。 また、現在は大規模な三次元動作解析システム(計測用カメラ6台、制御用PC等を必要とする)を用いて、研究室にて計測をおこなっているが、乳児を取り巻く日常的な場面(たとえば家庭等)における計測を行うために、簡便かつ精度の高い計測環境を実現する必要がある。したがって、Kinectを用いた利便性の高い計測システムの導入も検討している。
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Research Products
(4 results)