2011 Fiscal Year Research-status Report
悩みを抱える青少年の長期冒険キャンプにおける「内的体験としての身体」の意味を探る
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23700692
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
吉松 梓 駿河台大学, その他部局等, 助教 (90508855)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 野外教育 / 自然体験療法 / 冒険キャンプ / 身体性 / 不登校 |
Research Abstract |
本研究では、不登校、軽度発達障害、問題行動などの悩みを抱える思春期の青少年を対象に約20日間の長期に渡る冒険キャンプを実践し、彼らの「内的体験としての身体」に着目してその意味を探ることを目的としている。そして方法として、長期冒険キャンプにおける「こころ」と「身体」を客観的・数量的に切り分けて捉えるのではなく、その個人を表現する「身体」として心理臨床の視点から検討することが特徴である。 平成23年度は、まず長期冒険キャンプに参加した悩みを抱える思春期の青少年(13~15歳)を対象に参与観察を行い、対象者の「身体」や「動き」に着目したエピソードを抽出した。その際に、エピソード記述(鯨岡,2005)の手法を参考にし、読み手がその場面をイメージできるよう「あるがまま」を時系列に沿って描くこと、自分(研究者)がどういうかたちで関与していたか関係性も併せて描くこと、等を心掛けた。抽出したエピソードは、研究協力者(心理臨床専門家および野外教育専門家)との複数人で繰り返し検討をして修正を加え、客観性(了解可能性)および妥当性を高めるよう努めた。最終的に、対象者の各事例においてエピソード(12個~17個、約6000字~8000字)を本研究に用いる文書(テキストデータ)としてまとめた。 次に、研究1として、長期冒険キャンプにおける「身体」の意味の全体像(対象者に共通するマクロの視点)を把握するために、質的データ分析法(佐藤,2008)を用いての分析に着手した。また研究2として、その個人の心理的背景との関連における「身体」の意味(個別性を重視したミクロの視点)を明らかにするために、特徴的な事例の検討に入った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、不登校、軽度発達障害、問題行動などの悩みを抱える思春期の青少年を対象に約20日間の長期に渡る冒険キャンプを実践し、彼らの「内的体験としての身体」に着目してその意味を探ることである。この目的を達成するために、まず平成23年度は、長期冒険キャンプの実施と参与観察による質的データの収集に重点を置いた。研究実績の概要に示した通り、この点においては概ね計画通り達成できたと言える。ただ、質的データの収集における個別のエピソードの精緻化に、当初予定より多くの時間を費やすこととなった。そのため、研究1の長期冒険キャンプにおける「身体」の意味の全体像把握のための質的データ分析については、研究法を選定し分析に着手したところであり、この点は当初の計画から若干遅れている。一方、研究2の個人の心理的背景との関連における「身体」の意味については、個別のエピソードの精緻化の作業がそのまま研究2の検討に生かせる内容であっため、この点については当初の計画を少々前倒しで行うこととなった。これらのことを総合的に考えて、研究目的の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はまず、研究1の長期冒険キャンプにおける「身体」の意味の全体像把握のための質的データ分析を重点的に行う。そして理論的サンプリングの手法に基づいて、データに不足がある場合は、平成23年度と同様の方法で補足的な質的データの収集を行う。また、質的分析における妥当性を高めるため、エピソード抽出時と同様に研究協力者と複数人で質的分析結果の検討および修正を行う。 次に、研究2の個人の心理的背景との関連における「身体」の意味の検討については、伝統的な事例研究の手法にのっとり事例検討の機会を設け、有識者複数人の間主観的合意に基づいてその意味を深く掘り下げていく。 最終的に、研究1および研究2の成果を関連学会(日本野外教育学会、日本臨床心理身体運動学会、等)で発表し、そこで得られた知見を踏まえて、同研究誌(野外教育研究、臨床心理身体運動学研究、等)に原著論文として投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、次年度に使用する研究費については、平成23年度に資料収集のために参加した学会の国内旅費が予定より少額で収まったため5,359円を繰り越すこととなった。その上で、次年度の研究費の使用計画として以下の経費の計上が必要である。1)国内旅費(400千円):研究代表者および研究協力者の研究打ち合わせのための旅費(3名×2日間)、研究代表者の調査研究のための旅費(1名×20日間)、研究代表者の成果発表のための旅費(1名×2日間)。2)謝金等(200千円):研究協力者の研究雇用費(2名×10日間)3)消耗品費(250千円):質的データ分析のためのPCソフトウェア、データ記録用メディア、携帯型プリンター、研究資料(学位論文・関連図書等)、文房具類(ファイル、印刷用紙等)、等4)その他(50千円):研究成果発表投稿料、印刷費、等
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Research Products
(1 results)