2012 Fiscal Year Research-status Report
実践的指導力を育む大学授業と教育実習の連関ー運動を見る力と指導言語に着目してー
Project/Area Number |
23700694
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
七澤 朱音 千葉大学, 教育学部, 准教授 (10513004)
|
Keywords | 模擬授業 / 教育実習 |
Research Abstract |
本研究は,将来体育科・保健体育科の教職に就く大学生が,在学中に実践的な力量を身につけるための模擬授業の手法とその成果の検証を継続検討し,模擬授業を行ったことによる指導言語の変容を教育実習中の教師行動と記述記録の分析から明らかにすることを目的としている. 今年度の「ボール運動」では,より分かりやすく教材という概念を得られるように,書籍に掲載され既にルールや所要時間,人数等が決まっている下位教材を一人一人別に提供し指導案を作成,模擬授業を実施した.また,模擬授業一回目を終えた後に講義を挟み自らの指導言語を書き出させた.具体的には,①不必要である・間違った使い方をしている内容(えっと,えー,ていうか,全然大丈夫等),②一文に説明や指示が複合(混在)したり情報が重複したりしている内容を整理させ,指導言語の改良版を書き出させ,二回目の模擬授業を行った.その結果,①不必要だと判断した内容の平均が1回目22.6回から2回目8.6回へと減少した.さらに,②複合や重複が見られた内容の平均が2回目4.9回から2回目4.1回へと減少した. 次に,「保健体育科教育法II」について,器械運動における「見る目」を養うために,映像資料を作成・提案授業を実施した.映像編集ソフトFinalCutProを用いて動画を編集し,教育実習中に録画した生徒たちの試技と器械運動を専門としている者を同一画面上で比較できるようにした.授業では,この製作した映像を用いて,受講生の運動を「見る目」に迫った.そして,グループ学習を展開し,指導要領に定められている技を各班が提案し指導言語について討議する“提案授業”を実施した.平成24年度は,映像比較や提案授業を実施できたため,より実践的な指導法研究ができた.レポートの分析から,受講生たちが生徒たちの実態と指導法についてより具体的なイメージを持つことができたことがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の模擬授業「ボール運動」においては,録画された動画を用いて授業者に自分の指導言語を具体的に分析させたため,指導者が自分の授業の実態を自覚できる授業内容にすることができた.授業時間や場作り,質問紙の項目立てなども含め,模擬授業の方法論としては,整いつつあると考えている.実際の授業については,期間記録法・相互作用行動記録法を用いて分析を行ったが,二回の模擬授業で授業の時間配分が改善されにくい実態があった.そこで,時間配分の仕方については,今後の授業で改善策を講じる必要があると考えられる.また,「よい体育授業」についての考え方を授業者に予め持たせることも重要だと考えるため,模擬授業を行う前の講義でそれらの内容について触れて行く予定である.なお,授業者に与える下位教材については,今年度分かりやすく実施しやすいものを提供できたため次年度も踏襲していく. 「保健体育科教育法II」における「見る目」を養う授業展開は,概ね想定していた通りのことができた.しかし,平成24年度は体育館の改修工事の関係で,器具や用具の数が限られていたため,受講生に器具や用具に触れる機会をより多く提供するためには実施方法に改善の余地がある.また,より分かりやすい映像資料を製作することも必要かと考えられる. 教育実習においては,「保健体育科教育法II」で「見る目」を育成した受講生たちが,実際の指導場面で適切な指導言語を用いているかどうかを分析する必要がある.これは平成25年度前期に行う予定である.この教育実習の分析にあたっては,附属中学校の教員の協力が必要不可欠である.現在,申請者の研究室に附属中学校の現職教員が在籍し,申請者とともに授業研究をしている.4月中に本研究のための研究会議を開催することになっている.今後も協力関係を保ちながら研究を遂行していく.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の「ボール運動」では,「よい体育授業」の条件を予め受講者が理解している状況から模擬授業を展開するようにする.何のために自分の指導言語を分析するのか,という根底の目的と必要性を受講者に認識させるためである.そしてその後,模擬授業の指導案検討も授業の中で行う.これまでは,各自が指導案を作成し,個別に指導教員と相談をして授業に臨んでいた.しかし,受講者個々の授業に臨む姿勢によって出来上がる指導案に差異が生じていた.そのため,講義をもう一時間設け資料を持ち寄り指導案を検討させるとともに,模擬授業で用いる掲示資料なども提供し,一回目の模擬授業に臨ませることとする.そうすることにより,全ての受講生に対して良い学習指導の方法を教授できると考えている. 二回の模擬授業間で取り上げる講義については,不必要な内容ではなく“必要な内容の整理”を行わせるようにする.そして,提供する情報が整った授業のシナリオを書かせ,話す練習をさせてから模擬授業二回目に臨ませる. 後期に行われる「保健体育科教育法II」では,さらに改良した映像を元に,より具体的なイメージを持たせるようにする.そして,実際に教師役と生徒役を設け模擬授業を展開することにより,生徒の視線で“役に立った言葉は何だったのか”を発表し合い,厳選していくことにする.また,器械運動の専門家に映像を見せ,申請者自らもよりより指導言語について迫って行きたい. 教育実習では,生徒たちのマット運動・跳び箱運動の試技をより多く録画し,比較しやすい映像の収集に努める.そして,「保健体育科教育法II」を受講した実習生が,授業中にどのような指導言語を用いているのか,つまり大学の授業が教育実習での指導に生きているかどうかについて分析を行う. 次年度も,学会に足を運び情報収集を行うとともに,研究成果の発表を行い,様々な研究者からの知見を研究に生かして行く.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,研究支援要員として大学院生一名と共にこの研究を遂行していくこととした.このことにより,申請者が大学で授業を行っている際に,教育実習の授業撮りを行ったり,分析の妥当性を確保するために一つのデータを二人で分析したりすることが可能になる.そのために,パソコンや分析機器などをもう一セット購入する予定である. また,模擬授業をより円滑に実施するための用具を購入しようと考えている.フラッシュカードを作成するための板状のマグネットや模造紙など,これまでは受講者に用意させていたため実態にばらつきが生じていた.授業者に模擬授業の展開方法をより吟味させ,予定された用具をこちらから用意しようと考えている. 教育実習を録画・分析するための機材は引き続き必要である.対象とする教育実習生の人数や開講している授業への対応も含め,複数台用意することが必至である.また,授業は複数あり長時間・長期間にわたるため,分析のためには大容量のパソコンやハードディスクを用いることも欠かせない. これらの研究で得られた成果は,国内外の学会で発表する.そのために,旅費を確保する必要がある.AIESEPや日本教育大学協会や日本質的心理学会など,国内外の多くの学会に参加し,研究に用いる資料を収集する.そのための旅費も確保する必要もある.
|
Research Products
(1 results)