2011 Fiscal Year Research-status Report
「体ほぐし」の知的教材化に資する哲学的「気づきことば」の案出と具体的授業案の創成
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23700701
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
山口 裕貴 桜美林大学, 総合科学系, 講師 (50465811)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 身体 / 身体観 / 身体知 / 私 / 他者 / 直観 / 行為 / 内発的報酬 |
Research Abstract |
「体ほぐし」の教材開発の一環である「気づきことば」として、「身体観」「私」「行為的直観」「フロー(流れ)」「セルフ・リウォーディング(内発的報酬)」などの案出および概念検討を行った。 具体的には、「身体観を醸成することの教育的意味を考える:震災後にあらためて「私」を問うこと」と題した論文において、「心理的欠乏」状態にある震災後のわれわれの生き方・あり方に関する試論として、身体教育論の見地と現象学の視点を用い、「身体観」および「私」という論点とその概念的活用法を提示した。次に、「西田哲学の「行為的直観」にみる身体解釈の一視点-「体ほぐし」の教育的意義の理論的一根拠として-」と題した論文では、哲学者、西田幾多郎の「行為的直観」を論拠として、運動場面における視覚的把握とそれへの対処は、「動く身体によってものを見る」ことで実現可能となることを示し、「体ほぐし」に見出すべき教育的意義の論理的根拠となりうる哲学的視点を抽出した。また、「フロー経験がもたらす「自己目的的」なるものの教育学的一考察-仕事と遊び及び武道とスポーツの特質解釈の過程で-」と題した論文において、フロー経験はどういった場面において生起しうるものか、「遊び(レジャー)」と「仕事」、そして、遊び(プレイ)としての「スポーツ」と、修行としての「武道」の見地から、各々のもつフローに関連した特質を抽出し、「体ほぐし」との関連性について検討した。最後に、予備的考察として、「イングランド公立学校における「体育科」の目標および内容の変遷」と題した論文で、「体育科」のそもそもの役割とは何であるか、という根本的意義論を深めた。 学会での口頭発表は、西田哲学の「行為的直観」に関するもの2件、湯浅泰雄の「気」の思想にみる心身一如論に関連して、少林寺小龍武院気功教師へのインタビュー結果を踏まえたもの1件を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「体ほぐし」における「身体観」の醸成を促す「気づきことば」の案出および概念検討について、東洋哲学を中心的材料としつつ吟味することができた。年度末に刊行された共著書において、「私」を中心概念としながら、身体への気づきの重要性を入念に考察できたことは非常に有意義であった。その他、学術論文および紀要を計3本掲載することができ、本研究を多角的に進展させたことも付言したい。 また、中国の西安、洛陽への研究出張により、少林寺小龍武院気功教師、郭俊鋒氏へのインタビューを行うことができ、「気」のもつ人間存在的意味を改めて検討することができた。さらにこの研究出張で、密教思想、禅思想を日本に普及した空海や道元といった高僧の足跡に間近に触れ、心身一如の思想により深く接近することができた。 以上の理由から、哲学的視座を利用した「体ほぐし」の知的教材化の考察および「気づきことば」の案出・検討として、おおむね順調な進展がみられたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
「体ほぐし」の知的教材化のための「気づきことば」を7点以上、西洋哲学の身体概念から案出していく。主たる対象哲学者は、メルロ=ポンティ、エリアーデ、ベルクソン、ドゥルーズ、マルセルであるため、フランスへの研究出張を2013年の2月頃に予定している。その際、小中高いずれかの体育教員に、身体観に関するインタビュー調査を行いたい。 また、自身の担当授業である「体つくり運動」において、身体観に関するアンケート調査を実施し、その結果を学会等で報告する。さらに、現職の小学校教諭との連携を図り、大学生と小学生の身体観の相違(いわゆる発達段階による相違)にも言及できればと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
西洋哲学の身体概念の再検討について、フランスの哲学者(主として、メルロ=ポンティ、エリアーデ、ベルクソン、ドゥルーズ、マルセル)を中心に進める予定であるため、フランスへの研究出張(一週間ほど)を2013年の2月頃に予定している。また、フランスの小中高いずれかの体育教員に、身体観に関するインタビュー調査を行う予定である。
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Research Products
(7 results)