2011 Fiscal Year Research-status Report
新任体育教師における心的成長プロセスのモデル構築に関する質的研究
Project/Area Number |
23700705
|
Research Institution | Biwako Seikei Sport College |
Principal Investigator |
南島 永衣子 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ科学部, 講師 (70455062)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 新任体育教師 / 心的成長プロセス |
Research Abstract |
本研究の目的は、新任体育教師の心的成長プロセス変容構築に関する検討である。近年、児童・生徒の学力低下や体力低下、さらにはコミュニケーションスキルの低下など学校現場が、社会から求められる課題は多種多様であり、今後ますます教育の日本社会に果たす役割は大きくなると言える。その中でも体育授業は、それらを包括的に扱うことができ、また、他教科と比べても、生徒間との身体的・心的距離が密接である。そのため、生徒の実態が顕在化しやすく、生徒の抱える問題や課題解決に向けた教育を展開していくことが可能となる。もっとも、実際の教育現場で起こる様々な事象に対して、特に、新任の体育教師がどのような視点で生徒を観察し、それをどのように意味づけ解釈して、相互作用に付与しているのかといった、葛藤から昇華までの心的成長プロセスはこれまで明らかとされていない。つまり、新任体育教師の心的成長プロセスを導き出すことは、今後の教師教育や初任者研修へのフォローアップに有効な示唆を得ることができる。そこで、本研究では、実際の教育現場で起こる様々な事象に対して、特に、新任体育教師がどのような視点で生徒を観察し、それをどのように意味づけ解釈し、相互作用に付与しているのか、葛藤から昇華までの心的成長プロセスを明らかにするため、「新任の体育教師はどのように成長していくのか」というResearch Questionのもと、心的成長プロセスのモデル構築に関し質的に検討することを研究目的とした。なお、平成23年度の研究課題1では、心理学や社会学、教育学など各分野において遂行されてきた質的研究に関連する文献の収集。収集した文献をもとにインタビューマニュアルの作成、予備調査の実施、同意書の作成、調査マニュアルの作成を行った。また、作成したインタビューマニュアルを使用し、6名の新任体育教師を対象に各学期終了後にインタビュー調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、心理学や社会学、教育学など各分野において遂行されてきた質的研究に関連する文献の収集。また、収集した文献をもとに、インタビューマニュアルの作成。インタビュー形式による「語り」の予備調査の実施。インタビューアへの同意書の作成。さらには、インタビューの熟達を図ると共に、観察・記録方法、調査観点や進行方法、タイムスケジュールなど、一貫性や柔軟性を有する調査マニュアルの作成などが主たる研究内容であった。しかしながら、Grounded Theory Approachについては、理論的サンプリングの考えから、必要であれば追加インフォーマットを施す必要がある。そのため、研究課題2において実施予定であったインタビュー調査については、研究課題1で遂行し、本来研究課題1で行う予定であった関連書籍など文献収集・整理については、研究課題2へと、一部研究内容を前後させた。その為、当初の予定より若干進後展している内容のところもあるが、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究課題2では、継続的に心的成長プロセスを検討するとともに、研究課題1で得られたデータの分析と文献の整理が中心的な研究となる。研究課題1で得られたデータを分析するため、6名の新任体育教師から得られたインタビューを逐語化する。その後、逐語記録で得られたデータから、トピックを抽出し、データを断片化する。断片化されたデータにコード名を付し、コード化する。コード化されたデータから更に、概念やカテゴリーを生成する。最終的にカテゴリーを精緻化し、その関連性から新任体育教師の心的成長プロセスを仮説的に導き出す。なお本研究は、仮説生成であるため、分析したデータの結果によって、カテゴリーの精緻化が十分に図られないという結論に至った場合については、追加インフォーマットを実施する必要がある。その為、概念やカテゴリーの生成については十分に吟味を行う必要がある。よって、理論的サンプリングの考えから必要であれば、カテゴリーが飽和状態になるまで、何度でも追加インフォーマットを実施する。質的研究や教師教育に関連する書籍についても、平成23年同様に資料収集並びに整理を継続する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データの分析については、その手法として「質的心理学研究法」の1つであるGrounded Theory Approachを採用している。そのため、これに関連する文献収集や関連図書の購入については毎年度予定している。また、本研究では、新任体育教師を調査対象としているため、個人のプライバシーに関連するデータを収集することになる。そのため、追加のインフォーマット(インタビュー協力者)においては、それに相当する謝金を準備する必要がある。くわえて、研究対象者へのインタビュー調査は限定された地域だけでないため、旅費についても必要経費となる。なお、インタビュー調査から得られたデータを逐語に記録するうえで、時間的制限が課せられる。そのため、逐語の記録協力を仰ぐとともに、個人情報保護ならびに学会等の倫理規定を厳守できる者のみへ協力者として謝金を用意する。さらに、得られたデータの電子化や一時的な保存に必要となるスペックの購入を計画している。
|