2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700717
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中澤 篤史 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (70547520)
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Keywords | スポーツ文化 / 運動部活動 / 戦後史 / 教師 / 日本教職員組合 |
Research Abstract |
日本のスポーツ文化は、欧州のそれが地域社会のクラブによって支えられてきたのとは対照的に、学校の運動部活動によって支えられてきた。この日本固有のスポーツのあり方である学校運動部活動は、いかにして形成・拡大・維持されてきたのか。この問いに研究代表者は継続的に取り組んでいる。その一環である本研究の目的は、学校運動部活動の歴史的展開を、a)明治20年代から昭和末期までの、b)中等教育機関を対象に、c)実態・政策・言説の視点から、d)事例分析による個別史と、e)米・英との比較も加えて、総合的に明らかにすることである。 2012年度は、2011年度に引き続き、戦後日本の中学校・高等学校の運動部活動の歴史的展開を解明する作業に取り組んだ。具体的には、教師集団が運動部活動のあり方をどのように考え、それを実践してきたのかを、教師自身の言葉や日本教職員組合の関連資料などを下に検討した。この作業は、2011年度に行った戦後運動部活動の全体史を踏まえて、教師に焦点を当てた個別史として位置づけることができる。結論としては、戦後の教師たちは、一方で「教師の運動部活動への従事は、教育か、それとも労働か」という葛藤を抱えながら、もう一方で「運動部活動に全生徒が自主的に参加するには、どうすればよいか」という難問に向き合ってきた。それゆえに、運動部活動が選手中心主義に傾くことを否定したり、必修クラブ活動の設置を否定したり、運動部活動そのものを社会体育に移行することに躊躇したりしてきた。その帰結として、戦後の教師たちは運動部活動を消極的ながら維持し続けたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後日本の中学校・高等学校の運動部活動の歴史的展開を解明する作業に取り組むことができたため、計画通りに、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、計画通りに研究を進めていく。具体的には、「明治20年代から昭和末期までの運動部活動の実態・政策・言説に関する通史的分析」「明治20年代から昭和戦時期までの運動部活動の形成・拡大過程に関する事例分析」「戦後運動部活動に対する教師集団の意識の変遷に関する分析」「米・英における運動部活動の歴史的展開に関する文献調査」に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
とりわけ重点的に取り組む予定である、「米・英における運動部活動の歴史的展開に関する文献調査」を遂行するため、2012年度わずかに残った研究費とともに、研究費を使用する予定である。この分析では、米・英の運動部活動の歴史的展開に関する文献を網羅的に収集し、包括的なリストを作成し、体系的なレビューを行う。日本の運動部活動の国際的特徴を示すためには、その明治導入期や戦後改革期のモデルになりながら、結局は、日本ほど大規模化することはなかった米・英の運動部活動の歴史と比較し、その異同を検討する必要がある。しかし、わが国に紹介されている米・英の体育・スポーツ史は、教科体育中心であり、運動部活動の史的全体像は不十分である。そこで文献調査を実施し、運動部活動の展開に関する日・米・英の比較史的考察を行う。そのための、旅費、資料購入・複写・閲覧に要する費用、およびインタビュー調査実施に要する諸費用をまかなうために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)