2011 Fiscal Year Research-status Report
地域におけるアダプテッド・スポーツ環境の構築に関する研究
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23700723
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
行實 鉄平 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 講師 (50449922)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アダプテッド・スポーツ / 総合型地域スポーツクラブ / 連携・協働 |
Research Abstract |
平成23年度は、大学・行政・総合型地域スポーツクラブの連携による障害者スポーツの参加機会向上事業(H20-21年度 文部科学省委託事業)に取り組んだ福岡県久留米市の事例を対象とし、その事業前後のプロセスを明確にするとともに、当該事業に関わる方々の意識を把握することを目的とした。具体的には、「(1)主に文献調査により、委託事業前の事業プロセスを明らかにする」、「(2)主に連携組織代表者に対するインタビュー調査により、委託事業後の事業プロセスを明らかにする」、「(3)主に障害者スポーツ指導員に対するアンケート調査により、当該事業を支えるボランティアスタッフの参加動機特性を明らかにする」、「(4)主に参加者(障害者)に対するアンケート調査により、当該事業(イベントや教室)の満足度等を明らかにする」ことで、上記の目的達成を目指した。その結果、まず、(1)(2)から、当該事業の事業数・事業財源は、委託事業後、軒並み減少したものの、当該事業に関わった大学学生および障害者スポーツ指導者(地域ボランティア指導員)により細々とではあるが事業が継続されているプロセスを明らかにすることができた。次に、(3)の障害者スポーツ指導員のボランティア動機は、資格種別では、上級指導者が中級・初級よりも高い傾向であったが、活動年数では、短い人が長い人よりも高い傾向であった。また、ボランティア動機の内容は、全体的に指導者は、自身が社会や人に認められること(社会的有利要因)や、何らかの報酬をもらうこと(報酬要因)を動機としていない方々であることも明らかとなった。最後に、(4)から、イベント(単発的活動)では、障害者は健常者よりも評価が高く、初回よりも2回目の参加者の評価が高かった。また、教室(定期的活動)では、児童(我が子)の変化を保護者が高く評価しており、このことから、事業を継続して実施することの必要性を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
福岡県の総合型地域スポーツクラブにおける障害者スポーツ活動を当該事例以外の地域にも展開していくために、福岡県障害者スポーツ協会と協力し、当初の研究計画には無かった、追加の調査および作業を実施することができた。具体的には、「(1)福岡県の総合型地域スポーツクラブにおける障害者スポーツ活動に関する調査」を実施し、福岡県下の総合型地域スポーツクラブにおける現在の取り組み状況を把握するとともに、今後取り組みを希望している総合型地域スポーツクラブを把握することができた。また、福岡県障害者スポーツ協会と徳島大学スポーツ経営学研究室との契約提携(個人情報保護の使用に関する取り決め)を行い、「(2)福岡県障害者スポーツ協会が所有する障害者スポーツ指導員の活動実績のデータベース化」を実施することができた。これにより、障害者スポーツ活動を支援する個人(指導者)と組織(地域クラブや大学等)とのマッチング作業が可能となり、現在、福岡県障害者スポーツ協会では、他の地域(総合型地域スポーツクラブ)における実践を開始する準備を進めている。 さらに、同協会では、この上記マッチングを促進していく為に、「地域支援スポーツ教室」という、有資格者(障害者スポーツ指導者)派遣型のスポーツ教室を平成23年度より創設した。これは、いうなれば、同協会がこれまでに行ってきた「中核施設集合型のスポーツ事業」から「地域施設派遣型のスポーツ事業」への新規展開事業であり、今後、各地域での障害者スポーツ活動を活性化させる可能性を持つ事業として期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度と同様の研究調査により、総合型地域スポーツクラブにおける障害者の参画機会向上事業(H19-21年度 文部科学省委託事業)に取り組んだ高知県高知市の事例を対象とし、その事業前後のプロセスを明確にしていく。また、平成25年度は、平成23年度の久留米市、平成24年度の高知市における総合型地域スポーツクラブ以外の組織(既存スポーツ団体や個人等)の活動状況調査およびその既存組織・団体の総合型地域スポーツクラブとの連携意識に関する調査を実施する。さらに、平成25年度は、上記、文部科学省委託事業を展開した希少な2事例の事業継続課題を検証していくことで、地域におけるアダプテッド・スポーツ環境の構築に向けた総合型地域スポーツクラブでの持続可能な障害者スポーツ事業(アダプテッド・スポーツ事業)方策を議論・展望していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費予算は、1,200,000円であり、それに対する執行額は、621,766円であった。よって、残額の578,234円は、平成24年度の研究費予算として繰り越すこととなった。この残額を繰り越すことができた理由としては、「(1)民間研究費を活用できた事」、「(2)連携組織とのネットワーク深化により各種調査を実施する上での様々なサポートを受けることができた事」などが挙げられる。平成23年度の対象事例(久留米市)は、過去に代表者が携わっていた事例であったことから、上記の残額を確保することができたが、平成24年度の対象事例(高知市)は、新規介入事例であることから、研究遂行に対する科研費の増額が必要不可欠となる。 平成24年度の研究費使用計画としては、物品費(523,794円)は、統計解析ソフト(平成23年度は当該事例における連携大学のものを使用したが平成24年度はバージョンアップされたものを購入予定)、ビデオカメラ(ICレコーダーではなく、会議や教室等におけるスタッフと参加者の相互行為が記録できるビデオカメラを購入予定)、文具用品等の購入を予定している。次に、旅費(402,280円)は、各種調査(徳島-高知)、専門家との研究会(徳島-京都、徳島―佐賀)、学会発表(徳島-東京)等を予定している。次に、謝金(162,160円)は、各種調査補助者謝金、各種調査データ入力作業者謝金等を予定している。最後に、その他(290,000円)は、印刷費(平成23年度は民間研究費を活用したが平成24年度は科研費を使用)、通信運搬費(平成23年度は民間研究費を活用したが平成24年度は科研費を使用)、学会参加費等を予定している。
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