2011 Fiscal Year Research-status Report
地磁気・加速度センサによるスキージャンプ選手のモニタリングシステムの研究開発
Project/Area Number |
23700728
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 永欣 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (10385958)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スキージャンプ / 踏切りモーションモニタ / 地磁気・加速度センサ / 飛距離の自動計測 |
Research Abstract |
H23年度は研究計画書における開発目標のうち、(1)踏切りフォームの定量的モニタの実現と(3)練習時における効率の良い選手へのフィードバックの実現を行い、(2)の飛距離自動計測システムはH24年度以降に開発する計画であった。(1)に関して、地磁気・加速度センサのスキージャンプ選手への安定的な装着などが難しいという問題が残っているものの、踏切りフォームのモニタを実現した。具体的には、踏切りタイミングのずれ、腰・膝など踏切りに重要な部位がのびる速度や順序の違いなどがモニタ可能である。一方、既存の地磁気・加速度センサを改良しスポーツ向けの装着の容易性などを付与する計画であったが、進行が遅れている。H23年夏にバッテリを交換すると地磁気の測定値が大幅に狂う問題が発見され、その対策を優先したためである。充電を繰り返す際にバッテリが磁化されるのが原因であり、バッテリごとに磁化の様子が異なるため、バッテリ交換により大幅な測定値の狂いが発生した。センサチップとバッテリの距離を離す工夫をしたケースを設計している。これによりこの問題は回避できる見込みである。(3)に関して、センサの改良が進行が遅いため、次年度も考慮して、先行してジャンプ台へのネットワーク敷設を行った。この際、他プロジェクトで利用して再利用を義務付けられた機材を活用した。H20採択のSCOPEの課題である、有線と無線の組み合わせによる二つのデジタル・ディバイド地域の課題を解消する研究開発で使用した高耐外装光ケーブル、同プロジェクトで開発された光メディアコンバータを岩手県八幡平市田山スキー場の県営ジャンプ台に、指定管理者の許可を得て設置した。ブレーキングゾーンにもPCを設置することにより、選手は停止後ただちに自分のフォームを確認できる。ブレーキングゾーンのPCは(2)の飛距離測定にも活用される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、交付金額が確定しなかったため、高額と思われたスポーツ等で使用することを考慮して安全性・装着の容易性に配慮した地磁気・加速度センサのケースの設計・開発を保留していた間に、バッテリーを交換すると地磁の測定値が大幅に狂う不具合が発見された。交付金額決定の遅れが偶然にも怪我の功名として作用している。充電を繰り返すと、充電電流によりバッテリの材料(ケーシングや正極材、配線材等)が磁化されることが判明した。充電電流と放電電流がほぼ等しければ磁化はさほど進まないはずであるが、充電電流が圧倒的に大きいため磁化されてしまう。また、充電を繰り返さなければ発見できない不具合であるため、発見が遅れた。当初、地磁気測定値が狂う原因は全く不明であったが、バッテリとの関連があることが判明し、紆余曲折を経てバッテリ表面の磁気を測定しバッテリのX線写真と比較したところ、電極付近が強く磁化されていることが判明した。また、センサチップとバッテリの距離を離せば影響が少なくなることが観察されたため、その後、センサチップとバッテリの距離と地磁気測定値の狂いの関係を定量化した。この結果に基づき、バッテリを交換しても測定値に影響がないケースの設計に着手した。このように、不具合の原因特定に4、5か月ほどかかったため、ケースの設計に着手したのは年明けである。また、既存センサを利用する他のプロジェクトでも、ケースが破損するなどの問題が年末ごろから発生したため、その対策を含めて検討している。一方、遅延が発生することがH23年夏ごろに予期されたため、先行してスキージャンプ場へのネットワーク敷設を実施した。敷設したネットワークを用いて、すでにブレーキングゾーンに設置したカメラによる着地点撮影をコーチングボックスと同期して行うことを試行するなどしている。
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Strategy for Future Research Activity |
ケース設計をこのまま進め、夏ごろまでにスキージャンプ選手に装着して実験を行うのが今年度の目標である。ケースの素材、ケースに付与する機能、ケース内のレイアウト等を確定したので、最終的な設計に入る。ケースはプラスチック製とし、ケースを分解しないままでのバッテリ交換、バンド等による装着の容易性の確保を目指している。従来のケースでも、バッテリを交換すると地磁気の測定値が狂うため較正作業が必要、向きが安定しない、サポータ等が必要などの問題があるものの、一応は装着可能なため、従来ケースに収納した地磁気・加速度センサでも実験を実施することも考慮する。昨年度計測した、スキージャンプ選手の足首に撞着したセンサの加速度データを検討したところ、踏切り後、安定して飛行している状態ではほぼ自由落下しているため0.2G程度、着地の瞬間には衝撃により2G程度の加速度が観測されていることが判明した。これを利用することで、着地の瞬間の同定は比較的容易に実現できると思われる。また、昨年度先行してジャンプ台にネットワーク設備を設置したため、ランディングバーンに設置し選手の着地の様子を撮影するPCと、コーチングボックスに設置してセンサからのデータを受信するPCの間の動画およびセンサデータの正確な同期を実装すれば、目標は達成できると考えられる。実験室内で実装とPC間の同期をとれることの確認を進め、サマージャンプのシーズン中には実験を実施したいと考えている。また、飛距離の計測を実現した時点で、スキージャンプ選手およびコーチからヒアリングを行い、どのようにすれば効果的なフィードバックが実現できるかを検討する必要がある。この検討結果に基づき、効率的なフィードバックを実現するためのプログラム等の実装を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の支出として大きなものは、ケース製造費である。このほかに、ジャンプ台で使用するための機材の購入費、研究発表に要する費用の支出も予定している。また、数人のスキージャンプ選手が参加する練習などではセンサの数量が不足しつつあるため、場合によってはセンサ基板の追加生産を考えている。上記のとおり、今後、最終的なケース設計を進めセンサの改良を行ったうえで実験を行う計画である。ケースは樹脂製であるため、製造方法により大幅に所要金額が異なる。すなわち、金型を用いて射出成型する場合100万円以上、簡易金型を用いる場合は製造数が10個から20個程度になるが数十万円程度である。プラスチックのブロックから削り出す方法は若干安く済むが、生産量が少ないため選択しづらい。必要なケースの個数はセンサ基板を追加生産するかどうかによっても変わってくるため、早急に決定する必要がある。遅くとも9月上旬までにはケースを生産したいと考えている。ジャンプ台にネットワークを敷設する際には、手もちの機器を流用した。選手の踏切りの模様を撮影するカメラについては、選手とコーチから解像度が高く選手の位置に合わせて首振りができるようなカメラを要望されている。自動で選手を追尾するカメラ台は高価であるため購入できないが、HD解像度の出力を持つカメラと、これからの入力が可能なノートPC等の購入を考えている。これらの購入等は上記のケース製作費により左右される。成果発表については、研究会、国際会議、論文誌投稿を予定している。時期は確定していない。
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Research Products
(4 results)