2011 Fiscal Year Research-status Report
九州地方における民俗芸能としての女相撲と女相撲興行の関係に関する研究
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23700732
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
一階 千絵 福岡女子大学, 文学部, 助教 (70434347)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 民俗学 / 相撲 / 女性 / 芸能 |
Research Abstract |
平成23年度は、九州地方における民俗芸能としての女相撲の事例を網羅的に収集し、その分布域や性質(歌舞だけでなく実際の取組を伴うか否か等)を把握することにあてた。そのために九州島内の各県の県立図書館、県庁所在地の市立図書館等で県史、市町村史、民俗調査報告書等各種の郷土資料、新聞記事等から民俗芸能としての女相撲の事例の記録を収集した。 民俗芸能としての女相撲は歌舞をメインとするものが多いことから、日本体育学会第62回大会(於:鹿屋体育大学、平成23年9月25-27日)において、「九州地方における女相撲踊りの分布状況」と題して歌舞を伴う女相撲の分布域に関する口頭発表を行った。この発表では相撲に関するモチーフを取り入れた舞踊のうち、主に女性によって踊られるものを「女相撲踊り」と称している。福岡県ではみやま市瀬高町に1件のみ、大分県では事例を発見できなかったが、歌舞だけでなく取組(過去に伴っていたもの・初っ切り等取組の演技も含む)を伴うものの記録は九州島内の北西部に多くみられ、踊りや土俵入りのみを行い実際の取組は伴わないものの記録は南部にもみられることがわかった。衣装に関しては、九州島内の北西部ではシャツ・股引の上に化粧廻しを着用し、南部では着物の上に化粧廻しを着用するものが多い傾向がある。長崎市式見のものは女相撲興行との関連がうかがえるが、男性の大相撲からの導入(宮崎市木花等)、近隣地域からの導入(佐賀県大町町→同武雄市朝日町、鹿児島県肝属郡肝付町→同垂水市市木中元垂水等)、日中戦争・太平洋戦争時の徴兵による人手不足により相撲の担い手が男性から女性に変化したもの(佐賀県小城市三日月町堀江)等があることも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
民俗芸能としての女相撲は、数年に一度しか披露されないものや不定期に披露されるものが多いが、平成23年度は各地で披露されない年回りにあたっており、また予備調査で披露の機会を調べられた段階で既に終わってしまっていた等、現地調査を行える事例が想定をはるかに下回っていた。 また、平成24年2月末に突然所属機関を変わることが決まり、旧所属機関における教育業務の残務整理、引き継ぎ、転居等のため3月に予定していた聞き取り等の現地調査をまったく行うことができなかった。平成23年度に使用予定であった助成金に多くの残高が発生したのはそのためである。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい所属機関では、大学における長期休暇中でも学外実習の訪問指導等の教育業務が発生することが判明している。そのため、九州での現地調査を頻繁に、もしくは長期間にわたって行うことは難しい。そこで、平成24年度は興行としての女相撲に焦点を当て、九州を含めた地方巡業の様子を明らかにすることを狙う。その途上で、女相撲興行そのものの研究に加え、芸能史、特に見世物や大衆芸能の文化史に関する資料をもとに、プロフェッショナル・専業者の行う芸能が民俗芸能にいかなる影響を与えたかという点を検討することも必要になると考えられる。また、そのためには書籍以外にも新聞記事等の資料を探す必要もあると考えられる。これらの資料の収集・分析が平成24年度の中心となろう。 成果発表に関しては、平成23年度に続き学会大会、学会誌等での発表を継続して行い、研究の質の向上をはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記「現在までの達成度」に記述した通り、想定外の転勤のため現地での調査を行えず旅費を中心とした残額が発生した。また、所属機関を変わったことにより、書籍や複写した資料を収納する棚等、新たに購入する必要のある物品が生じている。そのため平成24年度は改めて研究遂行のための環境を整えなおすべく物品購入費の割合を多めにすることが必要になる。また、「今後の研究の推進方策」に記述した通り、女相撲興行の調査研究に焦点を当てるだけでなく、芸能史等の分野においても記録・情報の収集が必要になると考えられるので、書籍の購入や資料の複写による支出が予想される。 旅費に関しては、九州での現地調査を頻繁に行うことは難しいことが予想されるが、調査が可能であれば行う。また新聞記事等の資料を探すため、国立国会図書館等の図書館、資料館への旅費・交通費も必要である。
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Research Products
(1 results)