2011 Fiscal Year Research-status Report
疾走能力向上のための「オーダーメイド型走技術トレーニング」の開発と実践
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23700737
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 俊典 青山学院大学, 社会情報学部, 助教 (80555178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | スプリント走 / 疾走技術の評価 / トレーニング / オーダーメイド |
Research Abstract |
本年度は,青山学院大学陸上競技部(短距離)のトレーニングに実験的に介入し,データの収集および分析を継続的に行い、「個々人の動作モデル」を作成することによって「オーダーメイドの疾走技術評価法」について検討することを主な目的とした。そのために、試合期において行われる最大スピードを高めるトレーニング手段としての60m走(50m地点の1サイクルの動作)を分析対象として複数回にわたってデータを収集し、「個々人の動作モデル」の作成を試みた。本報告では,2名の大学女子一流スプリンターの分析結果を主に示すこととする。なお、2名の対象者はそれぞれ本年度の関東インカレ女子200m優勝者と日本インカレ女子400m優勝者であった。本年度の測定・分析結果から、1)複数回にわたって個人のデータを測定することによって個人内の平均値やばらつきを評価することが可能となり、個人間において動作の変動性は異なっていることが明らかになった。2)対象者それぞれにおいて、個人内における疾走速度、ストライド長およびピッチと動作との関係は異なっていた。3)個人の複数回のデータをAe et al.(2007)の方法を用いて規格化・平均化することによって「個々人の動作モデル」として構築することができた。以上の結果,疾走速度に影響を及ぼす技術的要因は個人内および個人間では異なることから,オーダーメイド型の疾走技術評価およびトレーニング立案のためには,対象者の縦断的な測定・分析をとおして,複数回の分析データから得られる「個々人の動作モデル」を構築する必要のあることが示唆された.次年度は,「個々人の動作モデル」とこれまでに報告されてきた一流選手のモデルや横断的な分析結果から得られた合理的な動作との関連性とを加味した疾走技術評価法を作成し、それらを基にしてトレーニングに介入した結果について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象者の試合スケジュールやトレーニング計画との関係から、当初の予定であった測定頻度については十分に達成することができなかった。しかし、大学のトップ選手を扱う介入型の実験形態であることを考慮すれば、今年度の測定回数は及第点と考えられる。実際に、最大目的であった「個々人の動作モデル」を構築することはできたので、主要な目的は達成したといえる。また、上述の問題に加えて、測定・分析開始予定時期と本年度の予算執行との間のタイムラグもあったために、トレーニング周期ごとの動作モデルは作成に至らなかった。このことについては、本年度も継続的に測定・分析を行いながら検討を進めている。その他、トレーニング計画および対象者数と機材との数の関係から、体力測定(特に筋力)に関するデータを測定することは十分にできなかった。また、作成に至った「個々人の動作モデル」については、現状では「オーダーメイドの疾走技術の評価」を行うまでに考察が進められていないが、これらは実際に「個々人の動作モデル」を用いたトレーニング介入も含めての検討となるので現在進行中の課題といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,昨年度に作成した「個々人の動作モデル」とこれまでに報告されてきた一流選手のモデル(黒澤ほか、2005;阿江、2010;矢田ほか、2012)や横断的な分析結果から得られた合理的な動作(宮下ほか、1986;伊藤ほか、1998)との関連性とを加味した疾走技術評価法を作成し、それを基にしてトレーニングに介入した結果について検討することが主要な目的である。具体的には、昨年度のデータを選手およびコーチにフィードバックし、ディスカッションすることによって、今後のトレーニング計画、特に疾走技術トレーニングの方向性を明確にする。また、計画されたトレーニングコンセプトに基づいてトレーニングを遂行している経過について、トレーニング映像および実験データの分析結果、選手およびコーチの主観的内容の収集とフィードバックを繰り返すことによって、試行錯誤の中から得られる質的・量的データを継続的に収集する。このことによって、どのような特徴をもった選手が、どのような技術の変遷を辿りながら疾走パフォーマンスを向上させるのかといった知見を得ることができることから、いくつかのタイプに類型化された選手に有用となる技術トレーニングの方法論・計画論を、そして最終的には選手個々人に対するオーダーメイドの技術トレーニングの方法論・計画論を提示することを目標とする。また、本年度は以上の検討課題について得られた知見をまとめて、各学会大会や研究誌に成果を報告することによって、情報収集や情報公開を行うことを目指す。このことによって、上述の方法の共有を図り、スポーツパフォーマンスの向上において重要となる個別実践事例の知見を蓄積する方法論を構築する手がかりとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、疾走技術トレーニングに必要なトレーニング機器・機材の購入、データフィードバックのための映像機器や保存メディアが主に必要となるので、それらの費用を計上している。また、昨年度の測定回数の結果を考慮して、次年度も継続して測定・分析を行うこととしたので、測定が複数回にわたること、測定場所が1か所ではないことなどから測定時には大学院生あるいは学生の協力を受けることとしている。そのため、実験補助についての謝金および実施場所への移動経費を計上している。その他、本研究に関する情報収集や研究成果の社会還元のために、国内の学会参加、競技会での調査、研究打ち合わせに関わる旅費および論文発表に関わる経費を計上している。
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