2011 Fiscal Year Research-status Report
近世後期における庶民による伊勢参宮の旅の歩行距離に関する研究
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23700742
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
谷釜 尋徳 東洋大学, 法学部, 准教授 (40527933)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 近世 / 庶民 / 旅 / 伊勢参宮 / 歩行 / スポーツ史 |
Research Abstract |
研究初年度となる平成23年度は、史料の収集およびその分析作業を中心に据えた。 本研究のテーマである「近世後期における庶民による伊勢参宮の旅の歩行距離」を明らかにすべく今年度主に収集を試みた史料は、近世後期の庶民が伊勢参宮の旅の道中で書き残した「旅日記」である。史料収集作業の結果、当該の旅日記として100編近くを入手することができた。今回収集した旅日記の多くは、地方自治体史の資料編等において活字体(翻刻版)で掲載されたものであったが、近世庶民が書き記した旅日記の原物(原史料)も数編手に入れることができた。これら原史料については、すみやかに翻刻作業を進めて今後の研究に有効に活用していきたい。 今年度は、旅日記の収集作業に多くの時間を費やしたため、実際に旅人の歩行距離を明らかにしていくことは次年度に残された課題となった。その分、今年度は旅人の歩行距離に特化したものではなく、その周辺の事情として、旅人の「集団歩行」に着目した研究論文をまとめている。 当該論文では、旅日記のみならず「名所図会」をはじめとする絵画史料も積極的に活用した。研究の結果、(1)近世後期における庶民による旅の同行者数が平均して13人程度であったこと、(2)旅の集団が多人数におよんでも歩行のペースに影響はなかったこと、(3)集団歩行時の隊形には横に広がらない配慮がみられたこと、(4)道幅の狭い近世日本の街道ではすれ違う際に「左側通行」の慣習が存在したこと、などの諸事情を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた今年度の課題は、近世後期における庶民の旅日記を可能な限り収集することであったが、その目的は概ね達成されたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は多くの旅日記を収集することができたため、次年度はその分析作業を行い、最終的には「近世後期における庶民による伊勢参宮の旅の歩行距離」が明確になるような研究論文を執筆したい。また、収集した原史料の翻刻作業も上記と同時進行で行い、「生の史料」が語る旅の実際にも積極的にアプローチしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き、次年度の研究費の多くは、近世旅行史関連文献の収集に費やすことを計画している。
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