2011 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ選手への自律訓練法継続指導が競技ストレスに及ぼす効果の生理心理学的検討
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23700757
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
菅生 貴之 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (60360731)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自律訓練法 / 精神神経内分泌免疫学 / コルチゾール / 慢性的ストレス / アスリート |
Research Abstract |
本年度は大学に所属するアスリートのストレス状態を定量化することを目的とし、主に学生アスリートの慢性的ストレスによる起床時コルチゾール反応の変動について、練習後と休養後およびオフシーズンの比較検討を行った。学生アスリートは一般的な大学生と比して、日常生活上のストレスの他に競技場面でのストレスが蓄積するため、慢性的にストレス事態にさらされやすい。そうしたことから心理的、身体的な指標によってストレス状態を正確に把握することはバーンアウトの予防や競技力向上のために必要である。 唾液中コルチゾール濃度の起床直後からの急激な上昇を起床時コルチゾール反応(Cortisol Awakening Response; CAR)とよび、ストレスへの身体反応系であるHPA系反応の指標とされている(Pruessner et al, 1997)。本年度は学生アスリートを対象にCARの測定を行い、慢性的ストレスによる反応の練習後と週に一度の休養後およびオフシーズンの違いを比較検討することを目的とした実験を行った。日常的に練習を行っている大学男子バスケットボール部員16名を対象とし、一週間の練習後と一日の休養後、さらにオフシーズンに学内施設に宿泊してもらい、翌朝の起床直後・起床後30分・45分・60分後に唾液を採取した。 その結果、練習後と一日休養後ではともにCAR自体は認められたが、その反応性とPOMS-S得点の違いは認められなかった。オフシーズンではCARの反応性の低下が全体的に認められた。これらの結果から、慢性的ストレス状態の違いを示す指標としてCARが適切に反映しているものと推察された。今後は慢性的ストレス指標としてCARを用い、自律訓練法の介入によって違いが認められるかどうかについて検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、介入方策の検討を先行して行う予定であったが、本年度は指標としての正確性の検討を優先して行った。その結果、概要で述べたとおり、指標としての適性が示されたことから、次年度以降の研究のベースが着実に進められたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行った研究と、その研究環境の整備により、研究体制はおおむね完成したと考えられる。生化学的データの解析も迅速に行うことが可能となったことから、次年度以降の研究は推進してゆくものと考えられる。また、データの処理に関するアドバイザーとして、研究計画書に記載した研究実施体制に基づき、数名の研究者との連携を確認して、共同研究者として学会発表等で連名とさせていただいている。解析後のデータに関して、迅速にアドバイスを受けることができる体制は整ったと言えるだろう。研究成果については、平成23年度のデータをもとに、日本体育学会、日本スポーツ心理学会において発表の予定である。学会発表を通じて、論文の作成につなげていきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は多くの実験を行う予定である。特に試合に向けて、アスリートの慢性的ストレスがどのように変動していくかについて検討を行う予定であり、多くの参加者を募ることとなるため、謝金が発生する。また、30名程度の参加者に対して、10ポイント以上の検体を提出してもらうこととなるため、それらの検体検査費が発生する。また検体検査の実施に必要となる消耗品は定期的に支出することとなる。検体検査においては、手技にある程度熟達した大学院生などに補助していただく必要があり、その際にも謝金が発生する。また、平成23年度は検体検査の件数が想定していたよりも少なかったことから、検体検査費(キット等消耗品、謝金)の支出が少なかったため、次年度に執行する予定である。研究環境はおおむね整いつつあるため、高額な機器の購入は行わない予定であるが、10万円程度の機器、たとえば滅菌機や撹拌装置などの購入は必要となるであろう。さらに次年度においては成果公表として国内2回、海外1回の研究発表を予定しており、これらの旅費、学会大会参加費が発生する。また、論文投稿も検討しているため、投稿費用が発生する。
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