2012 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ選手への自律訓練法継続指導が競技ストレスに及ぼす効果の生理心理学的検討
Project/Area Number |
23700757
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
菅生 貴之 大阪体育大学, 体育学部, 准教授 (60360731)
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Keywords | 自律訓練法 / コルチゾール / 暗算課題 / ストレス / 自律神経機能 / 心拍変動 / 内分泌活動 |
Research Abstract |
競技者のストレス反応に対するリラクセーション技法について検討を行っていくに当たり,本年度は自律訓練法(Autogenic Training)実施時の生体反応について検討を行った.先行研究においては,暗算課題を実施することによるストレス反応の増加は,唾液中のコルチゾール分泌と交感神経活動を賦活することが示されている.一方でリラクセーション技法はHPA系および交感神経活動を抑制することがよく知られている.本年度の研究においては男性陸上競技選手のストレス課題とリラクセーション技法実施中の内分泌および自律神経活動を評価し,両変数の関連性を明らかにした. 実験には38名の男性陸上競技選手が参加し,ストレス課題として10分間の暗算課題を実施した後に5分間のリラクセーション技法(AT条件)と安静を保つ(コントロール条件)2条件煮て検討を行った.唾液の採取および状態-特性不安検査(STAI)はセッションの前,暗算課題後,セッション後に行われた.心血管系活動は両方のセッション中継続して採取された.本研究のデータにより,スポーツ選手に対するMA課題ではコルチゾール濃度はコントロール条件においてのみ賦活され,心拍変動に変化は認められなかった.スポーツ選手に対してはMA課題のストレス負荷としての強度が不足している可能性が示された.しかし、リラクセーション法の実施後に,コルチゾール濃度が低下し,副交感神経活動(HRV HF)は賦活されたことから,ATのリラクセーション効果が示された.一方でセッション中の唾液中コルチゾール濃度変化傾向と心理的反応においては関連性が認められた.このことから,内分泌機能および心拍変動は競技者のストレスおよびリラックス時の心身の状態を評価しうることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自律訓練法実施中の生理心理反応に関する検討が対象人数を増やすのに時間がかかったが,ようやくそのめどが立ち,論文として投稿することができた.この論文をベースとして来年度以降の検討を行っていくが,現時点でデータの採取は終わっているため,来年度は当初の計画通り,成果公表を中心に行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの2年間において,競技者のストレス状態の定量化指標として,唾液中のコルチゾール濃度が適したものであるかについてと,自律訓練法がおよぼす生体への影響についての検討を行ってきた.おおむねそれらの目的は達せられたと考えられる.当初の予定として3年目の平成25年度は成果公表を主たる目的とし,蓄積してきたデータを適切に処理して,国内外の論文に投稿していく.具体的には,起床時コルチゾール反応についてのデータはいくつかの国内外の学会において発表を行うことでデータに関する検討も十分に行ってきたことから,まず国際誌を目指して投稿の予定である. 一方これらのデータや成果公表を基盤として,今後は自律訓練法の継続的実施が競技者の慢性的ストレスに対して何らかの影響を及ぼすことを検討していく必要がある.自律訓練法の一時的な効果のみならず,長期的・継続的に実施することによって心身の調整が適切に行われ,慢性的なストレス状態にある学生アスリートのストレス対処方略としての有効性を検討していくことが必要となるであろう.平成25年度はこれらの継続的実施の方法論について,成果公表の傍らで検討を進めて行きたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は成果公表を中心に行うため,論文投稿に関する費用の支出が必要となる.国際誌への投稿を検討しているため,論文の校閲料金や投稿料などが必要である. また,データについて他の研究者殿ディスカッションを行う必要があるために,国際学会において発表を予定している。イタリアにおいて10月に開催される国際精神生理学会では,起床時コルチゾール反応に関するテーマで,発表申し込みを行い、すでにアクセプトされている. 自律訓練法の継続的指導の効果の検討においては,自律訓練法のセミナー的な方法によって実験参加者を募ることが必要となる.セミナーの開催にあたってはその準備および実施段階においてアルバイトが必要となり,謝金が発生すると思われる.また,唾液中コルチゾールの採取は継続的に行っていくため,マイクロチューブやフリーズボックスなど,実験消耗品が必要となり支出することとなるであろう.
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