2012 Fiscal Year Annual Research Report
心的動揺に対する運動制御機構―脊髄反射回路の解明と非侵襲的脳刺激の導入―
Project/Area Number |
23700761
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
田中 美吏 福井大学, 教育地域科学部, 講師 (70548445)
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Keywords | 感情 / 心理的プレッシャー / 経頭蓋直流電気刺激 / tDCS / 脊髄反射 / 姿勢制御 / EMG / 反応時間 |
Research Abstract |
大脳皮質の興奮性を局所的に促通・抑制させるためのツールとして,経頭蓋電気刺激(tDCS)が神経生理学分野で注目されている.本研究では,tDCSをスポーツ科学分野に応用させるための基礎研究として,運動機能の司令部ともいえる大脳の一次運動野の興奮性を局所的に促通もしくは抑制させ,そのときの運動パフォーマンスや,その背景にある筋活動及びキネマティクスを調べることを最終年度の目的とした.右足(利き足)の膝関節伸展による急速踏み出し運動を実施させ,反応時間,踏み出しの運動時間,右大腿直筋の筋活動,右足の移動距離・最大速度・最大加速度を測定した.実験1では健常な9名の実験参加者を対象に,一次運動野の右下肢筋支配領域に1mAの電流刺激を20分与えたが,全ての従属変数においてanodal(促通刺激),cathodal(抑制刺激),sham(疑似刺激)の条件間の差は見られなかった. 一次運動野の下肢筋支配領域は皮質の深部に位置するため,実験1において運動機能に変化が見られなかった原因として電気刺激の強度が考えられた.そこで実験2では,実験1とは異なる健常な9名の実験参加者を対象に,2mAの電流刺激を10分与えた.運動課題及び従属変数は実験1と同様であった.実験の結果,anodal条件はsham条件に比べて反応時間が早くなることや,cathodal条件に比べて運動時間も短縮するなどの運動機能の向上が見られた.これらの結果から,tDCSによる一次運動野の興奮性の促通が健常者の運動機能に対して正の効果を生む可能性が示唆された. また昨年度からの継続課題として,心理的プレッシャーが姿勢制御運動を行う際の下肢筋の筋活動や脊髄反射機能に及ぼす影響を調べる追加実験にも取り組んだ.実験の結果,プレッシャーによって前脛骨筋の筋活動の増大や,脊髄反射の抑制が生じることが明らかとなった.
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