2011 Fiscal Year Research-status Report
車椅子バスケットボールの相互行為における「障害」の組織化に関する研究
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23700762
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Research Institution | Tokuyama University |
Principal Investigator |
渡 正 徳山大学, 経済学部, 准教授 (30508289)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 障害者スポーツ / スポーツ社会学 / 相互行為 / ビデオエスノグラフィー |
Research Abstract |
本研究は、障害の社会性と個人性の関係における身体の問題に対する経験的な論点を実証的に提示するという意義を持っている。つまり車椅子バスケットボールにおける「障害」をめぐる相互行為分析によって、スポーツ場面において障害がどのように意味づけられ組織化されているかの検討が本研究の目的であった。 平成23年度の研究課題は、全体の基礎作りである。すなわち当初計画においては、調査の開始と理論的枠組み・方法論の検討であった。調査については、フィールドワークと実際のゲーム場面のビデオデータの収集を行い、相互行為分析の資料を集めることが目指された。理路的枠組み・方法論の検討のにおいては、関連文献の検討や研究会の開催などによっての改良が目指された。 実際に平成23年度においては、以下のことが達成されたと考える。まず、調査については、昨年度行われた全国障害者スポーツ大会山口大会(プレ大会含む)でのビデオデータの収集ができた。また、関東で活動中の車椅子バスケットボールチームでのフィールドワークを行うことができたため、練習の様子や試合の様子のビデオデータの収集が達成された。 理論的枠組みの検討・方法の検討については、関連資料の検討が行われ、その成果の一部として、平成23年12月に4人の研究者を集め研究会を開催して発表を行った。そこではエスノメソドロジー的方法だけではなく、いわゆるアクターネットワークセオリーの観点およびスポーツ科学的ゲーム分析の方法から本研究の課題が検討できること提案された。それらを踏まえ、3月の成果発表においては、23年度に蓄積したデータと、検討された方法論を暫定的に用い、ビデオエスノグラフィーとスポーツ科学的ゲーム分析の応用によった障害の社会性に関する相互行為分析を提示した。これにより23年度の研究課題については一定程度の成果を得られ、次年度以降研究課題を明確化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の当初計画においては、(1)フィールドワークによるビデオ撮影と(2)理論的枠組の検討を行う予定であった。(1)については、ビデオデータを収集は行なっているものの、まだまだ十分なデータが蓄積されたとは言えず、今後も継続して行なっていく必要があるだろう。ただし、ビデオデータの収集過程において、新たな論点・方法についての示唆が十分に得られており、大幅な研究計画の遅れは生じていない。一方(2)については、研究会や学会発表を行なったことにより、理論的枠組の検討を行なった23年度の成果としては一定程度の成果が得られたといってよい。しかしながら、新たな課題も浮き彫りになった。それらは24年度の研究課題とも関連してはいるが、主にデータ取得およびトランスクリプト作成のための方法論である。この点については当初計画よりも若干の遅れが生じているものの、本研究全体として考えれば23年度はおおむね順調に課題を遂行できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の当初計画は1年目に取得したデータを元にトランスクリプトを作成することが課題となっている。具体的には、(1)トランスクリプトの作成、(2)方法論の確定、(3)データの分析・解釈、(4)継続的調査である。前項に記載したように、方法論の確立とビデオデータの蓄積については、24年度も継続して実施していく必要がある。ただし、これらについては24年度の研究計画に当初から存在しており、大幅な計画の必要はないと考えている。9月までを目処とし、方法論の確定・データの蓄積を行う。ただし、フィールドワークによるデータの取得については、本務校近辺のチームだけではなく、以前から交流のある関東で活動するチームにも協力を依頼し、より多くのデータを蓄積できるよう計画を変更した。以降の期間においてトランスクリプトの作成とデータの分析・解釈を行い、スポーツのゲーム場面について多元的データを用いた体系的記述を行う。また3月に開かれるスポーツ社会学会においてその成果を発表するとともに、学術論文として公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、前年度に得られた成果および課題を遂行するにあたり、以下の研究費の使用計画を立案した。まず、物品費については、前年度の成果を踏まえたデータ収集を行うため、ビデオ撮影・音声収録に関する器材を購入することに重点を置く。主な購入品名・仕様は以下の通りである。高精細画像用デジタルビデオカメラ(SONY:HVR25J)、ICレコーダー(ローランド:R-09)、ゲーム分析ソフト(Sports Code Game Breaker Plus/Track Performance)、障害学・エスノメソドロジー・スポーツ社会学関連文献などであり総額650千円である。また、継続調査・研究会・成果発表のための旅費交通費280千円や、トランスクリプト作成のための謝金70千円、計1000千円の使用を計画している。
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