2011 Fiscal Year Research-status Report
エラー行動の評価及び修正と関連する脳内情報処理過程に関する研究
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23700769
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
飯塚 太郎 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 研究員 (90455444)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エラーモニタリング / 脳波 / ストループ課題 / 反応時間 |
Research Abstract |
時々刻々と変化する状況に応じて人間が適切な行動を選択し実行していくためには、行動のエラーを検知し、修正に結びつけるためのモニタリングシステムが必要だと考えられる。本研究では、選択反応課題の遂行中、エラーや反応時間の遅れなど、行動の修正が必要な状況と関連付けられる脳活動について検証することを試みた。 被験者は健常な成人10名であった。被験者は、PC画面上に提示されたストループ課題を120試行し、その際の脳波を記録した。本研究では、頭頂部(Cz)における回答直前のθ帯域(回答を基準として-500~-100ミリ秒:Res_θとする)の平均パワーに注目し、課題のパフォーマンスを反応時間の早い正解試行(CR_fast)、遅い正解試行(CR_slow)、時間切れ不正解(Omission Error: OE)、誤回答不正解(Commission Error: CE)の4種類に分類したうえで比較を行った。その結果、Res_θは回答に時間を要した試行ほど大きくなり、CR_fastに対してOEで有意に大きい値をとった。次に、課題のパフォーマンスが次の試行の同じ区間(Res_θ)の瞬時パワーに及ぼす影響についても検証を行った。すると、次の試行自体は全て正解で反応時間にも有意差がなかったにも関わらず、Res_θはCR_fast直後の試行で最大、OE直後の試行で最小となり、両者の間に有意差が見られた。 これらの結果から、頭頂部から記録されるθ帯域の脳波パワーは、選択反応課題における反応の遅れを反映するとともに、前の試行のパフォーマンスによっても影響されうることが明らかとなった。課題のパフォーマンスモニタリングと関連する脳活動が、直前の試行のパフォーマンスによっても影響される可能性が示されたことは、行動の評価と修正とを結びつける脳のはたらきを明らかにしていくうえで重要な結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、選択反応課題遂行中、エラー検知と関連付けられる脳波パターンについて検証し、一定の成果を得ることが出来た。一方で、連続する認知課題提示の中で、エラー検知から修正に向けてどのような脳波パターンが生じるかを検証するため、得られたデータの解析をさらに継続していく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた研究成果について、さらにデータ数を増やしながら、引き続きより詳細な検討を行う。また別途、エラー行動の検知・修正及びそれを支える脳内情報処理過程が、エラー状況に対する情動的評価に従って修飾されうる性質のものであるか、新たな実験を通じて検証する。一方で、今年度の研究成果を含め、学会発表や論文作成に向けた準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、予定していただけの被験者数を確保できず、被験者謝金を中心に次年度に繰り越す研究費が発生した。こうした状況から、次年度に追加実験を行う予定であり、当該研究費はそのために使用する。一方で、当初より次年度に割り当てられている研究費については、別途新たに実施する実験経費として使用するほか、データ公表のための学会参加費、論文投稿に向けた英文校正費などに使用する予定である。
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