2012 Fiscal Year Annual Research Report
運動能力と体温の限界における脳内神経伝達物質の機能的役割
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23700773
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長谷川 博 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70314713)
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Keywords | カテコールアミン / マイクロダイアリシス / 持久的運動 |
Research Abstract |
運動能力は様々な要因によって決定され、体温や脳内神経伝達物質もその重要な要因の一つとして考えられている。本研究は、神経科学及び運動生理学領域で注目されているテレメトリー法(小型体温計の埋め込み)、脳内マイクロダイアリシス(微量透析)-HPLC法、代謝測定法を組み合わせた実験系を用いている。特に本年度は初年度に整備した実験系を用い、脳内の神経伝達物質の働きを選択的に修飾した際の温暖及び暑熱環境下における運動能力と体温調節反応の関係を明らかにすることを目的とした。 実験にはWistar系雄ラットを用いた。核心温、尾部皮膚温(熱放散の指標)、酸素消費量(熱産生の指標)を連続的に測定した。また体温調節中枢である視索前野・前視床下部(PO/AH)の脳潅流液は、マイクロダイアリシス法により10分毎に採取し、HPLCでドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンを同定した。測定は運動前の2時間のトレッドミル上における安静時、トレッドミル運動時(速度18m/min;傾斜5%)、疲労困憊後2時間の回復期間とした。運動開始直前に右側脳室へRinger液、またはドーパミンD1受容体拮抗薬のいずれかを投与した。ドーパミン受容体拮抗薬の投与により、対照群と比較して、運動中におけるPO/AHにおけるドーパミンの有意な抑制が観察された。また、運動開始15分間における熱放散反応の抑制、運動時の深部体温の抑制傾向、持久的運動能力の向上などが観察された。以上の結果は、運動中の脳内神経伝達物質の修飾が体温調節機構や中枢を介した運動能力の低下に関与していることを支持するものである。しかしながら、ドーパミン受容体拮抗薬の詳細な影響や他のカテコールアミンの機能的役割については、今後さらに検討を進める必要があることが示唆された。
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Research Products
(4 results)