2011 Fiscal Year Research-status Report
運動が腸管免疫の変化に及ぼす影響~抗菌ペプチドによる検討~
Project/Area Number |
23700777
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
谷村 祐子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90551458)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / cryptdin-4 / 腸管免疫 / 運動 |
Research Abstract |
本研究は,抗菌ペプチドdefensin (マウスにおけるcryptdin)に着目し,急性及び継続的な運動が腸管免疫パラメータに及ぼす影響について明らかにすることを目的とする.本年度においては,(1)抗菌ペプチド発現の小腸の局在について確認をし,(2)運動による部位別によるcrypt-4の経時的変化について明らかにした.また(3)加齢によるcrypt-4の発現の変化について検討を行った. (1)では,C57B/6マウス(8週齢)に虚血再灌流(,上腸間膜動脈を結紮(虚血)30 分,結紮解除(再灌流)の60分)を施し,小腸遠位,中間部及び近位を各々6cm 採取し,crypt-4 mRNA 発現量を測定した.小腸遠位において有意に発現が高かった.また虚血再灌流においてその発現は低下する傾向にあった. (2)では,C57B/6マウス(8週齢)に一過性運動(トレッドミル運動,30m/min 60分)を課し,安静時,運動直後,運動3時間後,運動6時間後,運動24時間後と小腸粘膜を採取し,各々crypt-4の発現をqRT-PCRによって検討した.小腸遠位部と近位部では,運動直後から運動3時間後まで増加して,6時間後では安静時の値に戻った.よって運動によって,crypt-4の発現は増加するものと考えられた.また大腸では運動後から6時間後まで増加傾向にあったが,コントロール群と比較して差はなかったため,日内変動の影響があったと思われる. (3)では,C57B/6マウス(15±1カ月齢)の加齢マウスと8週齢の若齢マウスでは加齢マウスにおいてcrypt-4の発現が低いことを示した. 以上のことから,小腸においては遠位にてcrypt-4の発現は高く,運動によって一時的に増加後,減少することが示唆された.また加齢によってその発現は減少することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗菌ペプチドにおける研究に関しては,基礎的な部分が解明されていないことが多い.本年度は,運動との関わりだけでなく,虚血再灌流といった生理学的な手法を用いて,腸に負荷をかけた.次年度よりの実験をスムーズに進行するために,サンプル採取場所など実験の条件設定のための実験を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画であった腸炎モデルによる運動とcrypt-4の発現について,腸炎モデルより先に,運動の単独刺激によるcrypt-4の発現と他の免疫因子について検討することとした.具体的には腸内細菌の発現の変化を腸内免疫全体の指標として考えている.これはTotal eubacteria、Clostridium-coccoides group、Bacteroides-Prevotella group、Bifidobacterium、Lactobacillusなどの各属特異的プライマーを用いて、リアルタイムPCR法による解析を行う.サンプルは,各個体の盲腸内容物よりDNAサンプルを使用する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,25年度に行う予定であった加齢と運動トレーニングによる腸内抗菌ペプチド(defensin)の応答についての検討を行う.但し,腸炎モデルではなく単に運動のみの介入とする.これは加齢マウスが予想よりも早く入手することができたために実施する.また本実験は運動トレーニングのみに対するcrypt-4の発現の変化と腸内細菌の発現の変化に関連があるかを検討することを目的とする.方法は雄性老齢マウス 20 カ月齢 コントロール群(n=15)、トレーニング群(n=15),雄性若齢マウス 8週齢 コントロール群(n=15)運動は,トレッドミル走(10~15m/min)を 30分で 3 回/週,8 週間行う。測定項目はdefensin,IgA,血管透過性,腸アポトーシス関連(caspase-3 等),腸及び血中サイトカイン類(IL10・TNFα等)・腸TollLikeReceptor の発現を予定している.測定方法は遺伝子発現量及びタンパク発現量(defensin,IgA,腸アポトーシス関連・腸サイトカイン類・腸TLR の発現),血中サイトカイン類(ELISA 法)血管透過性:エバンスブルー尾静脈内投与,大腸・小腸の組織染色(ヘマトキシリン・エオジン染色),盲腸内糞便による腸内細菌の発現(PCR法)を行う.
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