2011 Fiscal Year Research-status Report
身体運動による骨格筋温度の上昇は骨格筋エネルギー代謝を調節する因子か?
Project/Area Number |
23700787
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
越中 敬一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助手 (30468037)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 熱 / ラット / 糖取り込み |
Research Abstract |
身体運動中、骨格筋は活動筋から産生された熱により一時的に高温環境下に暴露されていることが予想される。本研究では、身体運動によって生じる骨格筋温度の上昇が、運動中・運動後の骨格筋エネルギー代謝を調節する重要な因子である可能性を動物実験により検討している。平成23年度の研究計画に基づき実験を行った結果、Wistarラットから摘出した長指伸筋を試験管内で熱刺激(36-42℃)すると、骨格筋の糖取り込み反応が熱量依存的に亢進することを発見した。この反応は熱刺激の開始によって急激に促進され、熱刺激の終了によって急速に減弱するという非常に速い反応性と、わずか2℃の熱量の違いを感知するという高い感受性を示した。また、この際に解糖系の代謝経路(glucose-6-phosphateと乳酸の蓄積)とグリコーゲン分解系の代謝経路が活性化することも認めた。これらの反応は身体運動中に認められる反応であり、本研究結果は、身体運動によって産生させる熱が運動中の骨格筋エネルギー代謝を調節する因子である可能性を強く示唆している。実際にラットに走行運動を負荷してみると、運動強度が低いにも関わらず骨格筋温度は~2℃上昇した。この熱産生の程度は熱刺激による糖取り込みを亢進させるのに十分な上昇であり、熱刺激による糖取り込みの亢進作用が多くの身体運動の様式において機能している可能性を示した。さらに、熱刺激が糖取り込み反応を惹起する分子機序を検討した。AMPK,p38MAPK,Akt,TBC1D1,TBC1D4(AS160)と呼ばれる細胞内情報伝達分子は、活性化すると骨格筋糖輸送担体GLUT4を細胞膜上に移行させ糖取り込みの亢進に関与する因子である。本研究では、骨格筋を熱刺激するとこれらの分子が熱量依存的に活性化することを認め、熱刺激による糖取り込みの亢進に重要な役割をしている可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単離骨格筋への熱刺激の条件を最適化する事や測定器の不調・メンテナンスに時間を要し、平成23年度研究計画Iにおける1)~3)のうち3)に関しては24年度に行うことになった。このことに関連し、23年度分の予算の一部(約4万円)を24年度分に繰り越して、リアルタイムPCR用試薬等の購入を行う予定である(繰越金に表記済)。現在までに、およそ仮説に準じた結果を順調に得ており、上記の結果の一部はすでに第66回日本体力医学会大会にて発表をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度研究計画におけるIの3)と、平成24年度研究計画における研究計画IIIを遂行する予定である。現在までに早急に解決すべき重大な問題は生じていないため、基本的に研究計画に準拠した研究が可能であると考えられる。研究結果の一部は第67回日本体力医学会大会にて発表をする予定であり、すでに海外学術雑誌へ投稿する準備も進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度研究計画におけるIの3)の遂行に関し、23年度分の予算の一部(約4万円)を24年度分に繰り越して、リアルタイムPCR用試薬等の購入を行う予定である(繰越金に表記済)。現在までに早急に解決すべき重大な問題は生じていないため、基本的に研究計画に準拠した研究費の使用が可能であると考えられる。
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