2012 Fiscal Year Annual Research Report
身体運動による骨格筋温度の上昇は骨格筋エネルギー代謝を調節する因子か?
Project/Area Number |
23700787
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
越中 敬一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (30468037)
|
Keywords | 熱刺激 / ラット / 骨格筋 / 糖取り込み / AMPK / PI3K |
Research Abstract |
身体運動中、骨格筋は活動筋から産生された熱により一時的に高温環境下に暴露されていることが予想される。本研究では、身体運動によって生じる骨格筋温度の上昇が、運動中・運動後の骨格筋エネルギー代謝を調節する重要な因子である可能性を動物実験により検討している。 平成23年度の研究では、単離したラット骨格筋を試験管内で熱刺激(36-42℃)すると骨格筋温度が上昇し、身体運動によって生じることが知られている糖取り込みの亢進,グリコーゲンの分解反応,細胞内情報伝達分子の活性化(AMPK,p38MAPK,Akt,TBC1D1,TBC1D4)が生じることを明らかにしている。 平成24年度の研究では、骨格筋温度の上昇による糖取り込みの亢進作用における責任分子を各種阻害剤により検討した。その結果、SB203580(p38MAPKの阻害剤),KN93(CaMKIIの阻害剤),L-NMMA(一酸化窒素合成酵素の阻害剤)の処置は糖取り込みに影響を与えなかったが、compound C (AMPKの阻害剤),wortmannin (PI3Kの阻害剤),LY294002 (PI3Kの阻害剤)の処置は糖取り込みを阻害した。このことは、骨格筋温度の上昇はAMPKとPI3Kの活性化を介して糖取り込みを亢進している可能性を示唆している。さらに、骨格筋温度の上昇による糖取り込みの亢進は生体内においても生じることを認めた。 以上の研究から、骨格筋温度の上昇はそれ自体が筋収縮様の作用を骨格筋に及ぼすことが明らかになった。身体運動中における骨格筋のエネルギー代謝は、筋収縮そのものの影響に加え神経系や内分泌系の影響を反映して調節されていることが知られている。本研究ではさらに、身体運動によって生じる骨格筋温度の上昇が重要な代謝調節要因である可能性を示唆している。
|