2012 Fiscal Year Research-status Report
アロマセラピーによるヘルスプロモーション:精油の抗アレルギー作用機序解明
Project/Area Number |
23700800
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
柴倉 美砂子 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (30314694)
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Keywords | アロマセラピー / 精油 / 喘息 / アレルギー / ヘルスプロモーション |
Research Abstract |
本研究では、アロマセラピーに用いられる精油の作用をマウス喘息モデルを用いて検討した。これまで3種類の精油を喘息マウスにそれぞれ投与して、気道抵抗測定、肺胞洗浄液中の細胞分画およびサイトカイン濃度、血清IgE値、病理組織学的検査にて、喘息マウスに対する精油の効果を評価してきた。その結果、3種類の精油のうちの1つに喘息病態の軽減作用があることが確認された。そこで24年度は、精油をマウスに吸引させる方法を用い、前年度効果の認められた精油の喘息病態の軽減作用を検討した。前年度同様に、気道抵抗測定、肺胞洗浄液中の細胞分画およびサイトカイン濃度、血清IgE値の測定、病理組織学的検査を行った。 精油の吸引により喘息マウスの気道抵抗に変化は認められなかった。喘息マウスでは増加する肺胞洗浄液中の総細胞数が精油吸引により有意に抑制された。特に、好酸球数が有意に抑制された。喘息マウスでは粘液を分泌する杯細胞が著しく増加するが、精油吸引によって杯細胞数が有意に抑制された。喘息マウスで検出される血清IgE値は、精油吸引により影響を受けなかった。喘息マウスで上昇した肺胞洗浄液中のサイトカインが精油吸引により有意に抑制された。これまでの実験から、特定の精油を吸引させることで喘息マウスの病態を軽減することが明らかとなった。精油の効果を科学的に検証した報告は少なく、この研究結果は、経験的に用いられている精油の疾患に対する作用機序の一端を解明するものである。このような科学的実証を積み重ねることで、安全なアロマセラピーによるヘルスプロモーションを社会に発信して行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喘息マウスで増加する肺胞洗浄液中の総細胞数、好酸球数が精油吸引により有意に抑制された。喘息マウスでは気道杯細胞が著しく増加するが、精油吸引によって杯細胞数が有意に抑制された。一方、喘息マウスで検出される血清IgE値は、精油吸引により影響を受けなかった。喘息マウスで上昇した肺胞洗浄液中のサイトカインが精油吸引により有意に抑制された。当初計画していた肺門リンパ節のサイトカイン分泌能は測定できなかった。これまでの研究結果から、特定の精油は喘息マウスの病態を軽減することが判明した。以上のことより、精油のマウス喘息モデルに対する作用が明らかになり、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、一種類の精油に急性喘息モデルにおける喘息病態の軽減作用が認められている。今後は、この精油と主成分の類似した精油を用いて同様の実験を行う。また、精油吸引により杯細胞形成抑制効果が認められることから、ヒト肺粘液性類表皮癌細胞株NCI-H292細胞を用いて、精油の粘液分泌抑制作用を検討する。現在用いているマウス喘息モデルは急性喘息モデルである。喘息発作の誘発を長期間行う慢性喘息モデルでは繰り返すアレルギー性炎症に伴った気道の肥厚や線維化といった気道リモデリングが観察される。今後、慢性喘息モデルを用いた精油の気道リモデリング抑制作用についても検討する。 これらの実験から得られた結果を踏まえて、科学的実証に基づいた精油の利用法を提案するためアロマセラピーについてのセミナーを開く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の購入や、細胞培養試薬、サイトカイン測定キットなどを消耗品として購入する。アロマセラピー学会、臨床検査医学会に出席するために旅費を使用する。その他の経費を、論文校正費用などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)