2011 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児の身体活動の基礎研究:スマートフォンを媒体とした身体活動支援ツール開発
Project/Area Number |
23700816
|
Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
大橋 千里 富山高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (60462131)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 知的障害児 / 身体活動量 / iPhone / 支援ツール |
Research Abstract |
平成23年度は大きく分けて2つの計画を実行した。1つ目が知的障害児の日常の身体活動量の測定である。当該年度は富山県立富山総合支援学校、東京YMCAの協力を得て、9~18歳の知的障害児を対象に歩数計(ライフコーダ4秒版 スズケン社製)を用いて測定を行った。東京YMCAは夏季休暇の1回のみではあったが4名の測定を実施し、富山県立富山総合支援学校では夏季休暇と2学期の2回にわたり22名の測定を行った。また、知的障害児の身体活動量に関する研究ついてイギリスで行われた16th European College of Sport Scienceのポスターセッションにて2演題発表を行った。 2つ目の計画は、長期休暇中に家庭と学校が密に連携しながら知的障害児の健康管理を行うための身体活動支援システムの開発である。このシステムにはスマートフォンのiPhoneを用い、iPhoneに内蔵されている3軸の加速度計を利用した歩数計・運動カウンター、食事内容・体重を入力できるカレンダーといった機能が全て備わったアプリケーションを開発し、そのデータをメールを介してコンピュータに送信できるようにした。またこのアプリケーションは数字の概念が難しい知的障害児のために、目標の達成度をアニメーションや音で知ることができるような工夫を行った。一方、データを受信したコンピュータでは、そのデータを簡易にグラフ化し身体活動量を評価できるソフトウエアも開発した。これらの成果については、アメリカで行われたGrace Hopper Cerebration of Women in Computing Conference 2011のポスターセッションにて1演題発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で知的障害児の身体活動量測定の協力を予定していた特別支援学校を諸事情により変更し、当該年度は富山県立富山総合支援学校に測定の協力を依頼した。特別支援学校の教員や保護者の多大なるご理解により、予想よりも多くの高等部の生徒の身体活動量を測定することができた。また、流通経済大学の大槻先生との共同により行った東京YMCAでの測定では、特別支援学校小学部、中学部に通う児童、生徒にも協力していただけたため、当該年度は幅広い年齢層の児童生徒の測定を実施することができた。しかし、東京YMCAでの測定では測定した児童生徒たちが通う学校での協力を得ることが難しかったため、富山総合支援学校と同様に2学期の測定を実施することができなかった。 富山高専の秋口先生の協力のもと行っているiPhoneを用いたツール開発では、いくつかの機能が備わったアプリケーションを作成した。まず予定通りiPhoneに歩数計の機能を作成し、そのデータをコンピュータに送信し、そのデータをコンピュータ上で日、週、月といった周期で簡易にグラフ化することができるソフトウエアも同時に作成した。また運動カウンターとしての機能も追加し、これには3軸加速度センサを使うことにより様々な動きに対応することができ、いろんな用途で使用することが可能になった。この運動カウンターの機能については実際に特別支援学校でダンベル体操や縄跳びのカウンターとして使用してもらい、好評であった。当初の予定ではこれらの機能がすべて備わったiPhoneを実際に富山高専の学生に使用してもらい実用性について検討する予定だったが、当該年度はシステムの開発が中心となり、実用性についての検証は運動カウンターのみであるため、システム全体としての検証はまだ行っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず日常の身体活動量の測定については平成24年度も当該年度と同様に富山県立富山総合支援学校に協力依頼をし、高等部の1~3年生を対象に測定を行う。昨年度と同じ特別支援学校に測定協力を依頼することにより、前年度のデータと合わせて縦断的・横断的に身体活動を評価することが可能となる。また、平成24年度の計画として富山県立富山総合支援学校を今春卒業した生徒の卒業後の追跡調査を行う予定としていたが、卒業生に再度同意を得ることが難しくなったため、今年度は富山県内の障害者支援施設に身体活動量の測定協力を依頼し、知的障害を有する成人の方を対象とした測定を行う予定である。また、平成24年度は国内の学会(日本体力医学会、日本学校保健学会など)を中心に本研究の成果を発表する予定である。 身体活動支援システム開発については当該年度に作成したシステムをまず富山高専の学生に使用してもらい実用性などを検証し、必要に応じて修正を図る。そして、次に特別支援学校に通う生徒とその保護者、教員の同意を得て実際に夏期休暇などの長期休暇にこのシステムを使用してもらう。その中で、生徒の実態や障害の程度、または教員や保護者のニーズに合わせてカスタマイズしていき、より実用的なシステムとして改良していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)知的障害者の身体活動量の測定については、当該年度に購入にしたライフコーダの修理費を60,000円(15,000円×4台)とボタン電池代を6,000円(100円×60個)として計上する。その他通信費や用紙代として20,000円を計上する。2)身体活動支援システム開発については、当該年度に開発したiPhoneを用いた身体活動支援システムの実用化を検証するためにiPhoneを3台購入する。(機種代204,000円,1年間の通信費180,000円)3)旅費については、国内の学会、日本学校保健学会(神戸)と日本体力医学会(岐阜)にて本研究の成果を発表する予定。(140,000円)
|