2012 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児の身体活動の基礎研究:スマートフォンを媒体とした身体活動支援ツール開発
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23700816
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
大橋 千里 富山高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (60462131)
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Keywords | 知的障害児 / 身体活動量 / iPhone / 支援ツール |
Research Abstract |
平成24年度は2つの事業を遂行した。1つ目は知的障害を有する生徒の身体活動量の測定である。前年度と同様に富山県立富山総合支援学校高等部にて夏季休暇、2学期の2回にわたって歩数計(ライフコーダ4秒版)を用いて測定を実施した。2、3年生については前年度に引き続き2年連続で測定を実施した生徒もいることから、当該年度の結果と合わせて縦断的・横断的な考察が可能となった。当該年度の測定結果については次年度の学会にて報告予定である。 また、当該年度は前年度の身体活動量の測定結果に関して日本体力医学会、日本学校保健学会にて報告をした。 2つ目の事業は、長期休暇中に家庭と学校が密に連携しながら知的障害を有する生徒の健康管理を行うことができる身体活動支援システムの開発である。生徒が学校へ通学しない長期休暇中の健康管理を行う際に、学校と家庭を繋げるツールとしてiPhoneも用い、そのアプリケーションを作成した。このアプリケーションには歩数計や運動カウンター、栄養管理の機能を搭載した。このアプリケーションの大きな特徴は、一人ひとりの動きの方向や大きさに対応してカウントができるように、運動カウンターを開発する際に『遺伝的アルゴリズム』を採用したことである。これにより、身体の動きの範囲が小さい生徒にも使用することができる、もしくは決められた動きをしなければカウントしないので、より動きに意識をしながら運動ができるといったリハビリテーションの要素を含むことができる。このシステムに関しては、国内学会のファジィシステムシンポジウム、国際会議Society for Information Technology and Teacher Education (SITE 2013)にて発表している。そして、現在このiPhoneアプリケーションは実用化に向け富山県内の特別支援学校にて試用している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
知的障害を有する子供の身体活動量の測定は計画通り進み、2年間継続して富山県立富山総合支援学校高等部の協力の下で測定を実施することができた。これにより、前年度と当該年度の結果を踏まえて横断的、縦断的に評価することが可能となった。さらに当該年度は前年度とほぼ同じ条件で測定を実施することができたため、当該年度と前年度に測定を実施した生徒のデータを合わせることで被検者数が増加し、結果に対する因果関係により説得力を持たせることができる。また、被検者数が増えたことにより、多様な生徒の実態や障害の程度に応じた運動や健康づくりに関する支援方法の確立へと将来的に本研究が発展していくことが期待できる。 従来の計画では、当該年度は知的障害を有する成人の身体活動量の測定も予定していたが、現在所持しているライフコーダ(歩数計)の個数が十分ではなかったため、特別支援学校での測定と並行して成人の測定を実施することができなかった。これについては次年度の課題として実施する予定である。 スマートフォンを利用した身体活動支援システム開発では、スマートフォンのアプリケーションおよびそれで測定したデータをコンピュータ上で処理するソフトウエアを作成した。これは、家庭と学校が連携して行う知的障害を有する生徒の健康づくり支援を想定している。スマートフォンで測定した日常の身体活動量(歩数)を遠隔にある学校のコンピュータから教員が確認をし、その結果について本人およびその家族へフィードバックするというサイクルを繰り返すことにより、健康づくりのための運動習慣の形成やモチベーションの維持を図ることを目的としている。そして、現在はそのアプリケーションの実用化に向けて、1人の特別支援学校生を対象に利用してもらっており、その実用性や利便性などを実証している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
身体活動量の測定については、当初の予定では特別支援学校の生徒と成人の測定を予定していた。しかし、当該年度は両者ともに行うことが困難であったことから、次年度は当該年度に実施することができなかった成人の測定を重点的に試みることとする。そしてこれまでに測定を実施した特別支援学校高等部の生徒と、成人の結果から、学校教育が知的障害を有する生徒の身体活動量に及ぼす影響、さらに学校卒業後の知的障害を有する成人の生活の変化と身体活動量についての関係を明らかにする。 身体活動支援システム開発については、当該年度に開発した身体活動支援システムの実用化をさらに進めるために、多くの生徒とその保護者や学校に協力を得て、利用してもらいながら本システムに関する意見やアイデアを収集し、より実用性の高いアプリケーションへの再構築を図る。また場合に応じて、使用してもらう生徒の実態や障害の程度など個に合ったアプリケーションへと改良をしていく。 また、これまでの身体活動量の測定結果について国内の学会にて発表するとともに、知的障害を有する子どものための体育の授業のあり方、余暇の過ごし方について、身体活動量の測定結果をもとに検討し、特別支援教育および体育学に関する学会誌に論文を投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入 次年度の成人の測定に向けてライフコーダ(歩数計)を4台追加購入する(32,000円×4台=128,000円)そして、昨年度の測定で故障したライフコーダ3個を修理する。(20,000円×3個=60,000円)当該年度に開発した身体活動支援システムの実用化に向けて、当該年度に購入した1台のiPhoneに加えてもう一台追加購入し、より多くの方に利用してもらえるようにする。(50,000円×1台=50,000円)そしてそれに伴うiPhoneの月額使用料が前年度に購入したものと合わせて2台分必要となってくる。(4,000円×12カ月×2台=96,000円)また、特別支援学校で身体活動支援システムを使用してもらう際に必要なノート型パソコンを購入する。(200,000円) 旅費等 平成24年3月にアメリカ・ニューオリンズで行われた国際会議 Society for Information Technology and Teacher Education(SITE 2013)にて研究発表した。この研究発表については実施済みであり、登録費、旅費等を含めての金額が40万円であった。(400,000円×1件=400,000円)さらに次年度は国内学会にて2件発表予定である。(50,000円×2件=100,000円) その他の費用として、学会誌へ論文を投稿予定である。(25,000円×2件=50,000円)
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