2011 Fiscal Year Research-status Report
摂取栄養素とアディポサイトカイン値に基づく肥満症の効果的な栄養指導の確立
Project/Area Number |
23700821
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
山陰 一 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究員 (40598900)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 臨床 / 肥満 / メタボリックシンドローム / 栄養 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
本研究の目的は、肥満や代謝症候群(MetS)のコホートを基盤に、簡易食物摂取調査票と心血管病(CVD)リスクの定期的測定による「摂取栄養素とアディポサイトカインに基づく心血管病予防の為の効果的な肥満・MetSの栄養指導の確立」である。最近、大規模研究にて高脂血症薬・エイコサペンタエン酸(EPA)による心血管病発症抑制効果が示された。今回、申請者は肥満症116例において、EPAによる末梢血単球の炎症惹起タイプ(M1)と抗炎症タイプ(M2)への影響を検討した。高脂血症合併肥満90例では、非合併肥満26例より単球中M2マーカー・IL-10の発現が有意に低値であった。肥満症43例においてEPA 1.8 g/日の3ヶ月投与により、TGとPWVの低下、EPA/AA比、アディポネクチンや単球中IL-10発現の上昇を認め、EPAによるPWV改善には単球中IL-10とアディポネクチンの上昇が有意に関連していた。THP-1細胞においてEPA投与によるIL-10上昇はPPARαではなくPPARγを介すること、ChIPアッセイなどよりEPAがPPARγのIL-10プロモーターへの結合を増加させ、IL-10発現を上昇する事を証明した。以上、EPAによるPPARγを介した単球M1/M2タイプの質的改善作用がCVD予防に寄与する可能性を報告した(Diabetes Care in revision, 第32回日本肥満学会)。また、肥満症54例にエストロゲン様作用を有する大豆イソフラボン・エクオールの効果を無作為割りつけにて検討した所、エクオールによる血糖、LDL-CやCAVIの改善効果を認めた(Clin Endocrinol, in press, 2012)。本研究により、各栄養素の新しい機能性に立脚した健康的な食生活の指針の提案が可能となり、CVD予防の為の新しい機能性食品の開発に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
12012年4月時点で肥満症・MetSの多施設共同前向きコホート登録数が目標例数・1000例を超え、1045例に達し多数のデータベース構築に成功している。また、研究計画にあった下記評価項目の取得も順調である。(1)肥満歴、(2)家族歴、(3)簡易食物摂取調査票を用いた摂取カロリー・摂取栄養素の調査、(4)体重、BMI、腹囲、皮下・内臓脂肪量、(5)血圧、脈拍、(6)MetS危険因子の重積度、(7)血中・尿中評価項目 a)糖脂質代謝、b)腎機能、c)炎症性サイトカイン、d)アディポサイトカイン、(8)動脈硬化指標:PWV・CAVI、(9)心機能検査、(11)基礎代謝、(12)血中脂肪酸24分画、飽和/不飽和脂肪酸比、血中EPA/AA比、(13)簡易食物摂取調査票(摂取食品を各栄養素別に分類・カロリー換算できる表)を用い、総カロリー・食事内容・各栄養摂取量から、炭水化物・蛋白質・脂質の摂取量(率)、脂肪酸バランス(SMP比)算出。大豆・肉類・魚類・果物・食物繊維など各栄養素摂取率を算出。申請者は上記評価項目を用いて、特に多価不飽和脂肪酸・EPAによる単球機能、アディポネクチンと動脈硬化の改善作用を報告した(Diabetes Care in revision, 第32回日本肥満学会等)。肥満症・MetSにおけるエクオール投与の有効性も報告した(Clin Endocrinol, 2012 [Epub ahead of print])。また、調査票をもちいた摂取栄養素の調査の結果より、動脈硬化やアディポネクチン・減量成功度と強く関連する栄養素を同定している。さらに、肥満・動脈硬化関連遺伝子712SNPs遺伝子多型の検討も行い、各摂取栄養素によるCVDリスク軽減効果に対する遺伝素因の影響についても解析の準備も整えている。以上より、平成23年度における研究達成度は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
I. 臨床研究:連携研究者(佐藤・小谷)と連携して1) 肥満症・MetS患者に脂肪酸組成(EPA・DHA・パルミチン酸・リノール酸など)の異なる食事を摂取させ、血中脂肪酸24分画の変化を測定し、アディポサイトカインやCVDリスクへの影響を検討する。2) 各脂肪酸の反応性の遺伝素因の検討:脂肪酸の標的分子と想定される核内受容体, GPCR、TLR4遺伝子、肥満・リポ蛋白関連SNPsを解析し、各SNPs別に各脂肪酸への反応性・感受性の違いを検討する。3) 減量治療における低脂肪食、低炭水化物食または地中海食という栄養素の違いによるCVDリスクへの影響の違いを検討する。II. 血管構成細胞や肥満モデル動物を用いた基礎研究:1) 各脂肪酸・飽和/不飽和脂肪酸・EPA/AAの抗肥満・抗動脈硬化作用機序の解明:肥満・MetSの単球や脂肪細胞、ヒト単球系細胞・THP-1細胞など血管構成細胞に各脂肪酸(EPA, AA等)を添加し、炎症性サイトカイン・M1/M2マーカー比、単球・マクロファージの走化性・接着性などを検討する。またPPARγ・αや最近ω3PUFAの受容体と報告されたGPR120などの阻害剤やsiRNAなどを用い各脂肪酸の作用機序を検討する。2) 肥満モデル動物における検討:肥満・糖尿病モデル(ob/ob, KKAy, 高脂肪食負荷)マウス, 動脈硬化モデルマウス(ApoEKO等)に各脂肪酸やエクオールなどを投与し、糖脂質代謝・血管障害(Mφ浸潤等)を比較検討する。III. 摂取栄養素に基づくMetSのオーダーメイド栄養指導の確立:上記より、摂取栄養素率、脂肪酸の種類(脂質の質), エクオールの有無, アディポサイトカイン値や遺伝素因に基づいた肥満症・MetSのCVD予防の為のオーダーメイド治療プログラムを考案し、指導効果を数か月後に判定し、至適治療プログラムを確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は主に京都医療センターにて実施し、申請者らはこれまで肥満・メタボリック症候群の病態生理やその心血管リスクに関する研究を臨床・基礎的に施行してきた為、本研究課題における研究計画の大部分は現所属・研究センターの実験施設(動物実験施設、培養設備、遺伝子学的・分子生物学的解析装置・機器)や臨床施設の現有設備で行うことが可能である。そこで今回、研究経費の主要な用途は、ホルモン測定代(ELISAキット代・血液検査外注費)、遺伝子学・分子生物学用試薬代(PCRキット代・SNPs解析試薬など)、動物・細胞実験(動物飼育管理費・培養関連試薬を含む)に必要な経費など主に消耗品費が予定され、妥当性・必要性があると考えられる。臨床研究、動物・細胞実験や分子生物学的実験には、修練を積んだ研究員・研究補助員が必要であり、その謝金を計上している。さらに、情報交換や学会で研究成果を公表する為に必要な出張経費、および論文発表の際の論文校閲費や投稿・印刷代など諸経費も必要であり計上している。これらを本研究費補助金から支出する事は関連法規などに照らして、十分妥当であると考えられる。各項目の金額は、今までに行った類似の研究で必要となった経費を基準とし算定している。当該経費の内訳:1.消耗品:(1)ヒト・マウスホルモン測定(ELISAキット代・血液検査外注費):約45万円。(2)分子生物学関連試薬(PCRキット代・MACS/FACS抗体等):約30万円。(3)培養関連試薬(ウシ胎仔血清、メディウムと試薬費)(細胞実験):約30万円。(4)飼育管理費(動物の購入代、管理代、餌代含む)(動物実験):約38万円。2.旅費:国内外の各学会での成果発表のための旅費:約20万円。3.謝金:研究補助員数名の実験補助代、外国語論文の校閲:約120万円。4.その他:英文雑誌・学会誌への研究成果投稿料や印刷代:約10万円
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Remnantt-like particle cholesterol and serum amyloid A-low-density lipoprotein levels in obese subjects with metabolic syndrome.2011
Author(s)
Kotani K, Satoh-Asahara N, Kato Y, Araki R, Himeno A, Yamakage H, Koyama K, Tanabe T, Oishi M, Okajima T, Shimatsu A, The Japan Obesity Metabolic Syndrome Study (JOMS) Group.
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Journal Title
J Clin Lipidol
Volume: 5
Pages: 395-400
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Serum Amyloid A Low-density Lipoprotein Levels and Smoking Status in Obese Japanese Patients.2011
Author(s)
Kotani K, Satoh-Asahara N, Kato Y, Araki R, Himeno A, Yamakage H, Koyama K, Tanabe T, Oishi M, Okajima T, Shimatsu A, The Japan Obesity Metabolic Syndrome Study (JOMS) Group.
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Journal Title
J Int Med Res
Volume: 39
Pages: 1917-1922
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Serum Soluble LOX-1 Levels are Increased in Close Association With hsCRP Levels and Expired Air CO Concentrations in Smokers.2011
Author(s)
Takanabe-Mori R, Ono K, Wada H, Takaya T, Yamakage H, Satoh-Asahara N, Shimatsu A, Takahashi Y, Fujita M, Fujita Y, Sawamura T, Hasegawa K.
Organizer
The 14th Annual INTERNATIONAL TORONTO HEART SUMMIT Together with the ISCHF A Member of the World Heart Federation.
Place of Presentation
Toronto, Canada
Year and Date
2011年6月9-11日
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[Presentation] Soluble LOX-1 and LOX Index in Sera of Smoking Patients are Closely Associated with Highly Sensitive CRP and Expired Air Carbon Monoxide Concentrations.2011
Author(s)
Takanabe-Mori R, Ono K, Wada H, Takaya T, Yamakage H, Satoh-Asahara N, Shimatsu A, Takahashi Y, Fujita M, Fujita Y, Sawamura T, Hasegawa K.
Organizer
American Heart Association Scientific Sessions 2011
Place of Presentation
Florida, USA
Year and Date
2011年11月12-16日
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