2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700832
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 修司 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50379400)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | RhoA / IGF-I / GEF / RhoGDI / Myostatin / C2C12 |
Research Abstract |
低分子量G蛋白質のRhoAは、筋細胞の分化、筋繊維の構造維持に関わる。本年度は、RhoAのインスリン様増殖因子(IGF-I)のシグナル伝達における活性調節機構の検討を行った。まず、分化誘導後のマウス筋芽細胞株であるC2C12細胞にIGF-I刺激を行い、IGF-I刺激による筋管の多核化及び細胞幅の増加を確認した。筋肉トレーニングにおいてRhoAの発現亢進が報告されていることから、IGF-I刺激によるRhoAの発現誘導を検証したところ、IGF-I刺激24時間後においてRhoAの蛋白質の増加を確認した。RhoAの発現増加の一因として、RhoAの分解抑制が考えられるため、RhoAの安定化に関係するRhoGDIの発現変化を検討したところ、IGF-I刺激によるRhoGDIのmRNA量と蛋白質量に変化は認められなかった。一方、IGF-I刺激によるRhoAの活性化をプルダウンアッセイで検討したところ、IGF-I刺激5分後からRhoAの活性化が認められた。これらの結果より、IGF-I刺激は、RhoAの活性化と発現増加を促進することが示唆された。更に、IGF-Iの下流でRhoAを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の同定を目指し、主要なGEFについてC2C12細胞で発現解析を行った。また、筋肉量を負に制御するマイオスタチン系のシグナル伝達を検討するため、活性型マイオスタチン(MSTN)の大腸菌発現系を構築し、その大量調製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、筋肉の増加に関わるRhoAの活性化機構の解明を目指し、期間内に以下の実験課題を計画している。課題1. 筋肉の増加に関わるRhoAの活性調節分子の絞り込み課題2. RhoGDIの活性化制御に関する研究課題3. RhoAの活性化を介した筋肉の増加実験23年度は、実験計画の初年度であるため、実験系の構築に時間をかけ、概ね実験環境のセットアップを終えた。課題1では、筋肉量を正に制御する様々な増殖因子、ホルモンの中からIGF-I刺激がRhoAの活性化と蛋白質の発現増加を促進することを見出した。老化や廃用性筋萎縮時において、RhoAの発現低下が報告されることから、今回のIGF-Iの結果は、RhoAの活性化の程度が筋肉の増減と相関する可能性が示唆された。一方、課題2で筋肉の増加と維持に重要な分子として注目していたRhoGDIについては、C2C12細胞を用いた実験系でその機能解明に進展を得ることはできなかった。しかし、本研究を通して、RhoGDIに変わる複数の分子候補(プロテオソーム阻害、分子シャペロン)を探索するきっかけを作ることができ、次年度の研究に向けた情報基盤を整えることができた。また、IGF-I受容体によるRhoAの活性化をつなぐGEFの解析では、C2C12細胞で発現する主要なGEFの発現解析を達成することができた。更に、TGF-βファミリーに属し、筋肉の増加抑制と筋肉減退に関わるマイオスタチンについては、その活性型のリガンドンであるMSTNの大腸菌大量発現に成功した。課題3は、課題1と2の結果を受けた動物実験であるため、23年度は殆ど手をつけることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、実験の達成度から研究課題を厳選し、以下の課題を中心に研究を進める。課題1. IGF-I刺激によるRhoAの活性化と蛋白質の発現増加の分子機序の解明課題2. マイオスタチン系の筋肉低下に関する実験課題3. RhoAの活性化を介した筋肉の増加実験課題1では、 まず、IGF-I受容体とRhoAをつなぐGEFの同定を目指し、ヌクレオチドフリーな組換え蛋白質RhoA(G17A)質を用いたアフィニティー結合実験 (Dubash, et al.PlosOne:2011)より、IGF-I刺激で活性化したGEFのスクリーニングを行う。RhoA蛋白質の発現増加の分子機序については、RhoAの分解抑制と蛋白質安定化の2つに分け、RhoAのユビキチン化の定量、蛋白質半減期の測定、セリン188残基のリン酸化の検出及びRhoAの免疫沈降による結合するシャペロン分子(ヒートショック蛋白質)の解析を行う。これらの検討で同定されるGEFや、ユビキチンリガーゼ、シャペロン分子は、筋肉増加に関わる鍵分子となるため、更に詳細な検討を進める。また、筋肉量は、正と負のシグナル伝達のバランスによって常に均衡が保たれており、RhoAは筋肉萎縮時に発現低下が起こるため、課題2では、23年度に作製した活性型マイオスタチンをリガンドとして用いて、アクチビン/SMAD系とRhoAの関連性についても検討を行う。課題3では、課題1と2の成果を受け、マウスを用いた動物実験でRhoAの機能を介した筋肉減退予防、筋肉増加効果の検証を行う。ただし、研究代表は、24年度後半にサバティカル制度を利用して海外留学を予定しているため、研究の進捗状況に応じて研究年度を2年から3年に延長申請を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究課題は、人件費を要する研究計画変更はなく、研究代表1人と指導学生2名で実施する。予算の大半は、23年度に引き続き、消耗品として細胞培養関連、抗体、PCR試薬、ガラス器具などの購入に充てる。24年度は、上記課題の遂行のため、以下の実験試薬、実験器具を新たに購入する計画である。課題1では、GEFの同定のため、アフィニティー結合実験に用いるレジンに加え、同定したGEFに対する特異的抗体の購入、蛋白質同定のための質量分析とsiRNA合成の依頼に20万円を充てる。また、RhoAの発現解析については、ユビキチン抗体、プロテオソーム阻害剤、蛋白質合成阻害剤などの購入に20万円を充てる。RhoAの解析が一段落したところで、RhoAの機能を介した筋肉増加及び減退予防の薬剤アプローチの開発を目指し、シャペロン分子発現誘導剤 (ゲラニルゲラニルアセトン、レパピミド、L-カルノシンなど) を購入し、その効果をC2C12細胞で検討する。これらの解析には、約10万円を充てる。課題2 では、マイオスタチン系シグナル伝達の解析のため、Smad2/3のリン酸化抗体、血清などの購入に20万円を充てる。また、課題3を実施するに当たり、マウスの購入、飼育費などに30万円を充てる。残金は、通常の実験で使用する細胞培養様培地、PCR試薬などの消耗品の購入に充てる。また、研究成果発表費として、24年度は10万円を計上する。
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