2012 Fiscal Year Research-status Report
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23700832
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 修司 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50379400)
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Keywords | RhoA / IGF-I / グアニンヌクレオチド交換因子 / GTP加水分解活性化タンパク質 / C2C12 |
Research Abstract |
これまでのC2C12細胞株を用いた実験より、インスリン様増殖因子(IGF-I)添加が分化後の筋菅形成と肥大化を促進させることから、IGF-Iシグナル伝達における低分子量G蛋白質RhoAの役割について、RhoAの常時不活性型変異体過剰発現実験を用いて検討を行った。その結果、IGF-I添加培地中で観察される分化48時間後の筋管形成が抑制された。IGF-I添加したC2C12細胞中では、RhoAの活性化が分化48時間後においても高く維持されていることから、RhoAがIGF-I刺激による筋管形成に関与することが示唆された。また、IGF-I添加24時間後において、RhoAの有意な蛋白質発現の増加が確認された。RhoAのmRNA量自体には変化が認められないため、IGF-Iは、RhoAの活性化に加え、RhoA蛋白質の安定化に寄与する可能性が考えられる。 一方、IGF-I添加によるRhoAの活性化機構を探るため、RhoAのヌクレオチドフリー変異体または常時活性型変異体を用いたブルダウン実験を行い、IGF-Iの下流で機能するグアニンヌクレオチド交換因子とGTP加水分解活性化タンパク質を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、筋肉の増加に関わるRhoAの活性化機構の解明を目指し、以下の実験課題を計画している。 課題1. 筋肉の増加に関わるRhoAの活性調節分子の絞り込み 課題2. RhoAの蛋白質安定化に関する研究 課題3. RhoAの活性化を介した筋肉の増加実験 24年度は、初年度に立ち上げた実験系を駆使することで、課題1の目標であるRhoAの活性調節分子の絞り込み、筋管形成におけるRhoAの重要性の証明及びその活性調節機序の一端を明らかにすることができた。しかし、研究期間中に研究代表者の海外留学が重なってしまったため、実験成果の取りまとめるまで至らず、研究期間を2年から3年に延長することになってしまった。これが達成度を低く区分した主因である。課題2は、昨年度の研究結果を受け、RhoAの既知の安定化促進蛋白質であるRhoDGIから研究対象を広げ、分子シャペロンであるヒートショック蛋白質とRhoAの安定化に関する研究を行った。挑戦的な試みであったため、現在までにRhoAと結びつく重要なヒートショック蛋白質の証明は得られていない。課題3は、実験動物マウスを用いた実験であり、下肢懸垂によって運動量を制限したマウス及びIGF-Iを筋肉投与したマウスにおいて、RhoAの活性化量を検討し、培養細胞で得られた知見をマウス骨格筋から再現するものである。25年度は、新たに動物実験施設が建設されたため、本年度の研究で成果が得られると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、最終年度であるため、研究課題を厳選し、以下の課題を中心に研究を進める。 課題1. IGF-Iによる筋管形成促進に関わるRhoAの機能解析 課題2. IGF-IによるRhoAの活性化の調節機構の解明 課題3. マウス骨格筋におけるRhoAの活性化の検証 課題1では、IGF-Iによる筋管形成促進におけるRhoAの役割を検証するため、RhoAをRNAiでノックダウンさせた細胞系を作製し、各種筋肉分化マーカーの発現量変化およびMAPキナーゼのリン酸化に対するRhoAの機能を検討する。RhoAは特に細胞-細胞間接着を制御することから、IGF-Iによる筋芽細胞同士の細胞融合の促進にRhoAが関与すると仮説を立て、細胞融合に関わるカドヘリン、インテグリンの細胞膜上での発現量変化を共焦点顕微鏡で観察し、RhoAの機能を検討する。課題2では、IGF-I受容体とRhoAを結ぶグアニンヌクレオチド交換因子またはGTP加水分解活性化タンパク質の同定を目指し、既にプルダウン実験で確認されている結合蛋白質のバンドを質量分析計で解析する。同定後は、その結合蛋白質に対するRNAiによりIGF-Iシグナル伝達におけるRhoAの活性調節機構を検証する。課題3は、マウス後肢に生理食塩水に希釈したIGF-Iを筋肉内投与し、骨格筋中でのIGF-IによるRhoAの活性化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究課題は、人件費を要する研究計画はなく、研究代表者1人と指導学生2名で実施する。予算の大半は、23年度、24年度に引き続き、消耗品である細胞培養関連、PCR試薬、ガラス器具の購入に充てる。25年度は、上記課題の遂行のため、以下の実験試薬、実験器具を新たに購入する計画である。課題1では、GEFの同定のため、アフィニティー結合実験に用いるレジンに加え、同定したGEFに対する特異的抗体の購入、siRNA合成の依頼に20万円を充てる。また、同定した蛋白質を質量分析で解析するための費用として10万円を充てる。また、課題2を実施するに当たり、残金をマウスの飼育費などに充てる。25年度は、研究成果発表費として、10万円を計上する。
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