2011 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋萎縮メカニズム;ラット・マウス・メダカ骨格筋を比較して
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23700856
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
寺田 昌弘 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (10553422)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メダカ / 骨格筋 |
Research Abstract |
本実験では、メダカが軌道上滞在時に主に利用すると考えられる胸ヒレ付近の骨格筋に着目した。筋不活動モデルとして宇宙メダカを低温飼育した群、ならびに胸ヒレの活動抑制モデルとして胸ヒレを切除した群、胸ヒレのない変異体であるPL系統の3群間で比較を行った。また、下肢体幹にも着目した。 メダカ個体をMS-222 を用いて麻酔し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で瞬間凍結し、メダカ体躯をコルク片にOCTコンパウンドを用いて固定し、クリオスタット(Leica CM1850)を用いて凍結横断切片を作成した。連続凍結切片を用いて、メダカの速筋・遅筋をそれぞれF59抗体とS58抗体 (Sant Cruz)ならびにLaminin抗体(abcam)、DAPIの3重染色を行った。染色した切片は蛍光顕微鏡で観察し、胸ヒレ付近の骨格筋における速筋・遅筋の分布を調べた。また、Laminin染色画像ではImageJソフトを用いて、骨格筋線維の横断面積を測定し筋萎縮度合いを比較した。また、レーザーマイクロダイセクション装置(Leica LMD6000)を用いて、凍結切片よりメダカの速筋・遅筋部分を別々に採取しISOGENを用いてmRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRによりユビキチンリガーゼであるatrogin-1の遺伝子発現の定量を試みた。その結果、筋活動量を抑制した群ではatrogin-1の発現が増加している傾向があった。 下肢においては免疫組織化学的染色において遅筋・速筋の染め分けはうまく行えなかった。これは、遅筋と考えられている血合筋部分が今回の下肢ターゲット部分の横断面では非常に少なく、遅筋自体の分布が少ない可能性が考えられる。今後は、頭部から尾部にかけて血合筋の分布がどのようになっているかを確認するためそれぞれの連続切片を作製して、抗体染色を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、メダカ骨格筋において抗体染色ならびにリアルタイムRT-PCRを行った。その結果、どの抗体が反応するか、また遺伝子の定量も行えるかが判明した。そのため、今後はより詳細に活動量変化によって骨格筋がどのように影響を受けるかを調べることができる。また、メダカをラット・マウスの骨格筋と比較するためにはメダカにおいて、上記方法の確立か不可欠であったため、今年度は方法の可否と問題の洗い出し(メダカのどの部位をターゲットにするべきか等)が出来、来年度の解析につながる結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果を踏まえて、今年度はラット・マウス・メダカの骨格筋の共通点を検討する。具体的には下記のように行う。【プロテオミクス解析による発現増強タンパク質の同定】負荷条件の違いによるラット・マウス・メダカ骨格筋におけるタンパク質発現変化をプロテオミクス解析により同定する。飼育0.5ヶ月、1ヶ月、1.5ヶ月、2ヶ月、2.5ヶ月、3ヶ月後にラット・マウス・メダカの遅筋・速筋をサンプリングし凍結保存する。この筋サンプルを用いてプロテオミクス解析を行う。まず、凍結保存した筋サンプルをホモジネートし、2次元電気泳動を行い、泳動後のゲル上の各群間におけるスポット発現パターンおよびスポット濃度の定量的比較を行う。次に、ゲル中でそれぞれのタンパク質をトリプシン消化した後、質量分析を行う。質量分析計は、MALDI-TOF/TOF型質量分析計を用いる。その後、ペプチド断片のアミノ酸配列を決定する。アミノ酸配列から決定されたタンパク質をデータベース上から割り出す。網羅的に解析した後、筋サンプルを顕微鏡で観察し、肥大筋・萎縮筋をレーザーマイクロダイゼクション法を用いて分離し質量分析を行い、筋線維レベルでのタンパク質発現変化も観察する。【DNAマイクロアレイ解析による発現遺伝子の同定】上記負荷条件後に採取した凍結筋サンプルを用いて、DNAマイクロアレイ分析を行い、変化した遺伝子発現を網羅的に解析する。また、肥大筋線維・萎縮筋線維をレーザーマイクロダイゼクション法を用いて分離し、筋線維単位でDNAマイクロアレイを行い、肥大筋線維・萎縮筋線維単位での遺伝子発現変化を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に、プロテオミクス解析ならびにリアルタイムRT-PCRに用いる試薬に用いる予定である。また、メダカの到底部位の筋サンプリングのために実体顕微鏡(50万円以下)等の物品も購入する。
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Research Products
(1 results)