2011 Fiscal Year Research-status Report
非侵襲脳活動測定による高齢者の生活支援を目的とした意思伝達用インタフェースの開発
Project/Area Number |
23700860
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
浅野 裕俊 青山学院大学, 理工学部, 助手 (70453488)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | インタフェース / 非侵襲計測 / 生活支援 |
Research Abstract |
高次情報処理機能といわれている脳の複雑性に着目し,感情などの情報を処理すると言われている前頭前野における酸素化ヘモグロビン濃度のリアプノフ指数解析手法を開発した.また,計測データ解析用のスタイルシートを作成し,データ処理の高速化を行った.具体的には,安静時と不快音聴取時における前頭前野部の酸素化ヘモグロビン濃度の時系列変化からリアプノフ指数を算出し,比較検討を行った.実験の結果,不快音聴取時は安静時に比べてリアプノフ指数が有意に小さく,さらに心理変化量との間に中程度以上の負相関がみられたことから,本解析手法が不快情動の評価において有効な指標となる可能性があることを示した.また,近赤外分光法を用いた味嗜好の客観評価の可能性について検討した.具体的には,喉の渇きの違いによる生理的欲求の違いが評価に与える影響について検討した.実験の結果,喉の渇きの違いが前頭葉下部の脳活動状態に影響を与えることがわかった.また,これらの生理心理結果を基に重回帰分析法を用いて生理量から心理量を推定するモデルを構築し,評価を行った.その結果,高程度の正相関が得られ,生理特性の違いに関わらず味嗜好を評価できる可能性を示した.さらに,前頭葉部における酸素化ヘモグロビン濃度変化を利用して,ベイジアンネットワークによる個の特性を考慮した感情評価手法を開発した.質的データや非線形データの取り扱いが可能であり,また得られたデータによる学習により最適化が可能であることから,本手法により個の感性に特化したシステムを構築することができる.実験の結果,推定率約7割が得られ,本手法により快-不快感情を推定できる可能性を示唆した.これらの研究成果は電子情報通信学会やバイオメカニズム学会などの国内学会および国際会議AROBにて発表を行い,高い評価を得た.また,本研究成果の一部は日本生体医工学会学会誌に掲載が決定した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に目標としていた酸素化ヘモグロビン濃度の新しい生体信号解析手法の開発や情動及び味嗜好の客観評価の可能性を生理心理実験により示すことができた.さらに,個性を考慮した心理状態の新しい推定手法を開発することができたことから,本研究はおおむね順調に進展していると評価している.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成23年度で得られた成果を基にして,ベイジアンネットワークによる意思伝達用インタフェースの開発及び評価を主に行う.データ測定から解析,評価に至るまでの流れをシステム化するとともに,インタフェースによる被験者の意思の程度を視覚化することで使用者の使いやすさに配慮した設計を行う.また,本システムの開発に伴い,システムの信頼性をより向上させるために被験者数を増やし推定率をさらに高める予定である.なお,当初予定していた高齢者を被験者とした生理心理実験であるが,小生の研究機関の異動に伴い,実験環境および測定機器の変更が余儀なくされた.そのため,現在の実験環境改善および被験者確保を出来る限り行い,当初の研究目標を果たす予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用に関する計画であるが,小生の研究機関の異動に伴い,これまで使用していた測定機器の利用が困難な状況となった.そのため,当該年度に購入を予定していた物品を変更し,次年度に本研究の遂行に必要な測定機器を研究費として計上する予定である.当初予定していた物品については,研究費の予算内に収まるように代替品を購入する予定である.なお,本研究成果を国内学会や国際会議などで発表するための予算や学術雑誌に掲載するための予算は当初の予定どおり計上する.
|