2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700869
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松田 靖弘 静岡大学, 工学部, 助教 (40432851)
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Keywords | 極性高分子 / ポリエステル / ナイロン / 界面物性 |
Research Abstract |
布の風合いは聴覚(衣ずれ)、視覚(テクスチャ)、触覚(肌触り)、運動性(伸縮性)などから決定される複雑な性質である。繊維のほとんどは極性高分子からできているが、近年の高分子科学の発展から極性高分子の表面・界面の物性はバルク物性と異なる場合が多いことが解ってきている。風合いは布の最表面の性質が関与しているため、極性高分子の表面・界面物性が重要な役割を果たすことは明白であるが、極性高分子の表面・界面物性と布の風合いを関連付けた研究はなかった。 本研究では一般に広く利用されている極性高分子であるナイロン、ポリエステル、さらに特に表面・界面で大きな影響を受けることが期待されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)に対して、布の風合いの解明を視野に入れて、表面・界面の物理化学的性質を解明することを目指した。 最終年度では、PVDFの繊維に結び目を形成することによって加えられる応力によってPVDFの結晶構造が変化し、融解温度が上昇することを見出して、学術雑誌に投稿、印刷が受理された。布は繊維を織ることで形成されており、その過程で結び目形成時と同様に応力がかかることは避けられない。同様の融解温度上昇は他の極性高分子でも観察されており、この研究の成果が布の風合いを解明する手助けになるものと考えられる。 また、ナイロンの一種であるMXD6が微粒子を添加することで結晶化度を変化させること、同じくナイロンの一種であるナイロン39が特異な極性構造のために興味深い電気物性を示すことを既に学術雑誌で報告した。 また、ポリエステルの一種であるポリ(L-乳酸)が溶媒分子との界面において複合体結晶を形成しゲル化することを見出し、既に学術雑誌で報告した。 このように、極性高分子繊維の性質に対して表面・表面が大きな影響を与えることを明らかにし、布の風合いを解明するに当たってその解明が不可欠であることを示した。
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