2011 Fiscal Year Research-status Report
海藻類に対する最適テクスチャー改良因子の新規探索とそれを活用した介護用食品の開発
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23700879
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山岸 あづみ 山形大学, 教育文化学部, 助教 (00400531)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海藻類 / 昆布 / ほうれん草 / 軟化 / シュウ酸 |
Research Abstract |
海藻類は食物繊維を多く含む食品であるが、それ故に咀嚼・嚥下困難な高齢者には食べ難い食品でもある。海藻類の安全かつ簡単な軟化処理法の提案は、食介護の軽減と咀嚼・嚥下困難な高齢者に対しては安心して海藻類を食することを可能にする。本研究では海藻類の1つである昆布に焦点を充て、可食部の異なる8種類の野菜(ほうれん草、春菊、大根、ごぼう、とまと、なす、アスパラガス、カリフラワー)と昆布を一緒に煮沸した際の昆布軟化機構を検討した。昆布の軟化は、ほうれん草と煮沸した昆布がもっとも亢進した。昆布を軟化する物質を同定するため、野菜から煮汁液中に溶出した水溶性成分をHPLCで分析した。その結果、ほうれん草と昆布を煮沸した煮汁液からのみシュウ酸が検出された。シュウ酸を含め野菜中に存在する有機酸および有機酸塩溶液と昆布を同時に煮沸したところ、シュウ酸溶液と煮沸した昆布が他の有機酸に比べて有意に昆布が軟化した。有機酸塩でも同様の結果が得られた。これらの結果から、昆布の軟化にはほうれん草が適しており、ほうれん草中のシュウ酸が関与していることが示唆された。昆布を軟化する際、一般的に酢を用いるが、酢は揮発性のため"むせ"の原因となる。本研究で明らかになった、ほうれん草の昆布軟化は"むせ"の心配がなく、安全・安心な方法で昆布軟化が可能である。本研究データは海藻類の介護用食品の開発にとって重要なデータであり、高齢化が進む日本にとって意義のある内容と言える。 また、本研究では海藻類の介護用食品として昆布佃煮を作る際の基礎データを得るため、佃煮に用いる各種調味料および調味原料(酢、醤油、砂糖、グルタミン酸、乳酸、酢酸、NaCl)溶液の濃度を変えて昆布を一緒に煮沸した際の昆布軟化度についても確認した。その結果、調味料では酢が最も昆布軟化を亢進させ、調味原料では酢酸、乳酸、グルタミン酸が昆布を軟化させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度の当初予定では、海藻類を数種の野菜と煮沸させ、海藻類の軟化が亢進する野菜から溶出した水溶性成分を同定することを目的とした。 23年度は褐草類の一種である昆布に焦点を充て研究を行った。ほうれん草と同時に煮沸した昆布が最も軟化し、HPLCによる分析の結果その煮汁液からのみシュウ酸が検出された。シュウ酸およびシュウ酸塩溶液にて昆布を煮沸すると、昆布の軟化は亢進した。これらの結果から、ほうれん草中に含まれるシュウ酸が昆布軟化に寄与していることが明らかとなり、当初の予定通り研究は行われた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ほうれん草による昆布軟化メカニズムを明らかにする。昆布は乾燥重量あたり30%のアルギン酸を含有し、アルギン酸はCaやMgと結合して存在する。昆布の軟化には食物繊維の流出や低分子化が関与している可能性が高い。そこで、今後ほうれん草およびシュウ酸溶液と昆布を煮沸した際に煮汁中へ流出したアルギン酸やCa、Mg溶出量の測定を行い、昆布軟化度との相関性を確認する予定である。また、ほうれん草を用いた昆布の介護用食品の開発も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は野菜と煮沸した昆布に残存した食物繊維の測定を予定している。そのために必要な、食物繊維分析用キット及び食物繊維測定に必要なガラス器具や試薬を購入する予定である。昆布から溶出したアルギン酸は分子量が変化している可能性が考えられる。そこで、煮汁中に溶出したアルギン酸の分子量を測定するため充填剤であるセファロースやゲルろ過用のカラムを購入する。その他、分析するサンプルを保存しておくための冷凍庫を購入する。
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