2012 Fiscal Year Research-status Report
海藻類に対する最適テクスチャー改良因子の新規探索とそれを活用した介護用食品の開発
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23700879
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山岸 あづみ 山形大学, 教育文化学部, 助教 (00400531)
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Keywords | 昆布 / 軟化 / Ca / 有機酸 / アルギン酸 |
Research Abstract |
本年度は、野菜中に含まれる有機酸(シュウ酸・クエン酸・乳酸・リンゴ酸・コハク酸)および有機酸塩(シュウ酸K、Na・クエン酸K、Na・乳酸Na・リンゴ酸Na・コハク酸Na)による昆布軟化機構を明らかにすることを目的とした。昆布は乾燥重量あたり30%の食物繊維を含み、水溶性食物繊維ではアルギン酸を多く含有する。昆布中のアルギン酸はCaと結合して存在している。そこで、各種有機酸および有機酸塩溶液で昆布を煮沸し、昆布の軟化度と昆布から煮汁中へ流出したアルギン酸量およびCa量の分析を行った。その結果、シュウ酸、シュウ酸NaやK溶液で煮沸した昆布は他の有機酸や有機酸塩溶液と煮沸した昆布に比べて軟化し、煮汁中へのアルギン酸流出量も多いことが確認できた。一方、煮汁中へのCa流出量では、昆布がもっとも軟化したシュウ酸、シュウ酸NaやKは他の有機酸や有機酸塩溶液と煮沸した昆布に比べて少なかった。 以上の結果を踏まえ、有機酸・有機酸溶液で昆布を煮沸した際の昆布からのCa流出に影響を与える要因を明らかにするため、濃度の異なるシュウ酸、シュウ酸K、クエン酸、クエン酸K溶液で昆布を煮沸し、煮汁中のCa量の分析を行った。その結果、シュウ酸およびシュウ酸K溶液に比べて、クエン酸やクエン酸K溶液中のCa流出量は濃度依存的に増加した。 本研究で得られた、食品中に含まれる有機酸や有機酸塩の種類による昆布軟化度合いや作用機作が異なる結果は、各種有機酸および有機酸塩の海藻類のテクスチャー改良因子の基礎データとして重要である。また、シュウ酸およびシュウ酸塩溶液による昆布の煮沸は、昆布からCaを流出させることなく昆布の軟化が可能であり、栄養素の損失を防ぐ軟化因子を明らかにした点おいて意義がある内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの研究予定は、海藻類を軟化させる野菜を探索した後、軟化させる野菜中の水溶性成分の同定、およびその成分による軟化機構を明らかにすることを目的とした。現在までに、昆布に対する軟化活性が高い野菜はホウレンソウであり、ホウレンソウ中に含まれるシュウ酸が昆布軟化に作用していることを明らかにした。さらに、本年度の結果からシュウ酸による昆布軟化の作用機作は、アルギン酸の流出が大きく関与していることが示唆された。以上の結果から、当初予定通り本研究はおおむね順調に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度と今年度の結果を踏まえて、海藻類の軟化作用を有する野菜中の成分を用いて、高齢者を対象とした海藻類の介護用食品を実際に作成する予定である。作成する介護用食品は、「咀嚼・嚥下困難者用食品の認可基準」に準ずる硬さとする。さらに、軟化昆布を実際に食した際の生体への影響も視野に入れて、研究を実施する予定である。軟化昆布の生体への影響を確認するためには、分子量の変化も重要である。そこで、昆布の軟化による多糖類の変化についてより詳細に明らかにするため、1)軟化した昆布中および煮汁中に流出した多糖類の分子量、2)組織学的検出による多糖類の残存状態、3)煮汁中に流出した酸性糖の種類について検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は介護用食品の開発を行うため、テクスチュロメーターのプランジャーを購入する。また、海藻類の介護用食品開発のため鍋等の調理器具や大量の昆布と調味料を購入する。さらに、煮汁中に流出した酸性糖を分析するためにHPLCあるはGCのカラムを購入する予定である。
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