2011 Fiscal Year Research-status Report
血中酸化ストレスを抑制する食材由来の新しい抗酸化成分の探索
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23700888
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
大澤 絢子 日本女子大学, 家政学部, 助手 (00550287)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 食品 / 抗酸化活性 |
Research Abstract |
本年度の研究では、「食材のin vitro抗酸化活性の評価」→「活性成分の単離・構造解析・同定」→「調理加工による活性成分変化の分析」を実施し、次段階の「体内摂取後の血中の抗酸化活性の評価」実験を実施可能な食材を見出すことができた。具体的には、日本で飲用される様々な茶(煎茶、コーヒー、菱茶、ゴーヤ茶、麦茶、黒豆茶、そば茶)を調整し、ラット脳脂質過酸化抑制活性を用いてスクリーニング評価を実施した。本試験において、優れた活性を示し、かつ、活性成分の報告が見当たらない菱茶の抗酸化成分について検討を加え、以下の3点を明らかとすることができた。(1)菱茶の原材料である菱の実に含有される主な抗酸化成分はgallic acid 、1,2,3-trigalloyl-β-glucoside、1,6-digalloyl-β-D-glucoside、1,2,6-trigalloyl-β-D-glucoside、eugeniin、1,2,3,6-tetragalloyl-β-D-glucosideであることを初めて明らかとすることができた。ラット脳脂質過酸化抑制系における各成分のIC50は、gallic acidが58 uM, それ以外は0.2-0.3 uM程度であった。(2)菱の実から得た6種の抗酸化成分は、血中の抗酸化力評価で使用予定の以下の試験においても優れた活性を示した。 ・OXY吸着テスト(次亜塩素酸消去能):IC50 0.9-6 uM(アスコルビン酸 43 uM) ・BAPテスト(鉄還元力能):IC50 15-32 uM(アスコルビン酸 90 uM)(3)菱の実に存在する6種の抗酸化成分は、熱水抽出中に重合し、菱茶中には遊離状態ではほとんど存在ないことが明らかとなった。抗酸化活性は遊離化合物の半分程度保持されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生活科学という複合領域的な切り口に立脚し、「食材のin vitro抗酸化活性の評価」→「活性成分の単離・構造解析・同定」→「調理加工による活性成分変化の分析」→「食材として摂取した後の血中の抗酸化活性の評価」について一貫した研究を行う。本研究プロセスを通し、これまで見逃されてきた、あるいは発見できなかった、我々が料理として摂取した際に真に体内で有用性を示す食材・抗酸化成分の発見及び、それらに適した調理法の確立を目指している。今年度の研究で、「食材のin vitro抗酸化活性の評価」→「活性成分の単離・構造解析・同定」により新たに見出した菱由来の抗酸化成分は、血中抗酸化力評価時に使用する試験(OXY吸着テスト、BAPテスト)でも活性を示すことが明らかとなった。また、菱茶の「調理加工後(熱水抽出後)の活性成分の変化」も明らかにすることができ、次段階の「体内摂取による血中抗酸化力の変化の観察」実験を実施可能な試料として、菱茶を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)In vitro抗酸化活性試験(ラット脳脂質過酸化抑制系)で菱茶よりも強い活性を示した緑茶、コーヒーを用いて血中抗酸化力変化の観察のための実験方法を確立する。実験方法とポジティブコントロールを確立した後、菱茶を一定量摂取し、指先穿刺法により経時的に採血して血中抗酸化力の変化を観察する。2)未検討の新しい食材のin vitro抗酸化活性を10種/年程度の割合で検討し、新たに見出された抗酸化活性成分があれば、血中抗酸化力評価時に使用する試験(OXY吸着テスト、BAPテスト)の実施、および調理による成分変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、血中抗酸化力の測定試薬キット、研究試料とする食材、分析用有機溶媒、HPLC分析用カラム、一般実験器具(ガラス器具等)等の購入費に使用する予定である。
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