2011 Fiscal Year Research-status Report
COX-2およびPPARを指標とした香辛料の機能性評価
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23700905
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
勝川 路子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 助教 (20508519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | trans-シンナムアルデヒド / シナモンバーグ油 / COX-2 / PPAR / 生活習慣病 |
Research Abstract |
香辛料は、食品の嗜好性や保存性を向上させるだけでなく、薬理・生理作用を有することが古くから知られている。しかしながら、これらの作用は伝承や経験によるものが多く、分子レベルでの有効性の評価は必ずしも十分ではない。そこで本研究は、誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制と、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)の活性化という新しい指標を用いて、香辛料の機能性を細胞レベル、個体レベルで評価し、生活習慣病予防の観点から分子作用機構を解明することを目的とした。計画1年目の本年度は、COX-2発現抑制とPPAR活性化の両効果をもつ香辛料成分を、培養細胞系により検討した。11種類の香辛料精油(0.01または0.001%)を用いてCOX-2発現抑制を調べたところ、シナモンバーグ油、キャラウェイ油、シナモンリーフ油、クミン油、カルダモン油、スターアニス油、コリアンダー油で強い抑制効果が見出された。同じ濃度でPPAR活性化を検討したところ、全ての精油はPPARα,β/δ,γいずれかを活性化した。最も強い効果が認められたシナモンバーグ油は、濃度依存的にCOX-2の発現を抑制し、同じ濃度域でPPARα,β/δ,γを選択的に活性化した。さらに、シナモンバーグ油の主成分であるtrans-シンナムアルデヒドにおいてもCOX-2発現抑制とPPAR活性化が見られたが、trans-シンナムアルデヒドの分解物であるケイヒ酸とカフェ酸では両効果は認められなかった。以上の結果から、シナモンバーグ油によるCOX-2発現抑制とPPAR活性化は、主成分のtrans-シンナムアルデヒドに起因していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、生活習慣病予防の観点から分子作用機構を解明するため、誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制と、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)の活性化という新しい指標を用いて、香辛料の機能性を細胞レベル、個体レベルで評価することを目的とし、計画1年目では培養細胞を用いた系、2年目では実験動物を用いた系での解析を予定している。本年度は、培養細胞系の評価によって、シナモンバーグ油からCOX-2発現抑制とPPAR活性化の両効果をもつ成分としてtrans-シンナムアルデヒドを見出し、この成分を用いた動物実験が開始可能となったので、研究計画は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた検討で見出したCOX-2発現抑制とPPAR活性化の両効果をもつ成分としてtrans-シンナムアルデヒドを実験動物に投与し、個体レベルでの検討を行う。実験には、PPARα欠損型および対照野生型マウスを用い、一定期間摂取させた後、血漿パラメーターの解析,脂質・糖代謝に関連する遺伝子発現変動や組織観察を行う。培養細胞および個体を用いた評価から、trans-シンナムアルデヒドCOX-2およびPPARを介した分子作用機構を明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は全て消耗品費として使用し、動物実験関連消耗品や分子生物学実験用の試薬や消耗品の購入に主に充てる予定である。
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