2012 Fiscal Year Research-status Report
授乳中母子の食生活パターンが母の育児ストレスと子の食行動発達に及ぼす影響
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23700911
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
廣瀬 潤子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (40381917)
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Keywords | 授乳 / 睡眠 / 母乳 / 乳児 / アクチウォッチ / 行動記録 / 育児ストレス / 母子関係 |
Research Abstract |
母乳育児を行う上で、夜間授乳による睡眠の分断や覚醒の増加は、疲労感や育児ストレスを感じさせる要因となると推測される。本研究では、母乳哺育中の母児の夜間活動を中心とした行動調査とストレス調査を実施し、夜間授乳による育児ストレスの現状を明らかにすることを目的とした。 母乳育児支援助産院に通っている生後3~4か月の児を持つ母乳哺育中の母親と児(24組)を対象とした。対象者には、アクチグラフと行動調査票を自宅へ送付し、指定の2日間母と児の行動調査を実施した。同時にPSI育児ストレスインデックスによるストレス調査も実施した。 行動記録による母親の睡眠時間は、403.1分±68.5分で、産前より約1時間半短くなっていた。夜間覚醒時間の平均は、54.1±36.7分、そのうち夜間授乳のために使用したのは42.8±27.5分であった。一方、アクチウォッチによって、母親と児の夜間覚醒パターンを見たところ、常に母親が先に覚醒したのは2名、逆に児が常に先の場合は7名であった。先に起きる回数が多い方をそれぞれの先行型とした場合、母先行が7名、児先行13名、半々が3名となった。 PSI育児ストレスインデックスの結果では、母親の睡眠時間とストレス総点、母側因子総点、児側因子総点には関連性が認められなかったが、夜間授乳回数と夜間授乳時間割合については母側因子(回数はP5(抑うつ・罪悪感)、割合はP5とP7(子どもに愛着を感じにくい))について負の相関がみられた。夜間授乳によって、母親の睡眠は減少していたが、夜間授乳に積極的に児に関わることで、抑うつや罪悪感が低下し、子どもへの愛情が増す結果になった。また、夜間覚醒先行型別では、母先行と児先行の間においてストレス因子に差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、予備調査として、行動調査票の簡略化を行っており、当該年度は、母乳育児支援助産院に通っている生後3~4か月の児を持つ母乳哺育中の母親と児24組を対象調査を実施した。対象者には、アクチグラフと行動調査票を自宅へ送付し、指定の連続2日間母と児の行動調査を実施、同時にPSI育児ストレスインデックスによるストレス調査も実施した。 対象月齢は3,4か月齢としており、月齢は限定されるが、夜間授乳の詳細な状況を明らかにすることができており、同時に授乳パターンの違いと母親の育児ストレス状況についての関連性も明らかにしつつある。さらに3,4か月齢のデータを増やすとともに、他の月齢についての被験者の募集もすでに開始しているところであり、広範囲のデータ獲得のめどが既にたっている状況である。 また、同時に基礎的データとして、授乳婦と乳児のそれぞれの活動による消費エネルギーや食事調査による摂取エネルギーおよび栄養素量も得ている。これらのデータは、授乳期の母親や乳児のさまざまな基準値の策定等にも活用することが可能であると考える。 以上の進行状況から、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
予備調査より共同研究をお願いしている助産院には、25年度以降も調査協力していただけることを確認し、被験者募集を継続的に実施している。また、調査の実施については、24年度に実施しており、ほとんどの実施準備等は済んでいる。 すでに、3、4か月齢については、当初の目標の20組を超えて調査を実施しているが、さらに被験者を20組追加することを目標に、当該月齢についてのより詳細なデータを収集する。 一方で、他の月齢についての調査を実施する、特に、生活のリズムが変化し、授乳の確立についてのトラブルの多い出生直後からの経時的な調査を実施し、月齢とともに変化する授乳の状況を中心に、母子の関係性(母親の育児ストレス)を明らかにする。これらの調査結果から、母子の関係性や授乳・離乳にとって、ターニングポイントとなる時期を明らかにすることによって、授乳トラブルや育児トラブルを未然に防ぐ育児指導などの提案が可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、アクチウォッチによる母子の行動の詳細な観察が最も重要なポイントとなっている。昨年度同様3,4か月齢の20組の調査を実施することに加え、他の月齢についての経時的な調査も加えて実施の予定であることから、さらに3組(6台)ほどのアクチウォッチの購入を予定している。 また、本課題最終年度になることから、早急なデータ解析を行い、研究成果発表を行う予定である。したがって、データ処理用の統計解析ソフトおよび解析用PCを購入する。その他物品費としては、アンケート用印刷物作成用品、輸送用品などが必要である。 旅費としては、被験者の募集や説明、共同研究者との打ち合わせに10回程度共同研究先の助産院への訪問を行う。本年秋に開催される学会において本課題の研究成果を発表予定である。 謝金は、被験者への謝金、共同研究先助産院への被験者募集に関する謝金およびデータ入力に係る謝金を支払う予定である。 その他には、被験者との研究機器等の輸送費などを計上している。
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