2011 Fiscal Year Research-status Report
卵黄の鉄吸収阻害能の評価と除鉄治療への応用可能性の探索
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23700912
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 ゆき子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10381930)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ホスビチン / 卵黄 / 除鉄 / 鉄 |
Research Abstract |
鉄は生体を維持するために必要不可欠な栄養素である一方、過剰に存在すると細胞に対し毒性を示す。特にC 型肝炎などでは鉄代謝異常により肝細胞内に鉄が沈着した結果、肝硬変や肝がんへ移行することが指摘されており、鉄制限食などの除鉄療法の必要性が高まってきている。一方、研究代表者は先行研究において卵黄が鉄吸収阻害能を有することを見いだした。そこで本研究では卵黄を除鉄治療へ活かすための第一歩として、卵黄由来栄養成分の分画方法を確立し、その中から鉄吸収阻害成分を特定し、さらにその鉄吸収阻害能を評価する。初年度は、生体に投与可能な卵黄由来栄養成分を大量に分画できる方法の確立を目的とし検討を進めた。 卵黄はプラズマ画分とグランニュール画分に分けられる。鉄との結合性が高いタンパク質のホスビチンは卵黄グランニュール画分に含まれていることから、まず容易に大量のグランニュール画分を得られる方法を検討した。従来は超遠心法を用いることにより画分を得るが、本研究では卵黄を等量の蒸留水と混合・撹拌した後、8000rpmで10分遠心分離し、プラズマ画分とグランニュール画分を得る方法を確立した。これらの画分について電気泳動法により分析したところ、グランニュール画分でホスビチンを検出した。そこで、グランニュール画分にターゲットを絞り、自己等電点(Autofocusing)電気泳動法での分画を試みた。その結果、全10画分のうち、弱塩基画分の5~7にホスビチンが存在する可能性が示された。同時に各画分中の鉄量を測定したところ、同じく画分5~7でのみ検出されたことから、ホスビチンの存在を裏付ける結果であると考えた。現在、有効画分の収集方法の確立について検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、卵黄の分画方法から有効画分の決定および収集方法の確立までを目標としていたが、有効画分の決定までにとどまっているため。その理由として、分画方法と分析方法の確立に様々な工夫が必要であり時間を要したためであると考える。遅れている点については平成24年度でカバーできるべくすみやかに研究を進めて行く所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度からの持ち越し案件である「有効画分の収集」方法の確立をすみやかに検討し、平成24年度実施予定の動物実験を使った有効成分の生理学的検討を進めて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
鉄吸収阻害能を示す卵黄由来栄養成分の特定とその作用メカニズムについて解明するために、本研究期間では、昨年度研究によって得られた有効画分で作成した食事をラットに与えて鉄出納試験を実施し、見かけの鉄吸収率を評価する。そして生体鉄吸収能や鉄代謝に対する卵黄由来のタンパク質成分と脂質成分の影響について比較検討する。これらの結果をもとに、鉄吸収阻害能を有する卵黄由来成分について考察し、除鉄効果のある卵黄中の有効成分を特定する計画である。 本研究を遂行するための研究費の使用計画として、動物実験に用いる動物や試料材料や、得られたサンプルを分析するための試薬や市販キットの購入を計画している。さらに、情報収集および成果を発表するために国内外の学会への参加費および旅費についても計画している。また、成果を公表する手段である英語論文作成、校正および投稿費用についても研究費の使用を計画している。
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