2012 Fiscal Year Annual Research Report
卵黄の鉄吸収阻害能の評価と除鉄治療への応用可能性の探索
Project/Area Number |
23700912
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
小林 ゆき子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10381930)
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Keywords | 鉄 / 栄養 / 除鉄 / 卵黄 / ホスビチン / 鉄吸収 / レジスタントプロテイン |
Research Abstract |
鉄は生体を維持するために必要不可欠な栄養素である一方、過剰に存在すると細胞に対し毒性を示す。特にC 型肝炎などでは鉄代謝異常により肝細胞内に鉄が沈着した結果、肝硬変や肝がんへ移行することが指摘されており、鉄制限食などの除鉄療法の必要性が高まってきている。本研究では、研究代表者が先行研究において見いだした卵黄の鉄欠乏性貧血回復抑制能を除鉄治療へ活かすための第一歩として、卵黄由来栄養成分の分画方法を確立し、その中から鉄吸収阻害成分を特定し、さらにその鉄吸収阻害能を評価した。 鉄結合能が高いホスビチンは卵黄グランニュール画分に含まれていることから、本研究では卵黄を等量の蒸留水と混合・撹拌した後、8000rpm 10分間の遠心分離でグランニュール画分を容易に得る方法を確立した。自己等電点(Autofocusing)電気泳動法によるさらなる分画を試みた結果、全10画分のうち弱塩基画分5の上清にのみホスビチンが検出された。そこで画分5を凍結乾燥したところ、ホスビチンの収集に成功した。 次に、SD系雄性ラット8週齢を用い、標準食群、標準食+ホスビチン経口投与群、8%卵黄添加食群および8%卵黄ペプチド添加食群に分け、生理学的に検討した。2週間実験食を与えたところ、1週目、2週目ともに8%卵黄添加食群のみかけの鉄吸収率は他の食事群に比べ有意に低値を示したが、ホスビチン投与群および卵黄ペプチド投与群では標準食と同程度であった。またこの2週間ではどの群も貧血には至らなかった。従って、卵黄タンパクは鉄の吸収を阻害することが示され、ペプチド態ではその機能は認められなかったことから、レジスタントプロテインであるホスビチンが関与していることが示唆された。本研究で投与したホスビチン量ではミネラル吸収に影響を及ぼさなかったため、適応量や投与方法については今後の検討課題である。
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