2011 Fiscal Year Research-status Report
果物・野菜による食物アレルギーと唾液中の生理活性物質との関連性の研究
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23700915
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
新田 陽子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (70403318)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 口腔アレルギー / ヒスタミン / だ液 |
Research Abstract |
口腔アレルギー症候群(OAS)について、唾液中のヒスタミンで評価できるかどうかを調べるために、唾液中のヒスタミンを定量する方法を確立した。はじめは、イオン交換カラムを用いて唾液中の成分を分離し、o-フタルアルデヒドで誘導体化して蛍光検出する方法を試したが、用いた機器では感度が低く、生体中の成分を分析するのに不向きであること、また用いたカラムではドーパミンなど他のアミンがヒスタミンと同じ時間で溶出するため、ヒスタミンを分離できていなかったことから、別の方法を試すことにした。所属機関に設置されている、四重極型の質量分析機を用いてヒスタミンの検出を試みた。高親水性化合物の分離分析に優れている、親水性相互作用クロマトグラフィー用カラムを用意し、アセトニトリル-ギ酸アンモニウム水溶液の系で、唾液中のヒスタミンをグラジエントモードで分析した。定量のための内部標準としてヒスタミン同位体を用いた。その結果複数の被験者の唾液中ヒスタミンを検出し定量できることを確認した。添加回収試験においては定量の正確性が確認できた。今後は被験者の数を増やして、個人間のヒスタミン量の差を確認する予定である。また、各被験者からのサンプル数を増やし、ヒスタミン量の個人内変動についても調べる予定である。OASを有する被験者からは、OAS発症時のだ液サンプルについても調べ、だ液中ヒスタミンとOASの関係についてこの定量法を用いて調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度中に唾液中のヒスタミンを定量する方法を確立することを目標としており、それが達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき唾液中ヒスタミンを定量する予定である。また、今後は花粉症の主要抗原と相同性の高いタンパク質、例えばリンゴのMal d1、イチゴのFra a1と呼ばれるタンパク質などがOASの抗原と考えられていることから、これらのタンパク質の性質について調べる予定である。OASの抗原タンパク質は加熱により失活することが多い。そこで、抗原タンパク質を組換え体タンパク質として大量に精製し、溶液中の立体構造をCD測定にて解析する。さらに加熱処理後のタンパク質の立体構造をCD測定にて調べ、加熱による構造の変化と、抗原としての機能の消失との関係を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度ヒスタミン定量法を検討した結果、所属機関に設置されている質量分析機での定量が可能であることが判明し、当初の計画より少ない額で定量法を確立した。一方、次年度の計画であった抗原の性質解明に向けた研究をすすめるにあたり、当初計画の予算よりも多くの研究費が必要であることが判明したため、残りの予算は次年度に繰り越すことにした。次年度の研究費はOASの原因となるタンパク質の組換え体タンパク質を精製するために必要な機器の購入にあてる。精製したタンパク質は広島大学放射光科学研究センターに依頼し、紫外領域からのCD測定を行う。二次構造の位置、数を予測し、それらが加熱によりどのように変化するかを調べる。CD測定についての費用はかからないことを確認しており、実際に別の実験で分析を依頼した経験がある。CD測定の対象となるタンパク質の試料ができれば、上記の実験が可能になる。昨年度からひきつづき行うだ液中ヒスタミン定量については、必要な試薬などは予備を十分量確保しており、それらを用いて行う予定である。
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