2013 Fiscal Year Research-status Report
胎児期の葉酸欠乏と過剰摂取による生活習慣病への影響
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23700920
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
金高 有里 酪農学園大学, 農食環境学群, 講師 (80420909)
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Keywords | 葉酸 / 胎児期 / DOHaD説 / 組織学的検討 / DNAマイクロアレイ / 生活習慣病 |
Research Abstract |
本研究では、胎児期の葉酸の過剰環境によって胎児期および成熟期の組織に起こる遺伝子発現の変化を検討し、給餌制限の実験から得られている成人期疾患胎児期起因に関与する遺伝子群と比較することによって、葉酸が関与する候補遺伝子群を同定し、成人期疾患胎児期起因説における胎児期葉酸摂取の意義と過剰摂取後の影響を明らかにすることを目的としている。 昨年度まで2群での検討に加えて、葉酸欠乏との比較の重要性を見出したため、基礎飼料としてAIN93Gを用いた葉酸過剰、欠乏、コントロールの3群の作製を行い、検討を続けた。 C57BL/6J系成熟雌マウスを用いて3群に分けて正常雄マウスと交配させ、プラグの確認後各群に組成の異なる飼料(①普通飼料AIN93G(Control)、②葉酸過剰付加飼(40mg/kg)、③葉酸欠乏飼料をそれぞれ与え飼育した。プラグ確認をした日を妊娠0日とし、18日目に各群の雌マウスより胎児を取り出し、性別判定、胎児数、胎児体重を測定後速やかに肝臓、膵臓、および脳を取り出し、液体窒素にて凍結保存した。また組織検討のため、残りの胎児はホルマリン固定を行った。さらに、出生後の検討を行うため、出生児(8日、22日)の組織を採取し、同様に凍結保存およびホルマリン固定を行った。 昨年に行っていたDNAアレイ解析の結果からいくつかの候補遺伝子を絞り、アレイデータの検証のためのPCRによる検討も行った。特にins2、bdnf、ifng、hmgcs1遺伝子についてはPCRで発現変化を確認できたため、現在タンパクレベル、組織レベルでも検討を進めている。中でも、葉酸と免疫系の深い関与を見出したため、IFNγを始めとした免疫系に関する解析を進めている。 引き続き葉酸摂取が胎児の遺伝子発現パターン調節に及ぼす影響、およびその意義を明らかにするところである
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、葉酸過剰がもたらす影響について、葉酸過剰群、コントロール群の2群間におけるDNAマイクロアレイ解析の結果、発現に変化がみられた数多くの遺伝子について解析を進めてきた。昨年度の解析により、IFNγの遺伝子発現の変化や、他の研究報告に基づき葉酸の免疫系における意義が明らかとなり、検討項目を絞ることができた。このことによって方向性が定まったことが大きな進歩であった。 昨年度より始めていた葉酸欠乏群の作製および解析により、胎児期葉酸摂取の意義がさらに明らかになると考えられる。 また、葉酸過剰およびコントロールの2群における胎児の発達に関する検討について、葉酸過剰による有意な生存胎児数の減少が認められた。また、胎児組織の細胞分裂能を評価するために肝臓におけるKi-67を用いた免疫組織化学的検討を進めた。今後、得られた染色像を用いて陽性細胞の所在と意義を追究するところである。 さらに、DNAマイクロアレイおよびPCRの検討により発現変化が確認されたins2について検討を進め、インスリンの免疫染色による組織学的検討を行った。膵臓のインスリンについては、コントロール群と比較して葉酸過剰群で陽性細胞数の増加が観察された。 さらに、昨年度の課題としていた葉酸過剰食、普通食、葉酸欠乏食の3群を作製し、妊娠期に栄養環境を変えた雌マウスを自然分娩させ、生後8日および離乳時(22日)に組織を採取し、胎児期の検索により同定された候補遺伝子のこれらの時期における発現を検討するという目標が到達しつつある。 これらの理由から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、妊娠期の母獣の葉酸摂取が、どれくらい胎児へ移行しているかを確認するため、胎児の肝臓を用いて葉酸含量の測定を実施する予定である。 また、現在葉酸過剰食、普通食、葉酸欠乏食の3群を作製し、胎児期(胎生18日)新生児期(8日)・離乳期(22日)における凍結サンプルおよび組織が揃いつつある。これにより、胎児期の解析により同定された候補遺伝子の新生児期における発現を検討するという目標について今後具体的に進めていくことが可能となった。 対象とする候補遺伝子として、具体的にins2、bdnf、ifng、hmgcs1遺伝子を挙げており、mRNAレベルでのアレイデータの再現ができている。さらに、今後タンパクレベルにおいても解析を進めていく予定である。特に、仔に及ぼす葉酸過剰の影響として免疫系への影響を解明することが重要であることがわかったため、ifngを中心とした免疫系に及ぼす影響に対する検討に重点をおいて進めていく。 今後、これらの遺伝子の産物に対する免疫組織学的検討を新生児期についても進め、胎児期との変化をまとめることができれば、胎児期の葉酸摂取の意義がより明らかになると考えられる。 胎児および出生後の各時期における分子生物学的、免疫組織学的な検討結果から、胎児期の葉酸過剰が出生後へ及ぼす影響およびメカニズムについて考察を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験上、新規の検討項目が生じたため、実験内容の検討および方向修正により差額が生じた。 これまで通り、動物実験にかかるマウス代、特殊飼料代についてはこれまで同様に使用する。 また、免疫系を始めとした候補遺伝子の検討にかかる抗体や器具、葉酸の定量にかかる試薬・器具代として使用する。 さらに、これまでの結果論文として投稿するための投稿代金として研究費を利用する予定である。
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Research Products
(2 results)