2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700924
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
多田 由紀 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80503432)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自律神経活動 / 朝食 / 心拍変動 / 交代制勤務 / 食事 |
Research Abstract |
朝食摂取状況による自律神経活動の違いを規則的な生活を送る者において検討することを目的とし,男子大学生7名(22.4±0.4歳)を対象とした介入試験を行った。朝食(7:30),昼食(12:30)および夕食(17:30)を規則正しく摂取する一週間の試走期間を設け(朝食摂取群),その後二週間にわたり朝食を摂取せずに昼食,夕食,夜食(23:00)を摂取した(非朝食摂取群)。1日のエネルギーおよび栄養素等摂取量は等価とし,起床・就寝時刻は一定にした。心電図は各期間の最終日前日から当日の24時間を無拘束下で記録し,心拍変動の周波数解析から自律神経活動指標(交感神経活動, 以下LF/HF; 迷走神経活動, 以下%HF)を算出した。心拍数および自律神経活動指標の2時間ごとの平均値,最小値および最大値が示す時刻を求め,2群間で比較した。その結果,朝食摂取群における%HFが最小値を示す時刻は,非朝食摂取群と比較して有意に早かった(8.7±0.5時vs. 15.6±1.7時,p=0.027)。また朝食摂取群と比較して,8:00-10:00における非朝食摂取群の心拍数は有意に低く(62.1±1.4 bpm vs. 55.8±1.8 bpm,p=0.007),%HFは有意に高かった(5.1±8.9%vs. 8.9±1.2%,p=0.023)。一般的に,迷走神経活動は夜間に高値を示し,日中に低値を示す一方,心拍数は交感神経活動によって上昇し,迷走神経活動によって低下することが報告されている。今回の結果では交感神経活動に2群間で有意差がみられなかったものの,朝食を摂取しない場合,摂取時よりも朝の心拍数が低く,迷走神経活動が夜間から日中にかけて低下するのが遅くなることが示唆された。すなわち,規則的な生活を送る者において,朝食を摂取することが自律神経活動の日内変動を維持する一因となっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的は,規則的な生活を送る者における朝食摂取状況による自律神経活動の違いを検討し,朝食を摂取する意義を明らかにすることであった。介入試験によって朝食を摂取しないと副交感神経活動の日内変動が乱れることが示唆されたため,初年度の目的はほぼ達成されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
交代制勤務者は勤務日によって昼夜逆転の生活を強いられ,概日リズムの維持が困難であるとともに心血管系疾患の頻度が高いことが報告されている。一方,食事も自律神経活動に影響することが報告されているため,交代制勤務者であっても食事を規則的にすることによって,自律神経活動の乱れを軽減できる可能性がある。特に,23年度の結果から,朝食を摂取することが副交感神経活動の昼夜のリズムに影響することが示唆された。この結果を踏まえ,24年度は不規則な生活を送る交代制勤務者における朝食摂取の意義を検討する。申請者らが以前実態調査を行った施設に勤務する看護師のうち,研究への同意が得られた交代制勤務に従事する看護師30名を対象とする。心電図は日勤日,夜勤日,休日を含む24時間を合計3日間測定し,当日の身体活動量(加速度歩数計),食事内容(食事記録法),眠気,疲労,気分の程度も把握する。自律神経活動の評価には心拍変動の周波数解析を行い,食事の摂取状況によって日中および夜間の自律神経活動が異なるか比較する。本研究によって,生活が不規則であっても食事によって自律神経活動のリズムが調整できる可能性を示すことは,労働者の健康管理ひいては生活習慣病の予防につながると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の介入試験では当初の予定よりも対象者数が少なかったことから,使用予定額を下回った。24年度は複数施設に協力を依頼して対象者数を確保し,謝金合計1,000,000円(1人1日11,111円×3日×30人)を支払うと共に,心電図測定関連の消耗品(電極等)100,000円,打ち合わせおよび調査にかかる国内旅費として80,000円,その他(論文投稿費、学会参加費等)50,000円(合計1,230,000円)を使用予定である。
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