2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700927
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
小宇田 智子 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (30391098)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 記憶形成 / フラボノイド |
Research Abstract |
本研究は、ルチン、リスベラトロールおよびケルセチンなどのフラボノイド類が記憶形成に及ぼす影響について、神経回路形成過程に着目して前シナプスおよび後シナプスの機能を分子レベルで検討することを目的としている。神経回路形成時、海馬神経細胞における主な神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体が細胞内から後シナプス膜へと移行することが知られている。そこで、ラット海馬神経細胞におけるグルタミン酸受容体の発現分布に対するフラボノイド類の影響を検討するため、以下の実験を行った。まず、ラット胎児海馬神経細胞の初代培養法の確立を試みた。具体的には、妊娠ラットを購入し、妊娠18日目~19日目にネンブタール麻酔下で全胎児を取り出した。クリーンベンチ内でラット胎児の頭部を分離後、顕微鏡下で海馬を取り出し、酵素処理により神経細胞を分散させた。この神経細胞にルチン、リスベラトロールおよびケルセチンを終濃度が20μMとなるように20あるいは60分間にわたって曝露した。神経細胞の細胞膜たんぱく質を分離し、グルタミン酸受容体であるAMPA受容体の発現量をウェスタンブロット法により解析した。その結果、リスベラトロールの曝露が、AMPA受容体の細胞膜への移行に関与している傾向がみられた。一方、ルチンおよびケルセチンはAMPA受容体の細胞膜移行への明確な関与はみられなかった。フラボノイド類の後シナプスに与える影響を分子レベルでみた研究はこれまでにないため、本研究は新規性があり非常に重要性が高い。フラボノイドは食品成分であるため、日常的に摂取しやすいと考えられる。従って、記憶形成を促進する影響が確認できれば、近年患者数が増加している認知症の予防効果が期待でき、非常に意義深い研究となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の目的は、フラボノイド類が記憶形成に及ぼす影響について、神経回路形成過程に着目して、前シナプスおよび後シナプスの機能を分子レベルで検討するものである。研究計画は、2年間で、ラット海馬神経細胞の初代培養法の確立、PC12細胞およびラット海馬神経細胞の神経突起伸長に対するフラボノイド類の影響、グルタミン酸受容体であるAMPA受容体の後シナプス膜への移行に対するフラボノイド類の影響をみるというものである。現在までに、ラット海馬神経細胞の初代培養法の確立、およびその細胞を用いたAMPA受容体の後シナプス膜への移行に対するフラボノイド類の影響についての検討が終了しており、おおむね当初の計画通りに進んでいると言える。今後はPC12細胞や海馬神経細胞を用いて、フラボノイド類による軸索突起伸長に対する影響を検討する。また、フラボノイド類の神経回路形成に与える影響について多方面から検討するため、現在は神経細胞内へのカルシウムイオンの移行という異なる視点からみることも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究は、現在までにほぼ当初の研究計画通りに進んでいる。今後は、PC12細胞およびラット海馬神経細胞の軸索突起伸長に与えるフラボノイド類の影響をみていく。現在までにラット海馬神経細胞の初代培養法は確立しており、さらに軸索突起伸長を測定するための免疫学的な手法もすでに身につけていることから、速やかに研究を進めることが期待できる。また、神経回路形成を別な視点から見てフラボノイド類の影響を検討していく。具体的には、ラットのAMPA受容体遺伝子を組み込んで発現させたHEK293細胞にフラボノイド類を曝露し、細胞内へのカルシウムイオン取り込みをイメージングする方法の確立を行う。このことにより、神経回路形成時におこるカルシウムイオンの細胞内取り込み機構に与えるフラボノイド類の影響を、リアルタイムで検討することが可能である。この実験方法を確立した後、ラット海馬神経細胞の初代培養を用いてカルシウムイオンの細胞内取り込みのイメージングを行い、神経細胞におけるフラボノイドの影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、PC12細胞およびラット海馬神経細胞の軸索突起伸長を測定するため、PC12細胞、妊娠ラット、培養細胞用の試薬や器具類、β-tublin抗体、免疫染色用試薬類、およびチップやチューブ等の消耗品などの購入にあてる。また、細胞内へのカルシウムイオン移行のイメージングのため、HEK293細胞、妊娠ラット、培養に必要な試薬や器具類、カルシウムイオン濃度の測定キット、細胞内イオン濃度の計測を行うためのソフトウェアであるMetaFluorソフトウェア(Molecular Devices)を購入する。研究成果を国内外の関連学会で発表する予定である。そのための旅費に使用する。
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