2011 Fiscal Year Research-status Report
牛乳中の体液保持因子の解明と中高年の熱中症予防のための飲料創生
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23700931
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
石原 健吾 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (70329647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 熱中症 / 水分 / タンパク質 / 運動 |
Research Abstract |
【1.牛乳・豆乳中の体液保持活性のメカニズム解明】 脱水モデルラットを用いて、牛乳の体液保持活性のメカニズムの概略を明らかにしました。牛乳を分画するために、透析処理を行い、タンパク質画分を得ました。この画分を投与すると血漿アルドステロン濃度が上昇することを示しました。また、投与後のラットの血漿を経時的に測定し、この牛乳タンパク質画分は血漿ナトリウム濃度の低下を抑え、その結果、血漿浸透圧が低下せず、排尿が起こりにくいことを示すことが出来ました。【2.牛乳・豆乳中の体液の保持活性を有する成分の単離同定】 牛乳中の体液保持活性が水溶性のタンパク質画分に広く存在することを明らかにしました。牛乳を分画するために、凝乳酵素レンニンで処理した乳清や、市販ヨーグルトの乳清を調製し、この両者に体液保持活性が存在することを示しました。さらに、カラムを用いた分画により、体液保持活性はエタノールには不溶であることを示しました。また、レンニンで処理した乳清を分取型等電点電気泳動で分離して、酸性フラクションに最も強い体液保持活性が存在することを示しました。【意義・重要性】 平成23年度の研究成果から、脱水時の水分補給において、牛乳、特にそのタンパク質画分に、摂取後の排尿を抑え、血漿水分の保持を促進する活性があることを明らかに出来ました。また、その活性が水溶性のタンパク質画分に広く分布すること、豆乳にも同様の活性が認められることを明らかにしました。すなわち、脱水時の水分補給においては、電解質に加えて、(一定の条件を満たす)タンパク質を摂取することが有効であることを示しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1.牛乳・豆乳中の体液保持活性のメカニズム解明】 この課題については、研究結果の概要で示したように、血漿アンジオテンシンの変化を機軸にして、血漿ナトリウム、血漿浸透圧、排尿量という体液保持活性メカニズムの概略を示すことが出来ました。当初の計画以上に進展させることができました。【2.牛乳・豆乳中の体液の保持活性を有する成分の単離同定】この課題については、研究結果の概要で示したように、活性成分は水溶性の高分子であることを示すことが出来ました。また、活性画分が高分子に結合したエタノール可溶性低分子という仮説を排除することができました。しかし、高分子を分画したフラクションをさらに分取型等電点電気泳動で分画した場合に、活性画分が酸性のフラクションを中心に広く存在することから、当初計画してきた質量分析計を用いた依頼分析を実施することが困難であると判断しました。このように、課題2については、当初の計画通りではない実験結果が得られましたが、本研究課題全体の目的である「脱水状態からの回復に効果の高い飲料を創生」という面に関しては、順調に進展しているため、「おおむね順調に進展している」と評価しました。
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Strategy for Future Research Activity |
【1.牛乳・豆乳中の体液保持活性のメカニズム解明】 体液保持作用の概略が明らかになったために、アルドステロンと関連性の深いホルモン(アンジオテンシンII、アルギニンバゾプレッシン)の濃度を測定し、牛乳タンパク質溶液の体液保持作用のメカニズムの解明をさらに進めます。【2.牛乳タンパク質画分を用いた運動後摂取飲料の機能評価】 スポーツドリンクへの応用をふまえて、乳タンパク質に、運動後のグリコーゲン回復に重要な成分である糖質を添加した溶液を調製して脱水モデルマウスに投与して、体液保持作用およびグリコーゲン回復作用の両面から効果を評価します。【3.体水分保持作用を持つ成分のヒトでの有効性の評価】 熱中症予防以外の応用では、夜間の尿意が睡眠の質を低下させる一大要因に着目した試験を行ないます。牛乳および他の飲料について、就寝前に摂取することで、夜間の尿意が抑えられ、睡眠の質が向上するか検討を行ないます。睡眠の質の客観的評価には、脳波の測定が不可欠です。そのために、平成23年度研究費で睡眠脳波計を購入しました。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【1.牛乳・豆乳中の体液保持活性のメカニズム解明】 体液保持作用のメカニズムの解明に際して、実験動物、ホルモン(アンジオテンシンII、アルギニンバゾプレッシン)を中心として、測定キットの購入、その他プラスチック器具等の購入に使用します。【2.牛乳タンパク質画分を用いた運動後摂取飲料の機能評価】運動後摂取飲料の機能評価に際して、実験動物、ホルモン(アルドステロン)を中心として、測定キットの購入、その他プラスチック器具等の購入に使用します。【3.体水分保持作用を持つ成分のヒトでの有効性の評価】 睡眠中の脳波の測定に際して、ディスポーザブル電極、電池などの購入に使用します。
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Research Products
(1 results)