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2012 Fiscal Year Research-status Report

牛乳中の体液保持因子の解明と中高年の熱中症予防のための飲料創生

Research Project

Project/Area Number 23700931
Research InstitutionSugiyama Jogakuen University

Principal Investigator

石原 健吾  椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (70329647)

Keywords脱水 / 水分補給 / 乳タンパク質 / 運動
Research Abstract

脱水からの回復には水分とナトリウムの摂取が重要であることは広く知られているが、本研究ではタンパク質がナトリウムによる血漿水分量の保持を増強することを明らかにした。
脱水状態のWistarラットを用い、水やスポーツドリンクの投与後と較べて、牛乳摂取後は排尿量が少なく、再脱水が起こりにくいことを明らかにした。また牛乳のタンパク質成分のみを透析によって単離した溶液は、ナトリウムを含有しないにも関わらず、投与後のラットの血漿ナトリウム濃度の低下を抑制し、利尿を抑制することを示した。この作用には、投与後の血漿アンジオテンシンII濃度、アルドステロン濃度の上昇が関与していることを示した。
さらに別の機構の関与について検討するために、水分吸収速度を評価した。その結果、乳タンパク質溶液投与群では水投与群よりも胃排出速度が遅いために急激な血漿ナトリウム濃度の低下が起こらず、排尿速度が抑制されることを示した。
スポーツの現場では、運動後に水分、電解質、糖質の補給を最低限必要なものとして捉えている。それをふまえて、これまでに見出した牛乳タンパク質の体水分保持作用が糖質電解質溶液に添加した場合でも効果が消失しないか試験した。トレッドミル走行によってグリコーゲンを枯渇させたBALBcマウスを用い、乳タンパク質添加の効果を対照である糖質電解質溶液と比較した。その結果、乳タンパク質を添加した糖質電解質溶液の方が有意差はないものの体水分保持の指標である血漿アルドステロン濃度、血漿ナトリウム濃度が高く、骨格筋グリコーゲン濃度も高いことが明らかになった。
以上の知見から、スポーツの現場においては、運動後に水分を回復するためには、まず吸収速度の速い飲料を飲めば良いが、その後は乳タンパク質溶液を摂取すると再脱水の予防になること、これはグリコーゲンの回復を阻害するものではないことを明らかにした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

牛乳の体水分保持作用のメカニズム解明という点については、ほぼ100%の到達点に達したと考えている。研究結果の概要で示したように、血漿アンジオテンシンII濃度の変化を基軸にして、血漿ナトリウム、血漿浸透圧、排尿量という体液保持作用のメカニズムの概略を明らかにした。また、レニン・アンジオテンシン系とは別の機構の関与についても検討を行ない、乳タンパク質が水分吸収速度を遅延することも牛乳の体水分保持作用に関与していることを示した。
研究成果に基づいた新規飲料の創生という点では、十分な成果を上げることが出来なかった。牛乳の体水分保持作用には、電解質成分が44%、タンパク質成分が56%寄与していると考えているが、タンパク質成分の分画実験を行った結果、体水分保持活性は単独の物質に起因せず、乳タンパク質という集合体において強い効果を発揮すると考えられたためである。
しかし、研究結果の概要で示したように、従来のスポーツドリンク(糖質電解質溶液)に乳タンパク質を添加することによって、糖質電解質溶液の体水分保持活性を増強することを示すことが出来たという点では、スポーツの現場での応用面・新規飲料の創生面においても一定の成果を上げることが出来た。

Strategy for Future Research Activity

これまで2年間の研究から、牛乳には強力な体水分保持作用があり、その作用は高分子量画分と電解質画分で各50%ずつが説明できることを明らかにしてきた。さらに、主に高分子量(タンパク質)画分に焦点を当ててそのメカニズム解析を行ない、水分吸収速度の遅延とレニン・アンジオテンシン系の亢進が関与していることを明らかにした。しかし、特定のタンパク質成分が作用を発揮している可能性は低いことがわかった。熱中症予防飲料の創生という観点からは、複雑な成分(乳タンパク質の集合体)よりも、単純な成分が作用を発揮していることを明らかにする方が、応用につながることが期待できる。本年度は、最終年度として、以下の2点に絞って研究を完結させる。
1.無タンパク無脂肪牛乳飲料の体水分保持作用のメカニズム解析
牛乳の電解質を再構成した飲料を調製して、水分吸収速度および血漿・尿中の浸透圧、電解質、抗利尿ホルモン濃度を測定し、水、スポーツドリンクと比較する。従来のスポーツドリンクは、水分吸収速度と運動中の発汗によって失われる成分を補給することに主眼を置いていた。今年度の研究でも、飲料摂取後の再脱水を予防するという当初からの目的に従って、牛乳の電解質が持つ体水分保持作用のメカニズム解析を行う。
2.高速度吸収牛乳の調製と水分吸収速度・体水分保持作用の評価
乳清ホエータンパク質を中心として、胃排出速度が速いタンパク質のスクリーニングを行う。吸収速度が速いタンパク質数種については、運動後に摂取されるデキストリンとの混合溶液を調製して、吸収速度が速いという特性が維持されるか確認する。こうして調整した乳清ホエータンパク質デキストリンを、上記1で調整した電解質溶液に混合して、水分吸収速度・体水分保持作用を評価する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

1.無タンパク無脂肪牛乳飲料の体水分保持作用のメカニズム解析
2.高速度吸収牛乳の調製と水分吸収速度・体水分保持作用の評価
上記の水分吸収速度・体水分保持作用のメカニズム解析に際して実験動物、ホルモン(アンジオテンシンII、アルギニンバゾプレッシン)を中心として、測定キットの購入、その他プラスチック器具等の購入に使用する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 2012

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Electrolyte-free milk protein solution influences sodium and fluid retention in rats2013

    • Author(s)
      Ishihara K, Kato Y, Usami A, Yamada M, Yamamura A, Fushiki T, Seyama Y
    • Journal Title

      Journal of Nutritional Science

      Volume: 2 Pages: e8 (pp. 1-7)

    • DOI

      10.1017/jns.2012.24

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Electrolyte-free milk protein solution influences sodium and fluid retention in rats2013

    • Author(s)
      Ishihara K, Kato Y
    • Organizer
      Experimental Biology
    • Place of Presentation
      Boston, MA, USA
    • Year and Date
      20130420-20130425
  • [Presentation] 脱水モデルマウスにおける糖質タンパク質溶液による体水分保持及びグリコーゲン回復作用への影響2012

    • Author(s)
      橋本里穂, 鈴木めい, 武田歩実, 深澤遥, 恒川春香, 石原健吾
    • Organizer
      日本栄養・食糧学会大会
    • Place of Presentation
      仙台
    • Year and Date
      20120518-20120520

URL: 

Published: 2014-07-24  

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