2012 Fiscal Year Research-status Report
メタボリックシンドロームモデルにおける機能RNAの分子メカニズムの検討
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23700938
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
安井 菜穂美 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (70399145)
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Keywords | メタボリックシンドローム / miRNA / 腎障害 |
Research Abstract |
SHRSP.ZFは脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)とレプチン受容体異常により肥満を呈するZucker fatty ラットを親系統にもつ新規コンジェニックラットである。SHRSP.ZFは加齢に伴い、肥満・高血圧を発症し、その対照動物である非肥満同腹子はSHRSP由来の高血圧を呈し、加齢に伴いその病態は進展する。12週齢SHRSP.ZFでは、肥満・高血圧・脂質代謝異常を発症し、高血圧を呈するLeanと比較しても尿中アルブミン、総タンパク排泄量が増加しており、肥満・高血圧を併発したSHRSP.ZFにおいて腎障害の増悪化が認められた。 腎障害が認められた12週齢メタボリックシンドロームモデルの腎臓では、マイクロアレイ法によって、18のmiRNAにおける発現増加、26のmiRNAにおける発現減少が認められた。非肥満同腹子に比べ、メタボリックシンドロームで変動がみられたmiRNAについて、リアルタイムPCR法で発現量を確認したところ、腎臓においてmir-29a と miR-378における有意な発現低下が認められた。 腎障害で認められる組織変化として腎臓の線維化があり、コラーゲン、細胞外マトリックスが過剰に蓄積することがあげられる。Wang.Bらは、TGF-β1を介した近位尿細管細胞におけるコラーゲンの蓄積にmiRNA-29aの関与を報告している。SHRSP.ZFの腎臓においても、TGF-β1遺伝子発現が亢進、miR-29a発現は減少、I型コラーゲンの増加による線維化の進展が確認された。メタボリックシンドロームモデルによる腎障害にもmiR-29aの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予定していたとおり実験が進みつつあり、メタボリックシンドロームの進展によって影響をうけやすい腎臓と脂肪に焦点をあてた。脂肪におけるmiRNA変化は腎臓に比較すると少なく、肥満・高血圧などによる影響が大きい腎臓にmiRNA変化が多いことが確認された。よって腎臓における解析をおこなったところ、発現変化が見出されたmiRNAについて、新規メタボリックシンドロームモデルSHRSP.ZFにおいて腎臓線維化過程への関与を検証することができ、さらに検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル動物では、肥満・高血圧・糖尿病が認められ、それらの病態の合併によって腎障害の増悪化が示唆された。非肥満対照動物に比べ、腎臓でメタボリックシンドロームで変動がみられたmicroRNAついて、さらに腎障害との関連をしらべる。 また、12週齢より病態がさらに増悪化していると予想される18週齢における病態解析についは現在進行中である。その組織におけるmiRNA発現変化を12週齢の結果と対応させ、メタボリックシンドロームの病態進展における候補機能RNAの同定を試みる。 また今年度確認したメタボリックシンドロームの腎臓線維化過程におけるmiRNAの関与およびその進展メカニズムについて18週齢でも確認する。 メタボリックシンドロームの進展におけるmiRNAの機能について、必要であれば培養細胞などを用いた機能解析をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
12週齢で肥満において病態変化がとくに認められた腎臓について、12週齢と18週齢の形態学的解析を行うために病理組織標本を作成する。 メタボリックシンドロームとその進展過程におけるmiRNAの役割をさらに調べるため、18週齢における病態比較は現在進行中であり、組織におけるmiRNA発現比較については今年度の試薬を引き続き使用し、不足すれば追加購入する。 メタボリックシンドロームの病態進展によって変化が予想されるmiRNAについて、有力なものがあれば新規にRT-PCR用の試薬で解析する。 さらに、残りの研究費内で、これまでの結果をまとめ、発表・投稿に必要な新規測定項目や追加測定等を行う。
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