2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700953
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
清野 辰彦 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00550740)
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Keywords | 数学的モデル化 / 数学化 / 数学教育 / 学習指導 |
Research Abstract |
本研究の目的は,学校数学において,数学的モデル化の能力と態度を育成するための学習指導の枠組みを構築することである。そのために,数学的モデル化を積極的に扱っている海外の教科書の分析や先行研究の文献解釈によって理論的に構築するとともに,構築した枠組みの有効性を実証的に考察する。 本年度の主な研究成果は次の3点である。1点目は,学習指導を行う際に用いる教材の要件や特性を見出したことである。具体的な教材の要件や特性は,以下の3点である。1.子どもが問題状況を想像でき,思考の過程や結果に価値を感じることができる教材,2.数学的モデル化過程を辿ることができる教材,3.経験的モデル化と理論的モデル化の双方を経験できる教材。 2点目は,昨年度価値を吟味した経験的モデル化と理論的モデル化に関する内容である。具体的には,1つの事象に対して,経験的モデル化と理論的モデル化の双方から解決でき,その活動の価値を感得させうる教材を開発した。また,経験的モデル化を経験できる比例の教材も開発した。 3点目は,経験的モデルを作成するいくつかの方法を検討し,その方法を学習する際の順序,教材,価値を考察したことである。具体的には,回帰直線という経験的モデルを作成する方法として,「データの傾向に対して適合すると捉えられる直線を目測によって決定する方法」,「メジアン-メジアン線」,「最小二乗法」に焦点をあてて考察を行った。 上記を研究全体からとらえてみると,学習指導の枠組みを構成するいくつかの要素を特定し,その要素を1つ1つを明確にしたことにあたると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数学的モデル化の能力と態度を育成するための学習指導の枠組みを構築するためには,数学的モデル化の特徴や教育的価値を明確にするとともに,具体的な教材を想定しながら枠組みの構成要素を抽出していく必要がある。また,抽出した要素の具体的な内容を検討する必要がある。今年度は,構成要素の抽出と教材開発に,時間と労力をかけ,研究を遂行してきた。 その研究の結果は,「学校数学における数学的モデル化の教材に関する一考察-経験的モデル化と理論的モデル化に焦点をあてて-」という題目で,『続・新しい算数数学教育の実践をめざして』という本に掲載された。また,日本数学教育学会誌に,「最小二乗法の基本的な考え方の理解を目指した学習指導に関する一考察」という題目で投稿中である。さらに,「数学の創造と活用を重視した単元に用いる教材の要件や特性」という題目で,日本科学教育学会年会論文集に掲載された。 これまでの研究結果は,研究全体の約6割にあたる。整理,分析できていない内容に対して,早急に対処し,研究結果を積み上げていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,数学的モデル化の能力と態度を育成するための学習指導の枠組みの有効性を示すために,「教材開発」「授業」「データの収集と分析」を重点的に行う。具体的には,研究協力者である山梨大学教育人間科学部附属中学校の教員とともに,教材開発並びに授業とその分析を行う。対象学年は,主に中学校第2学年である。 また,収集したデータを基に,数学モデル化の学習指導の枠組みの精緻化を行うとともに,研究の特徴を明確にする。そして,研究成果に基づき,本研究の有効性と限界を整理し,研究全体をまとめあげる。 研究を推進していくにあたって,研究協力者との綿密な情報交換と授業についての議論が必要になると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行う予定であった授業のプロトコル作成,分析内容の整理等を行うことができなかったので、それを行うにあたり必要となる人件費を平成25年度の研究費に繰り越した。
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