2011 Fiscal Year Research-status Report
シームレス化を目指す理科・地震防災教育にドラマ性を取入れた体感し学ぶ教育実践研究
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23700957
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
山田 伸之 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (80334522)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 地震防災 / 防災教育 / 乳幼児 / 遊び / 理科教育 |
Research Abstract |
本課題は,小さな子どもたちを主対象として,「理科・防災教育の充実」および「安全で安心な明るい未来社会の構築」への一助となるために,学校教育や日常生活の枠組みを越えた知識・行動力を要する内容の一つであると考えられる『強震動(地震の強い揺れ)とそれによって引き起こされる災害』に対する理解を深め,擬似体験を通じた効果的で印象に残る教具教材と教育啓蒙手段の開発検討を行うことと,保幼小などの園・学校と研究者の連携による教育実践活動を行うことの2つをタスクとしている。その中で本課題において,平成23年度は,観測された地震動記録について「体感し学ぶ(知る)」ための教材教具を提案・作成し,それを活用することで子どもたちに地震動についての学びのきっかけを与えることを模索した。具体的には,観測された地震動記録をこれまで波形を主として表現されていたものから,(1)聴覚(地震動記録をメロディにする=楽しさを盛り込み,地震動の特徴の現象理解につなげる),(2)体感(揺れそのものを感じる簡易人力震動台の製作および改良と利活用),(3)視覚(これまでの波形という表現形式ではなく,揺れを色や絵で表現する)のそれぞれへうったえるものを作り出すことを行った。平成23年度は東日本大震災直後の混乱状態でもあったが,これらを比較的バランスよく進めることができた。そして,これらの開発・制作物(特に(2)について)を用いた活用実践の場として複数の保育園・幼稚園で実践研究を行うことができた。さらに,保育園・幼稚園における保護者や保育者といった家庭と園へのアンケートやヒアリング調査も行い,実践活動研究としてのテータの蓄積も行った。なお,現場保育者および保護者からは,かなり高い評価を頂き,次年度の平成24年度に向けての弾みがついている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要に記した事柄について,年度当初に記した計画に沿って,低年齢の子どもたちを主対象とした地震防災教育教材や教具の開発および防災教育・防災訓練のスタイルの形成をある程度実行できたものと考えている。そして,それらを教育現場での実践活用についても,比較的多くの場での試みができ,対象子ども数も約400名となり,かなりの数の子どもたちを対象にできただけでなく,保護者や保育者の数十名にも本課題に関連する実践研究の活動ができたことから,研究遂行において順調な進捗状況であると判断した。ただし,研究成果としての学会発表や情報発信の部分や学術的な専門家との議論がやや少ない状況であると言わざるを得ない。従って,中程度の進捗状況であるとし,区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題タイトルは,「シームレス化を目指す理科・地震防災教育にドラマ性を取入れた体感し学ぶ教育実践研究」であることから,分野や領域の境目を感じることなく防災教育を実践する取り組みである。今後は,主に保育園や幼稚園での取り組みを強化し,現場での実践事例となるように教具・方法・考え方のパイロット的役割を担えるようにする。そのためにも,教育活動の中での流れ(ストーリー性)を重視し,科学的な思考と感覚および興味への誘いを盛り込むようにする。主対象とする乳幼児の子どもたちにとっては,これらを日常生活および遊びの中から感覚的・体験的に体得できるように工夫する必要があり,それを平成24年度も引き続き模索する。これらの研究活動の伏線として,現場教諭・保育者を対象にした災害に対する再教育も含んでおり,将来的には学校・園などが自ら地域とともに取り組めるきっかけ作りに寄与することができるように本課題を遂行していくこととする。なお,平成24年度は,最終年度でもあるため,教材教具の開発や教育現場での実践数の積み上げなどの拡充と並行して,これまでの研究成果の公表や取りまとめ,および情報発信に重きを置くとともに,次なるステップのための課題の抽出や方向性を見出していく予定である。なお,メンタル的な震災のダメージを受けている子などがいる場合には引き続き十分な配慮をしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題を遂行するにあたり,基本的なコンセプトとして,「人や環境などにやさしい」だけでなく,「お財布にもやさしい」としており,研究全般において,極力低予算で実現可能な防災教育を行うためのきっかけ作りに取り組んできている。平成23年度は,各機関・組織や人との連携や繋がりを有効に活用し,必要な機器等は借用で実施する形態をとることにしてきた。そのため,年度当初に見込んでいた予算に対して,結果的にはかなりの節減ができる形になり,研究課題実施の2年目を迎えることになった。ただし,これらは,東日本大震災発災直後の1年間であり,関係者各位の協力により可能であったものであるといえ,特殊事情によるものと考えている。平成24年度もこのスタンスを可能な限り継続し,防災教育の普及・啓蒙活動に対して,精力的に研究課題遂行を行っていく予定である。とりわけ平成24年度は,物品等への経費よりも,増加が見込まれる研究協力者への謝金,研究成果の公表のための国内外への旅費,投稿料などの諸経費および情報発信のための経費として,次年度使用額と合わせて使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)