2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会的ネットワーク分析を用いた正統的周辺参加の定量的評価手法の検討
Project/Area Number |
23700969
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
北村 智 東京経済大学, コミュニケーション学部, 講師 (40511960)
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Keywords | 実践共同体 / ネットワーク分析 / 正統的周辺参加 / 共著分析 / 中心性 |
Research Abstract |
本研究では、教育・学習研究の文脈で重要視されていたが、定量的なアプローチによる研究が不十分であった実践共同体における正統的周辺参加について、ネットワーク分析を用いる定量的分析手法を検討した。 研究にあたり、本研究では具体的な実践共同体として学術共同体を取り上げた。学術共同体への参加者を当該の学術共同体における研究発表者とし、共著分析によって当該の学術共同体における参加者間ネットワークを抽出した。 正統的周辺参加は参加の位置が周辺的参加から十全的参加へと移行していくプロセスを「学習」と捉える考え方である。このことからネットワーク上でのノードの位置を表す指標としての中心性に着目し、次数中心性、媒介中心性、近接中心性の3つの中心性を分析に用いた。 実際の分析では、工学系の2つの学術共同体を事例として取り上げて分析を行なった。分析はそれぞれの学術共同体における8年間の記録を用いて行ない、時系列の分析を行なうために、前半4年間の累積共著者ネットワークデータと、全体8年間の累積共著者ネットワークデータを作成し、それぞれのネットワークデータで中心性の算出を行なった。そして、実践共同体における正統的周辺参加を捉える指標としての中心性変化の妥当性を検証するために、本研究では学術共同体における役割獲得(委員などの役職就任)を取り上げて分析を行なった。 分析の結果、次数中心性が相対的に高まるほど、共同体において役割を獲得する傾向にあることが示された一方、媒介中心性および近接中心性の変化は役割の獲得とは有意な関係にはなかった。このことから、学術共同体という実践共同体における正統的周辺参加の定量的指標として、次数中心性の変化が利用できる可能性が示された。
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