2011 Fiscal Year Research-status Report
高解像度教育コンテンツ映像の活用に向けた映像加工システム基盤の構築
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23700976
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永井 孝幸 熊本大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (00341074)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 講義ビデオ / プライバシー / 顔検出 / GPU |
Research Abstract |
H23年度の研究では講義ビデオにおけるプライバシー保護のための先行事例調査、および講義ビデオにおける人物検出・匿名化システム基盤の構築を行った。 インターネット上でのプライバシーについては、旧来の「社会通念に照らして秘匿されるべき情報」という解釈から「公表する情報を自身で決定することのできる権利」へと認識の大きな転換が進みつつあり、講義ビデオの活用においても同様に講義の参加者が自身の映像に関して公開内容・範囲を指定できる仕組みが不可欠であるとの結論に至った。また、監視カメラ映像の先行事例では、顔情報だけでなく人物の服装・所作についても個人特定につながることが示唆されており、講義ビデオにおいても映像中の身体部分の匿名化が必要と考えられる。 講義ビデオにおける人物検出・匿名化処理を高速化するため、講義ビデオ加工インフラのGPU(高速数値演算ボード)対応を行った。高解像度ビデオのデコード処理にGPUを適用することで、90分の講義ビデオを加工する際にCPUのみの処理では3時間かかっていた処理を2時間に短縮することに成功した。更に顔検出処理を高速に行うため、画像処理ライブラリOpenCVのGPU対応版を用いて顔検出処理の実装を行った。 更に、上記のプライバシー保護を実現するためのシステム基盤として、ユーザー属性に応じたコンテンツへのアクセス制御を実現する認証基盤技術であるShibbolethを用いたシングルサインオン環境を構築するとともに、粒度の細かいアクセス制御機能・出版ワークフロー機能を備えたコンテンツ管理システムの構築を行った。 画像処理の高速化、ならびに細粒度アクセス制御・出版ワークフロー機能を備えたコンテンツ管理システムはプライバシー保護と講義ビデオの活用を両立させるために不可欠な要素技術であり、本年度の成果は実用化に向けた重要な一歩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プライバシー保護における最大の課題である顔情報の保護についてはGPU(高速数値演算ボード)による顔検出処理の高速化を実現し、目的を達成したと言える。しかしながら、監視カメラ映像の先行事例調査の結果から、プライバシー保護のためには顔だけでなく、服装・所作など間接的に個人特定につながる情報についても保護が必要であることが判明し、映像の匿名化処理について当初の想定から見直しが発生している。ユーザーの権限に応じたコンテンツの閲覧を実現するには、柔軟なユーザー属性管理に対応した認証基盤が必要であるが、この部分についてはShibbolethを用いた認証基盤を構築することで目的を達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究では、本年度未完となった映像匿名化処理を実装するとともに、教育コンテンツ映像に映っている書籍・写真・図表・ビデオといった著作物を抽出し,利用許諾の確認,および,利用許諾の得られていない著作物を取り除く処理を効率よく行うための映像分析・加工システム基盤を構築する.書画装置やプロジェクターを通じて提示される著作物については映像中の出現位置が固定されているため,抽出は容易である.教員が手で持って提示する著作物については出現位置が不明なため,コンピュータビジョンで一般的な手法である移動体追跡の技法を用いて教員の場所を検出し,教員の周囲の画像を切り出すことで著作物の抽出を実現する.効率的に研究を推進するため、自力でのシステム実装にはこだわらず、商用ソフトウェア・オープンソースソフトウェアを組み合わせる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究では講義ビデオ映像から抽出された素材を利用許諾が得られた素材とそうでない素材に分類し,利用許諾が得られていない素材を映像から取り除くための映像編集用ユーザーインターフェースを実装する.この映像編集用ユーザーインターフェースを開発するため,画像処理用ソフトウェア,大画面モニターとタブレット型端末(開発用と実験用に計2セット)の費用を平成24年度予算に計上している.これに加え,毎年蓄積されるTB(テラバイト)規模の大量の高解像度動画素材を保管するための大容量ハードディスクの費用,共同研究先との打ち合わせ旅費・成果発表旅費を計上している.
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