2012 Fiscal Year Annual Research Report
数学学習を対象とした創造性育成のための産出課題の学習支援手法の構築と実践的評価
Project/Area Number |
23700990
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小島 一晃 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (30437082)
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Keywords | 数学学習 / 創造性 / 知的学習支援 / 作問 / 産出課題 / 例からの学習 |
Research Abstract |
本研究では,数学を対象とした創造性教育への貢献を最終目標として,産出課題の知的学習支援手法を設計し,その評価を行った.創造性の育成のためには,与えられた問題の解に収束する活動のみではなく,学習者が自分自身でアイデアを産出する活動を与える必要がある.しかし,問題を解く活動においては例題学習の手法が確立しているものの,産出課題における例の学習活動は必ずしも確立されてはいない.本研究ではまず,学習者自身が問題を作りだす「作問」を対象として,産出課題における例の学習活動とその支援手法を考案した.この学習のフレームワークは次の通りである.学習者には,作問の例とともに,例を作成するための規範的プロセスを自動生成して提示する.学習者は,このプロセスに倣って例と同じ問題を再産出し,例が作られた背景にあるアイデアを学ぶ.そして,この学習活動を提供する知的学習支援システムを実装し,システムを用いた学習によって学習者の作問が改善されるかを実験的に検証した.我々は先行研究において,初学者は問題の数学的構造を変更する作問をあまり行わないこと,そのような作問を行った場合,その構造は単純であったり不適切である傾向にあることを確認している.本システムを用いて例を再産出する学習を与えると,例のアイデアを用いて問題構造を変更する作問が適切に促進されることが確認された.さらなる実験調査により,例を模倣する活動を通じて,例とは異なる新しいアイデアを用いた作問も促進されることが明らかになった.その一方で,例を模倣する学習に失敗する学習者が一部観察され,そのような学習者の作問は促進されないことも判明した.したがって,創造性育成のための学習支援の基盤手法を確立することはできたが,本手法の適用にあたっては学習に失敗する学習者の支援が新たな課題となることが明らかになった.
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