2012 Fiscal Year Research-status Report
若者のキャリア意識向上を目的とする交流実践の開発と評価
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23700992
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Research Institution | The SANNO Institute of manegement |
Principal Investigator |
荒木 淳子 産業能率大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (50447455)
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Keywords | キャリア意識 / 交流 / 大学生 / 社会人 / 対話 |
Research Abstract |
当該年度は、社会人と大学生との交流の場(Future Work Cafe)をデザインし、実践と評価を行った。社会人と大学生双方のキャリア意識向上を目的とし、自らのキャリアについて互いに対話できるような場づくりを工夫した。 7月に実施した予備実践では、若手社会人と大学生の仕事や働き方に対する視野の拡大を目的とし、様々な分野や組織を横断しながらキャリア形成を行っている社会人ゲスト3名による講演とワールドカフェを行った。事前事後の質問紙調査と事後に行った半構造化インタビューにより、参加者の自己効力感は有意に向上したものの、それらは社会人と大学生との対話によるものというより、ゲストの講演により促されたものであることが示唆された。 そこで社会人と大学生とが直接対話できるようデザインを変更し、二回目の実践を12月に行った。参加者は若手社会人(24歳~34歳)8名、大学2年生8名であった。キャリア・アンカー・インタビューの手法を用い、社会人と大学生が互いに自らの過去についてインタビューし合った後、互いの仕事に対する価値観や考え方に対しコメントしあう活動を行った。事前事後の質問紙調査により、大学生の自己効力感は有意に上昇したが、社会人は自己効力感が有意には上昇しておらず、むしろ、失敗に対する不安感が上昇していることが明らかとなった。事後、社会人に対して行った半構造化インタビューでは、大学生に率直に自らの過去を語ることで失敗に対する不安感が上昇していることが示唆された。 以上より、社会人と大学生との交流実践は、大学生の自己効力感を向上させるなど大学生のキャリア意識向上に結びつく一方で、大学生との対話は社会人のキャリア意識にはほとんど影響を与えないことが明らかとなった。社会人と大学生との交流実践では、社会人にとってもキャリア意識向上につながるよう活動をデザインする必要性のあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はSNSを用いた2週間から1ヶ月の長期的なプロジェクトを想定していたが、平成24年度はワークショップのような一時的に交流する実践の開発を行い評価した。2度の実践を行い、事前事後アンケートと事後インタビューのデータを収集した。データの分析結果は、日本教育工学会の全国大会で発表したほか、実践報告論文としてまとめ大学の紀要に投稿した。当初の計画からの変更はあるが、予備実践と本実践を行いデータの収集、分析を行った点で研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの実践では、社会人と大学生との交流は、双方に仕事に関する経験や知見の差があるため、対話が十分深まらないことや、交流が社会人のキャリア意識向上にはつながらないことが示唆された。そこで今年度は、前年度までの実践を踏まえ、大学生だけでなく社会人のキャリア意識向上にもつながるよう交流実践をデザインし、評価を行いたい。また、既存の大学生と社会人との交流実践についても調査を実施し、交流が大学生や社会人にどのような学習効果を与えているかについて分析を行う。実践の成果は論文としてまとめ、学会誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月から6月にかけて先行研究の調査、既存の実践への調査実施、7月~8月の実践に必要な費用として、消耗品費、通信費、交通費、謝金として20万円を見込んでいる。 また実践の結果を分析した成果を学会で発表するための旅費、交通費、学会参加費として10万円を見込んでいる。
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